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第82話 君と海 7

 お店でそれぞれ料理を受け取った一同は海沿いにある高いブロック塀のそばで各々お昼を食べ出した。


「カレー美ん味ぇ!」


 徹人はブロック塀の上に座りカレーを口いっぱい頬張っていた。


「お前本当カレー好きだよな~飽きないか?」


 太一に尋ねられ徹人は笑顔で答える。


「全然! ⚪︎チローだって毎日カレー食ってるらしいしカレー食えば強くなれる気がすんだ!」

「⚪︎チローはカレーだけで強くなった訳じゃないと思うけど」


 太一は呆れながら徹人に突っ込んだ。


「クレープ美味しい~!」


 一方遥はブロック塀の前に立ち海を眺めながらクレープを食べていた。


「ルカちゃん海に来てまでクレープってブレないねー」

「まあね~かき氷とも悩んだけどやっぱダイレクトな甘味を感じたいからさ!」


 甘い物を食べてご機嫌な遥にユウは冷静に声をかける。


「クレープで東の上着汚すなよ」


 ユウは遥が両腕で握りしめている静夜のアウターに目をやると、遥はクレープ片手にぐっと親指を突き立てた。


「だいじょーぶ! 絶~対汚さないから! 命に代えてでも!」

「命まではかけなくても良いと思うが」


 更にもう一方では美菜が明宏の隣でロコモコを食べていた。


「焼きそば美味しそう~一口頂戴?」

「良いよ、俺もそれ一口貰っていい?」

「どうぞどうぞ~」


 そう言って美菜と明宏はお互いの食べ物を交換しあってた。


「あれがリア充名物「食べ物交換」か」


 そんな2人のやり取りを遥は荒んだ目で眺めている。


「別にリア充じゃなくても友達同士でもやるだろ」

「じゃあユウちゃん、私と一口交換する?」

「焼きそば食ってる途中に甘ったるいクレープなんて食べたくないから嫌だ」

「ですよねー」


 それから遥が静夜の方を見ると、静夜はサイダーをゴクゴクと飲んでいた。


 そんな静夜の姿を遥は涎を垂らしながら眺める。


「じゅる……いいなー。サイダーの容器になりたい……」

「相変わらず思考回路が終わってんな」


 相変わらず変態発言をする遥は静夜を観察しながら今更とある事実に気づく。


「というかアウターの事で頭いっぱいになってたけどよくよく考えたら静夜くん上半身裸だよ?? 下着一丁みたいなものだよ?? こんな破廉恥な光景が日中の昼下がりの公の場で拝めるなんてヤバくない?」

「水着に対してそんな感情が出てくるお前の方がヤバいだろ」

「流石ルカちゃん、いつも以上に壊れてきてるね」


 遥の言動にユウとルカはすっかり慣れきっていた。




 そうして各々お昼を食べ終えた後、明宏がとある提案をした。


「午後は浜辺でビーチバレーでもやらないか? なんかコートが新しく出来たって聞いたけど」


 明宏の言葉に太一は浜辺の一角を指差す。


「アレじゃね? 誰かやってるっぽいけど」

「係の人に聞いてみるか」


 先に食べ終わっていた静夜と太一が係の人に聞き、予約を取る事に成功した。


「という訳で午後はビーチバレーやろうぜ!」


 明宏の提案に遥はそろそろと手を挙げる。


「あー私ちょっと見学……」

「葵さん午前中は遊べなくて暇そうだったからさ! これならみんなで出来るよな!」


 明宏の言葉に遥は手を下げて苦笑いした。


(やっべー!! 午前中私だけ泳いでないから変な気を遣われているー!! でも私本当に今日は遊びに来たと言うより水着姿の静夜くんを堪能しに来ただけなんだけどなー!! でもそうだよね……クラスのみんながワイワイ遊んでるのに1人だけ遊べてない奴が居たら気も遣うよね流石リア充山本くん! そこがモテる秘訣なんだろうなー!! でも私には要らないその気遣い!!)


