第76話『マイカとペトラ』
登場人物
◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)
男性 59歳
身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目
定年間近の某県警刑事
剣道七段(練士)柔道五段
逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)
雑学好きのうんちく親父
涙もろく人情派
素人童貞
殉職後、異世界にエルフの美少女に転生
◎マイカ(アキラ)
年齢16~18歳くらいの見た目
白金色の長い髪
緑色の瞳
先の尖った耳
巨乳
のエルフ美少女
舞原彰の転生後の姿
ハンデルの営むヘルト商会にて稼働
ラウムテ帝国の皇家直臣となり、異世界初の警察組織建設のため奮闘中
◎ケルン
モンスターであるケルベロスの子(♂)
3つの頭、尻尾は1本
中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。
火を吹く
甘いものが好き
◎ハンデル
男性 30歳
身長180cm強 細身の引き締まった体型
茶色くせ毛短髪 茶色の瞳
旅の行商人 剣の達人
街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。
割りと二枚目
◎エフェリーネ
女性 22歳
ラウムテ帝国摂政
第9代皇帝の女帝ヨゼフィーネの一人娘
ヨゼフィーネの死後、皇帝に即位した従弟のヤスペルの代理として政務を執り行なっている。
身長165cm 中肉
茶色セミロングストレートの髪
やや淡い茶色の瞳
◎リーセロット
女性 年齢不詳(20歳代前半から半ば辺りの見た目)
エフェリーネの側近くに仕えるダークエルフの女性
身長170cm 美しい体型 爆乳
黒髪の長髪 黒い瞳
雷の魔法を使う
◎ペトラ
55歳(見た目は常人の20歳代半ばくらいの若さ)
女性 姓はリデル
ステルクステ騎士団団長
身長約230cm 筋肉質だが丸みを帯びた体型で、腹部腰部が細く括れている。
赤い肌 赤い瞳 銀色の蓬髪
亜人のオーガ族で大陸最強の戦士と謳われている。
◎アードルフ
41歳 獣人種である狸人族の男性
身長約170cm ずんぐりむっくりな体型
焦げ茶色の短髪 同じ毛色の太い尻尾
頭上に半円形の耳
ステルクステ騎士団団長ペトラの副官
巨大な戦闘斧を使う剛の者
変化の魔法を使う
面会の間の扉が開かれマイカが中に入ってきたところ
「ほおぅ……」
と室内にいた騎士達が小さく歓声を洩らした。
彼らとて、これまでの生涯でエルフを見たことは殆どなく、褐色エルフであるリーセロットについては10年前に会っていて2度目であるため驚くことはなかったが、褐色エルフとは違うエルフ種のマイカを見て驚きを隠せなかったようだ。
そのマイカが自分の方に向かって歩いてくるのを見て、ペトラの脳内に激しい雷が落ちた。
続いてペトラの脳内に黒雲が立ち込め、雨、風共に激しい嵐が吹き荒れた。
「お初にお目にかかります、騎士団長閣下。
ラウムテ帝国皇臣マイカと申します。」
とマイカはペトラに向かって言って、軽く微笑んでみせた。
マイカ自身は意識しなかったが、この時マイカの身体が軽く光り、着用している「エルフの衣」がキラキラと虹色に光り始めた。
「おおーーっ!」
室内にいた騎士達が、今度は大きく歓声を上げた。
マイカの挨拶を受けたペトラは、目と口を大きく開いて棒立ちになっていた。
そのペトラの様子を見て、アードルフは右手で自らの額を叩き「アチャーッ」といった風な表情をした。
ペトラは磊々落々な性格で、いつも感情を開けっ広げに表に出しているため、何を感じているのか、何を思っているのかが判り易い人物であったが、約20年、彼女の副官として付き従っているアードルフは、その奥に隠されているものさえも読み取れるようになっていた。
その時の、目と口を開いて棒立ちという、判り易い驚き方をしているペトラを見て
(あー、ダメだこりゃ。これ絶対、団長のヤツ、マイカ嬢に一目惚れしたわ。しかもガチ惚れってやつだわ…)
微笑んだマイカの顔を見た瞬間、ペトラの脳内の黒雲が消え去り嵐が止み、雲一つ無い青空が広がった。
そして一面の花畑が現れ、その花畑の中心にマイカが居る。キラキラと光るマイカの周りを色とりどりの蝶が舞っている。
「………長……団長…ペトラ団長!」
アードルフの呼び掛けにペトラの脳内の花畑の風景が消え、ペトラは我に返った。
目の前にやや訝しげに自分を見つめるマイカと、その横のアードルフの姿が目に入った。
「マイカ嬢が御挨拶に対するペトラ団長の返事を待ってらっしゃいやすよ。」
「…へ?あ、いや、相すまなかった。
遠路遙々ご足労でした。会えて嬉しく思う。」
取り繕ったように真面目な返答をしたペトラの様子を見てアードルフが「プッ」と軽く吹き出し、ペトラがアードルフを睨んだ。
「……あの、恐れ入ります閣下、その…同盟を継続して頂けるのでしょうか?」
マイカはペトラとアードルフのやり取りに少し戸惑ったが、今回の訪問の目的である同盟継続の件について単刀直入に聞いた。
「勿論だともマイカ殿。
これからも我がステルクステ騎士団とラウムテ帝国との攻守同盟は継続する。」
「えっ!?」
というような、無言ではあるが、そのような驚きの表情をその場に居たステルクステ騎士団の騎士達全員がした。
リーセロットに至っては目を半開きにさせ、口を横一文字に結び、髪型も変に乱れたような、何ともいえない、おかしな表情になっていた。
アードルフは、今度は「アチャーッ」と声に出して言い、右掌で己れの額を「ペチンッ」と叩いた。
「皆、これは騎士団長である儂の最終決定だ!
