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第16話『エルフとケルベロスと商人の男』

登場人物


◎舞原 彰(まいはら あきら:アキラ)

 男性 59歳

 身長180cm超 バキバキの筋肉質 スキンヘッド まつ毛の長い、キラキラした瞳の女性のような目

 定年間近の某県警刑事

 剣道七段(練士)柔道五段

 逮捕術上級(全国大会準優勝の経験あり)

 雑学好きのうんちく親父

 素人童貞

 殉職後、異世界にエルフの美少女に転生


◎アキラ

 年齢16~18歳くらいの見た目

 白金色の長い髪

 緑色の瞳

 先の尖った耳

 巨乳

のエルフ美少女

 舞原彰の転生後の姿

 現在、異世界を彷徨い中


◎ケルン

 モンスターであるケルベロスの子(♂)

 3つの頭、尻尾は1本

 中央の頭に他のケルベロスには無い、赤い尖った角が生えている。

 火を吹く

 甘いものが好き


◎ハンデル

 男性 30歳

 身長180cm強 細身の引き締まった体型

 茶色くせ毛短髪 茶色の瞳

 旅の行商人 剣の達人

 街道筋の脅威となるモンスターや盗賊などの退治を請け負う「闘商」としても活動する。

 割りと二枚目


◎ノーラ

 女性 10歳

 圧政下にあるコロネル男爵領クライン村に住む少女

 身長130cm弱 痩せ型

 茶色い髪のオカッパ

 青い瞳

 厳しい状況下に置かれながらも夢を諦めない、明るく活発な少女


◎コロネル男爵

 男性 44歳

 帝国創立以来の名門貴族の当主

 現当主で8代目

 領民に重税を課し、圧政を敷くクソ野郎


◎セバスティアーン

 男性 61歳

 身長195cmの大柄

 先代から仕える、コロネル男爵家の執事


◎マティアス

 男性 21歳

 赤毛の短髪 灰色の瞳

 身長約180cm ガッチリ型

 ウェイデン侯爵領南端の街グレンス衛兵隊の一員

 4人のリーダー格で良識家


◎ニールス

 男性 19歳

 亜麻色の短髪 黒い瞳

 身長約175cm 中肉

 グレンス衛兵隊の一員

 やや軟派な性格だが、気の良い優しい青年


◎レオン

 男性 20歳

 金色の短髪 青い瞳 割れた顎

 身長約185cm ゴリマッチョ

 グレンス衛兵隊の一員

 筋肉バカ 性格が良い


◎レクス

 男性 18歳

 金色の短髪 青い瞳 丸顔 頬にそばかす

 身長190cm超 デップリ体型

 グレンス衛兵隊の一員 レフィの弟

 少しトロそうに見えるが、素直な良い性格の持主

「……ん…」


 アキラの意識が戻りはじめていた。


「うっっ!」


 左側頭部に強い痛みを感じ、反射的に左手で押さえた。もう出血は止まっていた。

 

 アキラはゆっくりと右手をついて、上半身を起こしてみた。

 左側頭部の強い痛み以外にも、腕や足腰など、全身が鈍く痛む。

 見ると、両の前腕に大きな青紫色の(あざ)が付いていた。

 アソゥ団の男達にずっと掴まれていたからだろう。


「え…?」


 アキラは、身を起こした状態で、ゆっくり辺りを見回した。

 自分を襲っていたアソゥ団の連中の姿は一人も見えなかった。

 ただ、所々地面に血痕があり、辺り一帯、血の匂いが立ち込めていた。


 (アソゥ団の奴らは…?…一体、何処へ行った…?…何が起きた…?)


