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第81話 君と海 6

 一方静夜の後を追って様子を見ていた明宏は男性がすぐに遥の元から去ったのを確認した後みんながいる海へと戻っていった。


「アキくん! あーちゃん大丈夫だった?」

「うん、なんか男の人達すぐ帰っていったし静夜も行ったし大丈夫だと思う」

「そっか~良かった~」


 それから程なくして静夜もみんなの元へと戻って来た。


「あれ? 静夜戻ってくんの早くね?」


 明宏に問われて静夜は呆れた様に話す。


「なんか葵さん1人でナンパ撃退したらしくてもう大丈夫っぽいから戻って来た」


 静夜の言葉に隣で聞いていた美菜が声をかける。


「やっぱナンパされてたんだあれ……とういかまた1人にして大丈夫なの? あーちゃん本当は怖くないのかな……?」


 美菜の言葉に遥の先ほどの態度を思い出す。


「別に普段通りだったけどな」

「え~でも内心怖いとか思うんじゃないかなぁ? 一歩間違えれば何かあったかもだし」


 そう言われて静夜は確かに……と砂場にいる遥の方を見やった。


 静夜につられて明宏と美菜も心配そうに遥を見やる。


 すると遥は静夜のアウターを丁寧に畳んでビーチマットの上に置きその前に座ってアウターに対して拝んでいた。


「……」


「おーい! そこの3人何ボケーっとしてんだよ?」


 太一に声をかけられ静夜は大声で返事をした。


「今行くー!」


 それから美菜は明宏へと声をかける。


「あーちゃんってやっぱ変わってるんだねー」

「そうだな……まああんだけ不審者の動きをしてたらもう誰も声掛けなさそうだな」


 それからお昼になるまでしばらくみんなは海で楽しく過ごしていた。





 一方アウターへ拝み終わった遥は改めてアウターを手に取り観察を始めた。


「このアウターはadid⚪︎sか~。好きなブランドなのかな? というか同じの買ったらペアルック出来るのでは!? 私天才か!? いや、というか……」


 遥はごくりと唾を飲み込む。


「静夜くんは着とけば? って言ってたけど……本当に着ていいのかな!? 流石にもう脱ぎたての温もりは消えてきているけど静夜くんがしばらく着ていたアウターを着る……これってもうカレカノじゃない!? 彼氏のジャージを借りて着てる女子じゃない!? いや、このアウターは肌に密着してたからむしろ彼シャツに近い概念では!? 果たして本当に着ていいのか!? いや、迷ってる間に静夜くんが戻ってきて「着ないなら返して」って言ってくる可能性もある! 折角のチャンスをドブに捨てるなんて勿体無い! ええーい! ままよ!」


 そこまで早口で言い切った遥はアウターに腕を通そうとし、そして途中で挫折した。


「だ、駄目だーっっ!! 折角の静夜くんの脱ぎたてアウターという幻のアイテムを私が着る事によって(けが)してしまうんじゃないかと思うと勿体無さすぎてとてもじゃないけど腕を通せない!! いや既に私が手に持ってしまっている時点でもう時既に遅しかもしれないけれどそれでもまだ内側の新鮮な静夜くん成分が失われていく事に耐えられない!! 彼シャツしたい気持ちと汚してはいけない気持ちが2つあるー!! 助けてハ⚪︎ワレ! なんとかしてー!!」


 遥が悶絶しながらアウターを着るか着ないか悩んでいる内に気づいたらお昼の時間になり海で遊んでいた一同が帰ってきた。


「あ! やばい静夜くんが帰ってきちゃう!!」

「俺が帰って来たら何かヤバいの?」


 いつの間にか遥の後ろまでやって来ていた静夜に聞かれて遥は声をかけられる。


「ひゃあっ! せ、静夜くん! 違うの!! 決して着たくなかった訳ではなくて!」


 アウターを必死に握りしめながら謎の弁解をする遥に静夜は尋ねた。


「さっきなんか上着に拝んでなかった?」

「いや! あれはその……海の壮大さに感動しちゃって拝んだだけで!!」


「ふーん、ところで俺も貸した時はあんま考えてなかったけどよくよく考えたらクラスの男子が海入った後の上着とか普通に着たくないよな? なんかごめん」


 静夜に謝られ遥は首を勢いよくぶんぶんと横に振った。


「いえいえそんな!! 全然嫌なんかじゃないんです!! ただ着たくても勿体無い……いやその汚さないか心配で!! adid⚪︎sの⚪︎⚪︎(ピー)円のアウターを着る資格が今の私にあるのかなと悩んでおりまして!!」

「何で値段まで知ってんの?」


 遥の発言に突っ込みつつ静夜は手を差し出した。


「まあ着ないなら持ってても邪魔になるだろうし返して……」

「いや! やだ! もう少し持ってる!! もう少し落ち着いたら着るから!! 約束するから!!」

「子供かな?」


 まるで子供の様に駄々をこねる遥に静夜は呆れ気味に声をかける。


「分かったよ……それじゃあ俺が帰るまで持っといて」

「やったー!! ち、因みに本当に着ても良いんだよね!!」


 遥の確認に静夜は面倒そうに答える。


「どっちでも良いよもう。どうせ俺はもうこの後着ないだろうから」

「それは……私が今現段階で持っている事により私の汗や皮脂汚れなどを気にして着られないという事?」

「いや、そうじゃなくて……朝は風が肌寒くて着てただけでどうせ後から着る気なかったし」


 静夜の言葉に遥は満面の笑みで返す。


「あ、そうなんだ~じゃあ帰りまで私が大事に預かっておくね!」

「お、おう」


(なんか預けてるのが急に不安になってきた……)


 静夜は一抹の不安を抱えつつもみんなと海の家へと向かうのだった。


「わーお昼だとすっごい混んでるね~」


 ハルはお昼のピークでごった返してる海の家の店内を見て率直な感想を述べた。


「まあ夏休みだしお昼だし混むよな普通。どうする? テイクアウトにしてどっかで食べるか?」

「そうだな、めちゃくちゃ待ちそうだし」

「俺も賛成~」

「私も~」


 ユウの提案に皆賛成の声を上げる。


「それじゃあヒロ、俺は焼きそばで」

「俺はイカ焼き」

「俺カレー!」


 太一、静夜、徹人はそれぞれ明宏に注文を伝えた。


「じゃあ私も焼きそばで」

「私ロコモコ食べてみたい!」

「私もロコモコがいいな~」

「私クレープで!」


 更にユウ、ハル、美菜、遥もノリノリで注文を伝える。


「ええーと焼きそば3のロコモコ2のイカ焼きとカレーとクレープが1で……」


 明宏はみんなから聞いた注文を店員さんへと伝えた。


「ではお会計5500円です」


(課金に比べれば安いもん……いや、これを課金に回せば更なる神引きが出来た可能性も……)


 明宏は約束通り全員の会計を支払いながら果たして自分が得してるのか損しているのかを計算していた。

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