ラウムテ帝国との攻守同盟は継続する!良いな!!」
「応!!」
ステルクステ騎士団の騎士達は、皆、ペトラの言葉を聞きながら苦笑いをしたり、苦虫を噛み潰したような顔をしたが、それでも最後には全員が賛同し、その後は文句などを言う者はいなかった。
「……ペトラ…さっきの私との話し合いは何だったのよ!?」
と、リーセロットが恨み言のようにペトラに言った。
「あ、…いや、やっぱり色々と考えると同盟は続けた方が良いかなー、なんて…ハハ、ハハハハッ。
…だがリーセロットよ、帝国の覚悟云々などといったことは、今後も熟考してくれよ!それは頼んだぞ!!」
「………まあ、いいわ。無事、同盟を継続して頂けるようだし!」
「そうとも!
おう、そうだマイカ殿、同盟継続の記しとして、儂の恋人に…いや、儂と友になって頂けぬか?」
「友?そんな畏れ多い…」
「マイカ、ペトラは私とも個人的に友と呼べる仲よ。構わないから受けておあげなさい。」
遠慮して辞退の言葉を述べようとしたマイカに、横からリーセロットが口を出した。
「判りましたペトラ閣下、光栄です。喜んで申し出をお受け致します、」
「おおマイカ殿、受けてくれるか。ならばお互い堅苦しい言葉遣いは止めにしよう。
儂も名を呼び捨てにするから、マイカもペトラと呼び捨てにしてくれ。」
「判りました、ペトラ…さん。」
「それは呼び捨てとは言わん。ペ・ト・ラ、だ。」
「じゃあ、ペトラ。」
(ズキューーン!!)
ペトラの胸を、何かが射ち抜いたような衝撃が走った。
「嗚呼…いい…
マイカ、もう一度、もっと大きな声で呼び捨てにしてくれ!」
「え?ペトラ!」
「おおーっ!もっとだ、もっと強く吐き捨てるように!!」
「ペッ、ペトラ!!」
「ああーっ!凄い!!
今度は儂を蔑んだ眼で見ながら名を呼び捨てに…
いや!いっそのこと、儂に侮蔑の言葉を投げつけてくれ!!」
(何なん?この人、もしかして、そっち寄りの人?M寄りの…?)
「ペトラ団長、いい加減にしやしょう。
ほら、マイカ嬢が困ってらっしゃいやすでしょう?」
困って言葉に詰まったマイカの横からアードルフが割って入ってきた。そして周りには聞こえない程の小声で
「…ったく、さっき初めて会った人に己が性癖をぶちまけるんじゃありやせんよ、団長…」
とペトラに向かって呟いた。
「オッ、オッホン!
いや、すまぬ。つい興奮…いや、調子に乗ってしまって…
ああ、そうだ、奥の庭に宴の準備をしておるから、マイカもリーセロットも共に行こう。
皆も行くぞ!」
「おおーっ!!」
騎士団長府の建物の裏側に廻ると、そこは庭というより、だだっ広い広場のような場所だった。
既に日が暮れて暗くなった中、幾つも焚き火が焚かれ、ステルクステの騎士達は何人か、何十人かのグループに分かれて一つ一つの焚き火を囲んだ。
マイカとリーセロットはペトラに伴われて一つの焚き火の前に置かれた椅子に座った。
そこにアードルフが金属製のグリル台のようなものを持ってきて焚き火の上に置き、自らもマイカ達と相席した。
そこにアードルフの従士という3名の若者が串に突き刺した肉や野菜を大量に持ってきてグリル台の上に置いた。バーベキューである。
マイカが広場を見渡すと、広場のあちらこちらに木樽が置かれており、人々がその樽の所に行っては柄杓を使って手に持った小さな樽のようなジョッキに液体を注いでいた。どうやら酒が入っているらしい。
「どれ、儂自ら酒を酌みに行ってやろう。
マイカ、何がいい?ワインか?ビールか?それともアブサンか?」
「取り敢えずビールで!!」
第76話(終)
※エルデカ捜査メモ〈76〉
ステルクステ騎士団団長ペトラは、心の性別が男性という訳ではないが、幼少の頃から好きになるのは同性の女性ばかりである。
そして、その好きになった相手から意地悪されたい、とか、強い態度言動をとられたい、とか、はっきり言ってドMである。
しかし、このような人物にはよく有りがちなことであるが、自分が好ましいと思う人物以外には、とことんドSである。
マイカに一目惚れしたため、あっさり前言を翻し、帝国との同盟継続を決めたステルクステ騎士団団長ペトラ。
この先も色々とやらかしてくれそうです。
これからもよろしくお願いいたします。




