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第74話 君とガチャ

 季節はめぐり7月。本格的に暑くなってきた頃。


 明宏は静夜と徹人と太一にハイテンションで質問をしだした。


「夏と言えば海! 海と言えば水着! 水着と言えば~?」


「え? 急に呼び出したと思ったら何事?」

「何何? 海行くのか!?」


 戸惑ってる太一や海に行けると目をキラキラとさせている徹人を無視して明宏は続ける。


「水着ガチャ! この日の為にどのゲームもガチャの誘惑を我慢して石を貯め続けた! モ◯ストもパズ◯ラもF◯Oもウ◯娘もブル◯カもNIK◯Eも!」


「前から思ってたけどヒロ、ソシャゲやり過ぎじゃね?」


 静夜の問いに明宏は嘆く様に答える。


「しょうがないだろ。どのゲームも面白いし魅力的なキャラが多いのが悪い。

 そんな訳でこれより誰が1番豪運の持ち主なのかを決めようと思う」


「え? 何で急に?」


 明宏の発言に太一が突っ込むが、明宏はそれをスルーして話を続けた。


「これから3人に俺が貯めに貯めたガチャ石を使ってガチャを引いもらいます。そして1番良いキャラを引いた奴が優勝! って事で」


 明宏の説明に静夜が苦言を呈す。


「いや、自分で引けば良いんじゃねーの? それで結果悪くて責められるとか嫌だし」

 

 正論を話す静夜に明宏は頭を下げて頼み込んだ。


「絶対に責めない! 断言する! 何が出ても絶対悪く言わないから! 頼むから引いてくれ! 俺は去年の夏何の成果も得られなかったんだよ! こういうのは物欲のない奴が当てるって相場で決まってるしマジ頼む!」


