↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/34

プロローグ

 下弦の月が照らす夜を一人の少女が息を切らし走っていた。

「あれは何? どうしてあんなものが、こんな所にいるの?」

 少女は、真っ白なドレスが土に汚れるのも気にせず、必死の形相で走り続けている。時折後ろを振り向き、奴が追いかけてこないことを確かめながら、少女はただひたすら人気の無い道を駆けていた。

 おかしいと思った。

 あの筆不精のお兄様が、自分に手紙を書くことなんてありえないのだ。しかも、こんな人気の無い夜更けに、あの場所で待ち合わせだなんて。

 でも、お兄様と話がしたかった。

 先日、大好きだったお父様が突然亡くなり、互いに口数が減っていて寂しかった。

 そんな時に、私の机の上に置かれていた一通の手紙。きっと、お兄様も私と同じように寂しかったんだ。照れ臭いから手紙を書いたりしたんだ。そう、勝手に思いこんでいた。

 でも、今思えば、あの字はお兄様の字じゃない。それに、まさかこんなことになるなんて! なぜあんな怪物が……!

「助けてぇ! 誰か、誰か助けてぇ! お兄様!」

 だが、その声は少女の口から発せられなかった。少女はすぐに自分の体に起こった異常に気がつく。声を出そうとしても、出すことができないのだ。

 ねっとりとした空気が、少女の心臓を鷲掴みにする。

 姿は見えないが、奴はどこからか自分を見ているに違いない。

 ふと気がつき辺りを見渡すと、そこはあの遺跡の入り口の前だった。

 この国に、昔から存在する忌まわしき遺跡。子供の頃から、そこに近寄ってはいけないと言い聞かされ続けてきた危険な場所……。

 その時、突然少女の体が闇に包まれた。

 頭上を見上げた少女は、その目を大きく見開く。そこには、下弦の月を背にし、巨大な黒い翼を広げた怪物が、邪悪な笑みを浮かべて少女を見下ろしていた。

 月の光に照らされ浮かび上がる八枚の翼。その翼が、少女を一瞬にして覆い隠す。

「あ、悪魔……」

 その声も、闇に掻き消えた。そして、続く少女の叫び声も誰にも届くことは無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。