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第三話 燃える街

 街は戦火に包まれていた。

 恐れ戦き逃げ惑う人々に向かって、可愛らしい少女の姿をした人形どもが、表情一つ変えずに次々と背後から襲い掛かる。そんな戦乱の真っ只中、高らかな笑い声をあげる一人の少女がいた。

「アーッハッハッハ! さぁ私の可愛いお人形達、薄汚い人間どもを一匹残らず駆除するのよ!」

 黒のレースに、フリルがたくさんついたゴスロリ調のドレスを身に纏ったその少女は、金色の縦ロールの髪を振り乱しながら、まるで気が触れてしまったかのように笑い続けている。そう、彼女こそがこの戦乱を巻き起こした張本人、アルガーナ帝国の将軍カルマだ。

「こいつらはゴキブリと一緒。殺しても殺してもすぐに湧いて出てくるからね。だから、私達がちゃんと根絶やしにしてあげなくちゃ! アーッハッハッハ!」

 と、その時、突然の閃光と共に人形達が一斉に吹き飛んだ。

「何っ?」

「そこまでだ! これ以上の暴挙は許さんぞ!」

 ギリギリと怒りの表情を浮かべながら、カルマはゆっくりと声のあった方へ振り向く。そこに現れたのは、この国の自警団だった。

「よくも私の可愛い人形達をやってくれたわね……」

 カルマの愛嬌ある可愛らしい顔が怒りで醜く歪む。

 自警団は各自手に持った魔宝具をカルマに向けた。

「貴様がこの人形達を操るアルガーナの指揮官だな」

「まさか、このような者が……。まだ、子供ではないか……」

 自警団の一人である若い男が驚きの表情を見せる。だが、その横に立つ老練な自警団の隊長と思しき男は、警戒の態度を崩さずカルマを睨み付けていた。

「見た目に騙されるな。おまえは感じないのか? あいつの体から発せられている禍々しい魔力のオーラを」

「し、しかし……」

「皆の者構わん、一斉射撃だ!」

 躊躇する若い男を無視し、隊長の号令の下、自警団たちは一斉にカルマに向かって魔宝具を発動させた。

 何本もの光の閃光が交差し一本の線となってカルマへと放たれる。

 だが、カルマは落ち着き払った様子で懐から小さい手鏡を取り出した。

「そんなチャチな攻撃、私に通じると思って?」

 自警団たちが放った閃光は、まるで吸い寄せられるかのように彼女の持つ手鏡の中へと消えて行った。そして、一瞬の沈黙ののち、突然手鏡の中から何倍もの大きさとなった光球が飛び出し自警団に向かって放たれた。

「う、うおおおおおおおっ!」

「魔宝具『因果の手鏡』。私に歯向かった罪深さをとくと味わうがいいわ」

 光は自警団たちをすっぽりと包み込み大爆発を起こした。眩い閃光と轟音が辺り一面に鳴り響く。そして光が収まった時、その場に残っていたのは爆弾が落ちたかのような巨大なクレーターと、躊躇して攻撃が出来なかった自警団の若い男だけだった。

「あら? どうして一人生き残っているのかしら」

 薄い笑みを浮かべ、カルマは男の元へと歩み寄った。

 男は恐怖の表情を浮かべ、ガチガチと歯を掻き鳴らしながら震えている。

「この魔宝具『因果の手鏡』はね、私に攻撃をして来た者にだけ何倍もの威力にして返す道具なの。きっとあなたは、私が子供だから攻撃が出来なかったのね」

 そう言うと、カルマは男の頬にそっとキスをした。

「私、優しい人が好きなの。だから、あなただけは見逃してあげる。どこぞにでも消えるがいいわ」

 スッと、カルマは男の脇を通り過ぎる。

 男はホッと安堵のため息を吐いた。

「あ、そう言えば……」

「え?」

 振り向いた瞬間、男は閃光に包まれていた。そして、走馬灯を見る間も無く、一瞬にして男の姿はこの世から消えていた。

「私ってば優しい人は好きだけど、そもそも人間って大嫌いなのよね。すっかり忘れていたわ。アーッハッハッハ!」

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