 明宏の頼み込みに、太一はやれやれと呆れる様に答える。


「わーったよ。引けば良いんだろ引けば」

「ありがとうたっちゃん! それじゃあ早速このガチャから引いてくれ!」


 明宏はガチャ画面を開いた携帯を机の上に置いた。


「まあ俺が一発でサクッと当ててやっからよ!」


 そう言って自信満々にガチャを引いた太一だったが、結果はあまり良くなかった。


「どうだ? ヒロ何か当たりいるか?」


 太一に問われた明宏は低い声で太一に睨みつける様に答えた。


「2度とヒロ呼びすんじゃねえ◯すぞ……」

「さっき責めないって言ったくせにガチギレじゃねーか」


 明宏は冷静に眼鏡の位置を直しつつ今度は静夜の方へ話しかけた。


「まあ太一は当てにしてなかったからな。静夜、頼んだぜ!」

「ええ……この流れで俺?」


 明宏の様子に引きつつもガチャを引かないといけない雰囲気に静夜は仕方なくガチャを引いた。


 結果は大爆死だった。


「せ~い~や~く~ん〜? ただのゲームだからって気合い入ってなさすぎじゃないかい?」

「確率1%って書いてあるししょうがねーだろ!」


 明宏が笑顔でブチギレてくるのに対し静夜は正論を言い放つ。


 しかし明宏はそれをスルーして今度は徹人の方へと話しかけた。


「てっちゃん! 我が希望の星! 当ててくれたら何でもするぜ!」

「え!? マジ!? 良いのだしたら何かしてくれんの!?」


 明宏の言葉に徹人が興味津々で訊ねると、明宏は満面の笑みを浮かべた。


「ああ! 水着キャラを当ててさえくれれば何でも願いを聞いてやる!」

「よっしゃあー! じゃあこれ押せば良いんだよな?」


 そう言って徹人は10連ガチャの隣の単発のガチャボタンを押した。


「あっ! 徹人、それは単発……」


 明宏が突っ込む間もなくガチャ画面からはキラリと輝く演出とともに水着キャラが出てきた。


「マ、マ、マジかよ!? 単発で水着限定当てるとかヤバいって!!」


「これ当たり? やったー!」


 まさかの強運を見せつけた徹人に、明宏は興奮気味に他のゲームのガチャ画面を開いた。


「じゃあ今度はこれ引いてくれ!」


「え? まだあんのかよ? ほい」


 言われるがままに徹人がガチャを引くと、またもや限定キャラを当てた。


「神様仏様徹人様!! 次はこれを!!」

「いいぜー、それっと」

「やったぁぁ!! 推し来たー!!」


 こうして徹人は3人に豪運を見せつけた。


「マジかよてっちゃん」

「1%のガチャをそれぞれ3回当てるとか、確率どうなってるんだ……?」


 太一と静夜が横で感心していると、徹人は目を輝かせながら明宏に話しかけた。


「なあヒロ、当てたら何でもするってさっき言ったよな?」

「もっちろん! 俺に出来る範囲なら何でもしてやるさ! こっちは天井までガチャ回さずにすんだんだ、多少の出費など大した事ない!」


 満面の笑みで承諾する明宏に徹人はそれじゃあと笑顔で口を開いた。


「みんなで海行こーぜ! 海!」


「……えっ? 海?」


 徹人の思いもよらない発言に明宏は再度聞き返すと、徹人はキラキラとした笑顔で話し出した。


「夏と言えば海だろ! もうそろ夏休みだし泳ぎたいし! そんでてっちゃんの奢りでみんなで美味いもん食べよーぜ!」


「なるほどヒロの奢りか。悪くないな」

「俺も賛成」


「ちょっと待て、徹人は良いがお前らを奢る筋合いは無い」


 徹人に賛同する太一と静夜に明宏は冷たく言い放つ。


「何でだよヒロ~俺たちだってガチャ引いて協力したじゃんか~なあ静夜?」

「そもそも今日大事な話があるとか言って俺たちを朝早く集めたのヒロだろ。折角みんな早く来たのにな」


 静夜の言葉に太一もそーだそーだ! と追撃する。


 実は明宏は3人に今日朝早めに登校するようあらかじめお願いしていたのだ。


「分かった、分かったよ。お前らにも奢るよ」


「よっしゃあ!」

「やった!」


 太一と静夜がハイタッチして喜んでいると、そこに遥とユウとハルが登校してきた。


「おっはよー静夜くん! てか男子で何盛り上がってるのー?」


 早速遥が何事かと声をかけると、徹人がニコニコな笑顔で答える。


「葵さんおはよー! 今度みんなで海に遊びに行く事になったんだー。あ、どうせなら葵さん達も一緒に行こうぜ! ヒロが何でも奢ってくれるって!」


 勝手に話を進める徹人を明宏は慌てて止めに入った。


「待て待て! 来た奴全員奢るとは言ってな……」

「ええー!? 山本くん全員分奢ってくれるなんて太っ腹だね!」


 明宏が話し出すとほぼ同時にハルに話を遮られ明宏の言葉は誰の耳にも届かなかった。


「あ、あの! それって静夜くんも参加するの?」


 遥が静夜に問いかけると、静夜は静かに答えた。


「まあ、ヒロが奢ってくれるみたいだし」

「海って事は水着を着るんだよね!?」

「え? まあ折角行くなら泳ぎたいしそりゃあ着るだろうけど……何で?」


 当たり前すぎる質問に困惑する静夜を見ながら遥は静夜が海に水着姿で遊んでいる所を妄想した。


「そ、そんな……はあはあ、そんな、は、破廉恥が許されるなんて……」


 恍惚な表情を浮かべて鼻血を垂らす遥を即座にユウは引っ張って静夜から離した。


「悪ぃ東、一旦このアホ回収してくわ」

「う、うん」

「あ、待ってよユウちゃんルカちゃん!」


 遥を連れて行くユウの後をハルはそのまま追いかけていった。


(河合さん、手慣れてると言うか、流石だなぁ)


 静夜は遥の言動に引きつつもユウの素早い対応に感心していた。


 一方太一はヒロに話しかけていた。


「あ、どうせ女子も来るならヒロの彼女も連れて来たら?」


「それは良いけどさ……この流れ、マジで俺が全員分のメシ奢る感じになってね?」


 明宏の言葉に太一は笑顔で答える。


「ゴチになりまーす!」

「マジかよ……マジか……」


 お目当てのキャラを当てられた事は嬉しいが、もしかするとガチャよりも大きな出費になるのでは? と心配する明宏なのであった。

夏休みソシャゲ忙しくなるあるあるだよね

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