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第二話 魔導都市 フランガナン

 魔導都市フランガナン。

 大陸の北方に位置するその国の歴史は古く、今から千年前に起きた戦争、聖魔大戦のおりに使用され世界中に散らばった魔宝具を研究するため、当時の学者たちが興した国と言われている。そのため、この国には貴重な魔宝具が多数存在し厳重な警備の元保管されていた。

 過去にこの魔宝具を狙った数多の国にこの国は標的にされ続けてきたが、そのたびにその強力な魔宝具の力で跳ね返し続けてきた。

 ちなみにこの国に王は存在しない。優れた魔宝学者のみで構成された魔宝評議会と呼ばれる集団が政を行っている。しかし、彼らが一同に集まることはほどんどない。彼らの性分は研究であって政治では無いからだ。だが、そんな彼らが珍しく議事堂に勢ぞろいしていた。

「アルガーナ国の侵攻は日増しに激しくなり、結界が打ち破られるのも時間の問題だ!」

「くそっ。あの忌まわしい人形どもめ。倒しても倒しても虫のように湧いてきおる!」

「どどど、どうしましょう! このままでは、この国は破滅です! 千年もの間続いてきた歴史に終止符が打たれてしまう~!」

 部屋の中央にある長い丸テーブルを囲み、議員たちは口々に意見を述べている。だが、どの意見も悲観的な話ばかりで、現状を打破できるような提案は無い。皆頭を抱えるだけで動こうとする者もいない。

 そんな中、年老いた議員の中では珍しい若い女性が口を開いた。

「神器を使いましょう。それしか今の現状を打破できる方法は無いかと思います」

 その言葉に、一同は皆驚きの表情を見せた。だが、すぐに険しい表情に戻ると女に向かって一斉に非難の言葉を浴びせる。

「ば、馬鹿者! 何を言っておるんじゃ! あれは、先代があまりの強大な力のため、悪用されないよう封印した忌まわしき魔宝具なんじゃぞ! そもそも、この国が興された理由は、あれらの神器を我々が守るために託されたからなんじゃ! それなのに、我々がその禁を破ってどうする!」

「そうだとも、あの神器を使用したら、どんな災いがこの国にもたらさせるか分かったものじゃない! お前にその責任が取れるのか?」

 その言葉に、女は冷たい笑みを浮かべた。

「災い? この国が無くなってしまう以上の災いはどのようなものなのですか?」

 その言葉に、皆はうぐっと言葉を詰まらせた。

「この国は千年の歴史を誇る由緒正しき国。我々はこの国を、そして民を外敵より守る義務があるのです。先代が残したあの神器は、このような時こそ使用するべきなのです。きっと先代もお許しになるはず」

「し、しかしヴィオラ殿……」

 その時、部屋の扉が慌しく開かれた。そして、一人の傷ついた兵士が部屋に飛び込んできた。

「も、申し上げます! 結界が破られ、人形どもが城下町に押し寄せて参りました!」

「ついに来おったか!」

「もう終わりだ~!」

 兵士の言葉に、議会内は一瞬にしてパニックとなった。

 ヴィオラは議長に詰め寄る。

「議長! もう一刻の猶予もありません。神器使用の許可を!」

「わ、分かった。この際、仕方あるまい……」

 議長は複雑な表情で懐から何かを取り出した。それは、後端の部分に五芒星の飾りがあしらってある鍵であった。鍵を受け取ったヴィオラは、足早に部屋から飛び出した。

 議事堂から続く長い廊下を駆け抜けていくと、正面に巨大な扉が見えてきた。それこそが、この魔導都市フランガナンの象徴と呼ばれる中央大聖堂である。

「これはヴィオラ様、一体このような所へ何用で……」

「そこをお退きなさい!」

 聖堂を守る兵士達が言い終わる前に、ヴィオラは目の前の扉を勢い良く開いた。兵士達はヴィオラの剣幕に驚き、それ以上何も言えずに佇んでいる。

 両脇に並ぶ長椅子に、前方へまっすぐと続く赤い絨毯。目の前には、七色に光るステンドグラスの窓と、優しく微笑む肯定神ポジティナの像がある。まるで教会のような作りのその部屋を駆け抜け、ヴィオラはポジティナの像までやってくると、その像にある鍵穴へ鍵を指しこんだ。すると、ポジティナ像の足元の床が開き、下へと続く階段が現れる。足早にヴィオラはその階段を駆け下りて行った。

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