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第72話 君を見かけた日

 それぞれが各々に進路で悩んでいた月曜日。

 進路とは全く違う事で悩んでいる者がいた。


 小鳥遊学園の隣の区にある女子校、早乙女高校にて。


「おっはよーちーちゃん!」


 大野あかりは自身のすぐ後ろの席の小野千鶴へと元気良く挨拶をした。


「あ、おはようあかりちゃん……」


 一方、千鶴はやや落ち込んでいる状態であかりへ挨拶を返す。


 そんな千鶴を見てあかりはすぐさま質問した。


「どうしたのちーちゃん、元気ないじゃん。何かあった?」


 あかりに訊ねられ千鶴は小さく頷く。


「土曜日にね、ちょっと買い物に出かけたんだけど……そしたらね、前に私の初恋だったって話した男の子がいて……」

「え!? 確か、東……静夜くん? だっけ? 凄いラッキーじゃん! それで? 声かけたの?」


 目を輝かせながら質問するあかりとは対照的に暗いトーンで千鶴は続きを話し出した。


「ううん。声をかけようかと思ったんだけど……静夜くん、可愛い女の子と2人で歩いていたの……」

「えぇ!? そうなの!? あ、でも、歳の近い妹とかお姉さんとかの可能性は?」


 千鶴の話を聞いてなんとか「彼女」以外の可能性を見出そうと質問するあかりに、千鶴は首を横に振る。


「それはないよ。静夜くん双子のお兄さんしか兄弟いないって言ってたし」

「あ、じゃあ親戚とか!」

「そうかもだけど、親戚同士でも付き合う事は出来るよ」


「そうなんだ!? あー、でもさ、まだ100%彼女って決まってる訳じゃないよね?」

「でも相手の女の子めっちゃ可愛かったんだよ? 小鳥遊学園って芸能科もあるし、モデルさんとかだっているし、そりゃあ可愛い子に告白されたら付き合うよね」


 落ち込んでため息をつく千鶴に、あかりはポンっと手を叩いた。


「それなら! 静夜くんに直接彼女なのか聞きに行こう!」


「……え? 静夜くんに直接? いやでも、私連絡先も知らないし……」


 千鶴がバツの悪い口ぶりで話すと、あかりは笑顔で答える。


「それでも学校は知ってるんでしょ? なら学校まで行ってみようよ!」


「え? いやでも他所の学校に行ってまで会うほどの事では……」

「そんなウジウジしてたって始まらないよ! それじゃあ明日の放課後早速行ってみよう!」

「えぇ…… だ、大丈夫かなぁ?」


 他所の学校へ行く事を心配する千鶴をよそに、あかりはやる気に満ちていた。


 そして次の日の夕方。


「ここが小鳥遊学園かー! なんて言うか、大っきいねー!」


 放課後授業が終わった後千鶴とあかりはすぐに電車に乗り、小鳥遊学園までやって来ていた。


 小鳥遊学園の大きな正門を見てはしゃぐあかりに対して千鶴は不安が隠しきれず表情にまで表れていた。


「あ、あかりちゃん、私達他校なんだし、あんまりはしゃぐのはどうかと……」

「ええー? 別に放課後なんだし大丈夫じゃない? それよりさー静夜くんの情報収集どうしようか?」

「え? あ……」


 2人は小鳥遊学園まで来たは良いもののノープランで来ていたのだ。


「前回といい土曜日といいちーちゃんが運良く静夜くんに会えてるから、校門前まで来れば会えるかなと思ったんだけどなー」

「そんな都合良くいかないと思うよ。

それに静夜くん、寮にいるならもう寮に帰っちゃってるかも……」

「うーん、あ! じゃあ友達だから寮に入れてってお願いするとか?」


 あかりの提案に千鶴は首を横に振る。


「無理だと思う……ただでさえ男子寮なんて女子立ち入り禁止な事が多いし、小鳥遊学園は芸能科もあるから外部との接触は厳しいってネットにも書いてたし……」


 千鶴は来る前に事前に小鳥遊学園の事を調べており、他の学校以上に小鳥遊学園のセキュリティの高さは知っていた。


「ふーむ、折角来たのに無駄足になっちゃうのか……。せめて手紙とか渡せたりしないかなぁ?」

「うーん、どうだろう? 手紙くらいなら大丈夫なのかな?」


 2人が正門の隅で悩み込んでいると、学校からとある人物が足早にやって来た。


(はぁ、やっと日直終わった……この後すぐスタジオ向かわなきゃな)


