第76話 君と海 1
「青い空、白い雲、照りつける太陽、爽やかな潮風……海だーー!!」
遥は夏らしい涼しげなワンピースをひらひらさせながら踊る様に歓喜していた。
「遂に、遂にこの時がやって来た!!
待ち遠しかった……」
一緒に来ている一同に気づかれない様小声で呟きながら遥はひそかに拳を握りガッツポーズする。
「静夜くんの水着が見れる!!」
「わあ、なんだか今日のルカちゃんいつも以上にヤバそうだね~」
「だな」
遥がニヤけ顔で浮かれているところにユウとハルはやれやれと呆れ気味に駆け寄って来た。
「浮かれてるとこ邪魔しちゃなんだが、山本の彼女も着いたらしいから挨拶行くぞ」
「あ、そう言えば来るって言ってたね」
それから3人は待ち合わせ場所の海の隣にある公園へと向かう。
そちらにはもうすでに今回参加するメンバーが全員揃っていた。
「はじめましてー、アキくんと付き合ってる金森美菜でーす。
ってうわー! 遥さんだっけ? 噂には聞いてたけどめちゃ美人じゃんヤバッ! 顔ちっさ! 芸能科のスカウト断ったとかマジヤバすぎてウケる~!
他の人たちもアキくんと友達なんだっけ? 今日は1日よろ~」
髪を明るい茶髪に染めている如何にもギャルといった出立ちの女性、金森美菜は軽いトーンで挨拶してきた。
「えーと、遥です、多分噂になってる人で間違いないです、まあ……」
遥は正直苦手なタイプだなと思いつつも美菜の胸部をチラリと一瞥する。
(何がとは言わないが……でっっっっ!!!
いやいや、発育良すぎない? 本当に同級生??)
遥が混乱してる中、隣でハルとユウも挨拶しだした。
「私、天江春香って言いま~す。推しは零様一筋! よろしくね~!」
「私は河合優希。今日はよろしく」
「みんなよろ~」
女子の面々が和気藹々(?)と挨拶をしている中、先に挨拶を済ませていた男子達は女子に聞かれぬ様そっと明宏に声をかけていた。
「なんか予想外のタイプがきたけどお前本当デカいの好きなのな?」
太一に問われた明宏はあっさりと答える。
「人間本能には逆らえないからな!
それにああ見えてA◯ex上手いんだよ」
「アプリゲー意外にも色々とやってるんだな、よく時間あるよな?」
「そりゃあスマホゲーのデイリーは電車の中で終わらせてるから家ではPCに張り付いてるしな!」
明宏からの答えに静夜はなるほどと納得した。
「だからヒロは目が悪いんだな」
「そういやヒロの視力っていくつー?」
徹人に問われた明宏はドヤ顔で答える。
「両目共に0.1以下だ!」
「それドヤれる事じゃねーぞ」
男子が勝手に盛り上がってるなかユウが手を振って男子に呼びかけた。
「おーい男子ー!私ら着替えに行くから海の家の前集合でいい?」
「オッケー!」
ユウの問いに徹人は両手で丸を作りながら笑顔で快諾した。
「あ、オッケーで良かったよな?」
その後徹人は他の面々に聞きそびれていた事を思い出し慌てて聞き返した。
「異論無し」
「俺も別にどこ待ち合わせでも良い」
「大丈夫大丈夫!」
明宏、静夜、太一がそれぞれ答えるとユウはそれじゃ、と女子達の所に戻り女子達はそのまま更衣室へと向かっていった。
「いやー楽しみだな!」
これから海で遊ぶ事を楽しみに徹人が笑顔でそういうと、明宏と太一もうんうんと首を縦に振った。
「みんなビキニかなーやっぱ」
「いや、葵さんだけスク水なんて事もあり得るぞ、なあ静夜?」
鼻の下を伸ばしながら問いかけてくる太一に静夜は真顔で答えた。
「流石にないと思いたいけど葵さんならあり得そう」
「いや普通に納得するのかよ」
ケラケラと笑う太一をよそに静夜は遥がどんな水着を来てくるのか考えた。
(まあ流石の葵さんでもスク水はみんなが止めるだろうしそれはないだろうけど……でも葵さんのセンスって割と変な時あるしめっちゃ奇抜な格好かも……全身ウェットスーツとか、はたまたカラフルすぎるレインボーカラーとかあの皺猫?とかいう変な猫プリントされた奴とかの可能性も……そういう時どう声かけてあげれば良いんだろう?
無理にでも似合ってるというべきか? 正直に変だと伝えるべきか?)
真剣な表情で悩む静夜に徹人は声をかける。
「静夜ー、何そんな考え込んでんだ?」
「いや、女子の水着に対してなんて声かければ良いのか……」
「ん? 泳げればどんなんでも良くねー?」
徹人の返事に静夜はハッとする。
「……まあ、水着として機能していればとやかく言う事もないか」
(何で俺葵さんに感想言う前提で考えてたんだろ? いやまあ葵さんなら絶対感想聞いてきそうだとは思うけどわざわざ今考える必要もないもんな、そもそも感想聞かれるかどうかも分からないんだし、流石に自信過剰過ぎる……なんか考えてると恥ずかしくなってきた)
静夜は照れ隠しの如くすかさず更衣室で水着に着替えて、いち早く海の家へと向かった。
「俺先に行ってるから!」
「早っ!?
てか静夜の奴真っ先に行きやがったけど、割とむっつりなのか~?」
太一がニマニマとしてると、横で水着に着替え終わった徹人も飛び出して行った。
「待てよ静夜ー! 1番乗りなんてずりーぞ!」
徹人が駆け出して行ったのを明宏はやれやれといった顔で眺めていた。
「高校生にもなって落ち着きねーのかあの2人は」
「まあ静夜は意外だけどそういやあいつ岐阜出身だし海ではしゃぐ気持ちも分かる……って、ヒロ、何してんだ?」
着替え終わった太一がふと明宏の方に目をやると、明宏は膨らませた浮き輪とボートを片手に今度はビーチボールを膨らませていた。
「何ってそりゃ折角の海なんだしな、あ、全員分の水鉄砲も持ってきてるから安心しろよ」
「お前が1番はしゃいでんじゃん……そういやお前も埼玉だったか」
明宏の用意周到っぷりに太一はため息をつきつつも荷物を半分持って太一と共に海の家へと向かうのであった。
久々の更新間が空きまくってしまいすみません。気づいたら夏終わってもうじき冬ですね。