 (しば)し思考が働かず固まっていたが


「…そうだ!ケルン、ケルンは!?」


 急に立ち上がろうとして(つまず)き、両膝をついて倒れたが、また直ぐに立ち上がり、アキラはケルンを探した。


 街道から少し森へ入った所にケルンはいた。

 それは〈かつてケルンだったもの〉と形容されるような変わり果てた姿だった。

 (くさむら)の上に丸くなって横たわっているケルンは、全身に擦過(さっか)傷や裂傷を負い、多量に出血している。

 全身がぶくぶくに腫れ上がり、3つの顔の全てが目鼻立ちも判らぬ程に腫れて変形していた。おそらく顔中の骨がグシャグシャに砕けてしまっているのだろう。


「そんな…ケルン!ケルン!!」


 アキラは素早く駆け寄り、ケルンの元に膝をつくと、その変わり果てた身体を抱き上げた。

 まだ(かす)かに息も脈もあった。

 こんな状態で、なお生を保っているのは、やはりモンスターだからだろう。しかし、それもあと(わず)かの時間であるこては明らかだった。


「ああ…ケルン!ケルン!!

 ゴメンよ…オレがこんな所まで連れてきたばかりに…

 ゴメンよ…一緒に旅しようなんて言ったばかりに…

 ゴメンよ…守ってあげられなくて…

 ゴメンよ………」


 ケルンの身体に顔を寄せて大粒の涙を流しているアキラには、ハンデルが近付いてきていることなど気が付かない。

 ケルンを抱いて泣いているアキラ背後から、ハンデルは近付いてくる。


 ハンデルは、片手に豪華な造りのクリスタルの瓶を持っていた。中に薄い桃色の液体が入っている。

 アキラの真後ろまで来たハンデルは、瓶の(ふた)を抜き、中身の液体をアキラの頭上から振りかけた。

 

「えっ!何!?」


 アキラが後ろを振り向き見上げたところ、見覚えのない男が微笑みながら立っている。


「もう大丈夫さ。見な。」


 その見覚えのない男、ハンデルは(あご)をしゃくって、ケルンの方を見ろ、という仕草をした。

 その液体はアキラとケルンの全身を濡らした。

 すると、ケルンを抱いているアキラの前腕の(あざ)が消えた。

 左側頭部の鋭い痛みも、全身の鈍い痛みも消えていった。

 ケルンの姿にも変化が見られた。

 ケルンの全身の傷が一瞬でふさがり、全身の腫れも見る見る引いていき、3つの顔も元通りの、アキラが見慣れた顔に戻っていった。


「クーン、クゥーン、キューン」


 3つの顔とも目を開けてアキラを見上げ、ケルンは鳴き声を上げた。


「ケルン!!良かった!良かった……」


 アキラは、また大粒の涙を流して泣いた。今度は安堵(あんど)の涙だ。


 アキラは座ってケルンを抱いたまま、再び後ろを振り向き、ハンデルを見上げた。

 この男、ハンデルがアキラとケルンの怪我を治してくれたのだということは、はっきり判った。


「ありがとう!ありがとうございます!ありがとうございます!!」


 そう御礼を言いつつアキラは


 (この男が、アイツらを…アソゥ団を倒すなり、追い払うなりしたのかな?)


と思い


「あの…もしかして、あのならず者達を…?」


と尋ねてみた。


「ああ、俺が退治した!」


「一人で?」


「そうさ!」


 ハンデルは、自分一人でアソゥ団を退治したと、明確に答えた。


 (あれだけの人数を、たった一人で?)


 この時アキラは、自分が襲撃を受けた時から、日の傾きにあまり変化がないことに気付いた。


 (あれから、さほど時間は経っていないようだ…

 ほんの短時間で、あれだけの人数を片付けたのか…

 コイツ、途轍(とてつ)もなく強いみたいだな。)


「改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 …ところで、あなたは?」


「俺かい?俺はハンデル。行商人さ。

 まあ、ただの行商人というより、所謂(いわゆる)闘商ってやつさ。」


「闘、商…?」


「ああ、普通に暮らしている人達には馴染みが薄いが、闘商ってのは、通常の行商の(かたわ)ら、行商人組合(ギルド)や地方領主なんかから依頼を受けて街道沿いの掃除も請け負う武装商人のことを指すんだ。

 俺は、その筋では、結構有名なんだぜ。」


「それでは、あのアソゥ団達は?」


「ああ、行商人組合(ギルド)から依頼されてたんだ。」


 (アソゥ団を退治すべく探していたところに、オレが襲われていたタイミングと重なったというわけか…

 …あっ!そうだ!)