 携帯で時間を確認した後その携帯をズボンのポケットにしまうと、陽太は正門の方の見覚えのある横顔を見つけ一瞬驚く。


「え!? 小野さん!?」


 その陽太の声に千鶴も気付き陽太の方へと振り向いた。


「あ! 陽太くん!」


「え? あ、東陽太!?」


 千鶴の方へ向かって来る陽太を見たあかりはとなりですっとんきょうな声を出していた。


「小野さん、久しぶり!」

「陽太くんこそ、久しぶり」


 2人が挨拶を交わしてる横であかりは陽太と千鶴の顔を交互に見合わせて千鶴に確認する。


「あの、ちーちゃん? もしかして、東陽太とと、友達、なの?」


「え? うん。あ、陽太くん、こっちは私の友達の大野あかりちゃん」


「え、ええ!? あ、初めまして、あ、あかりです!」


 まさかの自分の友達の友達が芸能人という事実にあかりは挨拶しつつも驚き目を白黒させている中、陽太は千鶴に話しかける。


「大野さん、ね。よろしく~。ところで小野さん……ええと、会ったら色々聞きたい事があったんだけど……とりあえず元気そうで良かった」

「うん。陽太くんも元気そうで良かった」


 千鶴が返事をすると、陽太は照れ隠しの様に頭をかきながら話を続けた。


「えと、とりあえず俺今急いでてゆっくり話せないからさ、連絡先だけ交換しない? 嫌ならいい、けど……」


 精一杯の努力を振り絞って陽太は千鶴に連絡先を聞く。


 しかし千鶴はそんな陽太の様子は特に気にする事なく首を縦に振った。


「うん、いいよ。急いでる時になんだかごめんね」

「いやいや! 全然走ればまだ間に合う時間だし!」


 それから陽太は急いで千鶴と連絡先を交換した後、「それじゃあ、また!」とだけ言い残し走って去って行った。


 数分のあっという間の出来事に呆然としていたあかりは我に返る。


「……はっ!? え? あかりが東陽太と連絡先交換してた!? や、やばっ!?」

「ごめんね、言ってなかったら驚くよね」


 千鶴は携帯を鞄にしまいながらあかりに明るく話す。


「でもこれで目的は達成出来そうだよ。ありがとうあかりちゃん」

「え? いやいや、目的は静夜くんに事の真相を聞くんじゃなかったの?」

「それなら多分もう大丈夫。陽太くん経由で聞けば」


 千鶴の言葉にあかりは不思議そうに訊ねる。


「えーと、東陽太と静夜くんは友達って事?」

「ううん、陽太くんは、静夜くんの双子のお兄さんだよ?」


 千鶴の言葉にあかりはこれまでの陽太と静夜の情報を思い出していた。


「確か東陽太って実は双子だって聞いた事あるし静夜くんとやらも苗字が東だった……って、そんなもん言われなきゃ繋がらないよ!! ただ偶然苗字が被ったとしか思わないよ!!」


 あかりの正論に千鶴は言い訳する様に話す。


「ごめんねあかりちゃん、先に話しておけば良かったね」

「そうだよぉ! もし東陽太に会うなんて分かってたらもっと気合い入れて来たっ……て言っても目的はそこじゃないもんね、あくまで静夜くんに果たして彼女が居るのかどうかの確認だったもんね」


 段々冷静になって来たあかりはふむふむと状況を把握した。


「つまり静夜くんの兄である東陽太に聞けば事の真相は分かる……それに、静夜くんの連絡先までゲット出来る可能性もあるって事! やったねちーちゃん、大収穫じゃん!」


 喜ぶあかりに対して千鶴も嬉しそうに微笑んだ。


「うん、ありがとうあかりちゃん、私の事連れて来てくれて」

「いいのいいの! 私も生の東陽太に会えて感激だし!」


 それから千鶴とあかりは仲良く早乙女高校へと帰って行った。




 一方、陽太はというと。


(何で小野さん学校の前に居たんだろう? ま、まさか俺に会いに来た……とかじゃないよな? というか本当は静夜との告白の件だとか色々聞きたかったのに……いやでも連絡先聞けたしいつでも聞こうと思えば聞けるのか……)


 陽太がスタジオの楽屋で出番を待ちながら携帯を眺めていると、そこに蓮がやって来た。


「あれ? 陽太何携帯見てニヤついてんだよ? まさかエロ動画でも見てたんかー?」


 からかう様に蓮が訊ねると、陽太は呆れながら答えた。


「これから出番だってのにそんな訳ねーだろ」

「なーんだ、違うのか」

「逆に合ってたらやべー奴じゃん俺」

「ははっ! 確かに~」


「東陽太くん、そろそろ出番でーす」

「あ、分かりました! じゃあな蓮」

「おー、また後で」


 スタッフに呼ばれた陽太は携帯を鞄にしまい、蓮に軽く挨拶した後楽屋から出て会場に向かった。


(今浮かれてる場合じゃない。仕事に集中しなきゃな……)


 それから先程とは打って変わって真面目な顔つきで陽太は仕事へ向かって行った。

投稿がまた空いてしまってごめんなさい……夏休みは期間限定イベント多すぎるよ……

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