 遥は1人だけ汗をだらだらと流しながらコートへと向かった。


「うっ、ごめんよ静夜くんのアウターくん……私、少しの間ビーチバレーに行ってくるね……また必ず帰ってくるから!!」

「いよいよ言動が女子高生でも許されない範囲になってきてる」


 遥は荷物置き場でアウターとの別れを惜しんでいると、横に居るユウに突っ込まれた。


 その後8人はチーム分けをしてビーチバレーを始めた。


 チームはバランスが取れる様に静夜と徹人は別々になる様組んだ結果、静夜、遥、ユウ、太一のチームと徹人、明宏、美菜、ハルのチームで分かれた。


「そーれっ!」


 徹人のサーブに静夜がすぐさま反応する。


「よっと」


 静夜がトスしたボールをユウがネット前に投げ、太一がジャンプしながらアタックした。


「なんの!」


 しかし、太一のアタックは美菜に取られてしまった。


「え!? 美菜ちゃんすごーい!」


 後ろでハルが驚いていると、自慢気に明宏が答えた。


「美菜は元女バレのエースだからな! バレーなら俺より上手い!」

「何で山本くんがドヤってるのそれ?」


 こうしてラリーが白熱する中、コートの隅で遥は手も出せずにみんなのプレイを眺めていた。


「すっごいな~……静夜くん」


 ボケーっと遥が静夜の後ろ姿をずっと眺めていると、突然ユウの声が聞こえた。


「遥! ボールいったぞ!」


「え!? あっ!?」


 遥は慌ててボールを取ろうと構えるが、ボールはそのまま遥の顔面にヒットした。


「いった~い!!」


「大丈夫か!?」


 顔を覆いながらしゃがみ込んで悶絶する遥にみんなが一斉に駆け寄る。


「あーちゃんごめん! 全然ボール取れてなさそうだったから軽くパスしたつもりだったんだけど!」


 ボールを当てた美菜は両手を合わせて本当に申し訳なさそうに謝る。


「いや良いよー、よそ見してた私の方が悪かったし」


 遥はボールの当たった赤ら顔でへらへらと答えた。


「冷やした方が良いかな? 係の人に氷とかないか聞いてくるね!」

 

 美菜は急いでビーチバレーコートを貸し出している係の人の所へと向かった。


「なんか大事(おおごと)にしちゃってごめん……私がドジなばっかりにかたじけない……」


 心配して駆けつけたみんなに遥は戸惑いながら謝る。


「別に構わないけど、大丈夫か葵さん」


 太一に訊かれて遥は笑いながら答える。


「当たった時の衝撃は凄かったけどだいじょーぶ! みんなは私に構わずバレーやっててよ! 折角コート借りたんだし、私は荷物のとこで休憩してるからさー!」


 そう言いながら遥はそそくさと立ち上がって荷物の置かれている所へと逃げる様に去って行った。


「葵さん大丈夫かな……」


 心配そうに眺める一同にユウは冷静に答える。


「遥が怪我するのは割といつもの事だし大丈夫だろ」


「係の人呼んできたよー!」


 そんな中美菜が係の人を連れて戻って来た。


 その後係の人は遥の怪我の状態を確認して氷嚢(ひょうのう)で打った所を冷やす様指示を出してまた去っていった。


「うーん……しかし海で遊べない葵さんでも遊べると思って提案したんだけどな……」


 遥の事を明宏が気にしているとそれにユウが冷静に答える。


「気にしなくて良いと思うぞ。遥は遥なりに楽しんでるから」

「そうか……? 葵さん今日全然遊べてないのに怪我までしたら嫌な気分に……」


 明宏が気にかける中遥はほっぺたを冷やしながら笑顔でみんなに手を振っていた。


「静夜くーん! みんなー! 頑張ってねー!!」


「な? 大丈夫だろ?」


 遥の態度に明宏も安堵した。


「そうだな……何か勝手に気にしすぎてたわ」

「そんじゃあ続きやるかー」


 こうして遥以外の面々はまたバレーを再開した。


 一方遥はと言うと。


「ただいま! 静夜くんのアウターくん♡ ボール当たった時はめっちゃ痛かったけど結果的にバレー抜けれたし安全に静夜くんのプレイも眺められるしここには静夜くんのアウターもあるし最っ高! 怪我の功名とはまさにこの事だね!」


 遥はみんなとは別の形でしっかりと楽しんでいた。

 

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