「あ、あの!私、どうなってました!?」


 そのアキラの質問が何を聞きたいのか、ハンデルは即座に理解し


「大丈夫!お前さんは何処も(けが)されてないよ!」


と、はっきりと力強く答えてくれた。


 (あ…未遂で終わったのか…良かった…良かった!)


「あの、本当に、本当にありがとうございます。」


 アキラは正座して両手をつき、丁寧に座礼をして御礼を述べた。


「あ、そんな、依頼のついでだったから、そこまでの丁寧な礼は要らないよ。ていうか、変わった作法だね、初めて見る。」


「でも、私と、このケルンの怪我まで治してくれて…あれは薬ですか?せめてあの薬のお代だけでも……

 あっ!?」


 アキラは、慌てて逃げてきたため、杖の棒以外の荷物を森の中の湖近くに置き忘れてきたことに気が付いた。


「あ、これかい?」


 ハンデルは、背後の地面上に置いていた物を取り上げて、アキラの前に置いた。

 それは、アキラがノーラやその家族から貰ったカバンと袋、ウェイデン領の衛兵達に貰った麦わら帽子などのアキラの所有物一式だった。


「あ!それは私の荷物!

 (かさ)(がさ)ね、ありがとうございます。

 ところで、この荷物が落ちていた辺りに…」


「ああ、6人ほど男が倒れていたな、アソゥ団の仲間が

 あれは、お前さんがヤッたのかい?そういえば、街道にも何人か転がっていたな…

 お前さん、なかなか腕が立つようだな。」


「その、倒れていた奴らは?」


「とどめを刺しておいたよ。生かしてはいけない奴らだからな。」


「………」


「悪いが、荷物の中を見させて貰った。

 お前さんの所持金では、とてもじゃないが、高級治傷薬(ハイポーション)の代金には釣り合わないな。」


高級治傷薬(ハイポーション)?」


「そう、高級治傷薬(ハイポーション)

 通常の治傷薬(ポーション)の何十倍もの治療効果がある優れもので、滅多に市場(しじょう)に出ない代物さ。

 値段は、同じ重さの(きん)より高い。」


(きん)より高い!?」


「そう、(きん)より高い。

 だからいいよ、こちらも気紛(きまぐ)れなんだから、気にしないで。」


「でも…そんな、そんな高価な物を…

 今は無理だけど、必ずお返しさせて頂きます。」


 アキラは再びハンデルに向かって座礼した。


「ところで、お前さんは誰なんだい?名前は?何処から来た?

 エルフってのは、見りゃあ判るけど。」


 ハンデルは、座ったままでいるアキラの前で自身も胡座(あぐら)をかいて座り、そう尋ねてきた。


「私…私は……」


 (どうしよう…この男に、オレは異世界から来たということを話してみようか…)


                第16話(終)


※エルデカ捜査メモ⑯


 高級治傷薬(ハイポーション)は、様々な薬草を配合して作った治傷薬(ポーション)に、治癒魔法を使える魔法使いが日数をかけて魔法を込めることによって出来上がる。

 その治療効果は絶大で、外傷であれば、どんな大怪我でもたちどころに治せるため、手に入れたいと思う者は多い。

 しかし、この世界では、魔法を使える者の人数が少ないため、ごく(わず)かしか製造出来ず、需要の多さと、その希少価値が相まって、非常に高価で取り引きされている。

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― 新着の感想 ―
 アキラも勿論ですが、ケルンが!となりました。  ポーションで回復して良かったです。
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