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第70話 君と進路 後編

「山本くん、進路決まってる?」

「俺はまあゲーム好きだから、ゲーム関係の仕事に就けたらなって思ってるよ」


「隅田さん、進路決まってる?」

「え? 進路? 私は図書館司書になりたいから、その資格が取れる大学へ行く予定だよ」


「静夜くん! 静夜くんは進路決まってる? 将来の夢は何? あ! 勿論なくても私が養っていくだけ稼ぐけど!!」


 明宏や真央に質問した時とは全く違うテンションで遥は静夜に笑顔で質問した。


「いや、葵さんに養われたくはないんだけど」

「勿論ただのジョークだよジョーク!」


 そう言い切る遥の目には火が灯っている。


(目が本気なんだよなぁ……)


 静夜が呆れていると、遥は急かす様に質問を続けた。


「ねえねえ静夜くんの進路教えてよー。何になりたいの? それともまだ未定? あ、それとも周りに言いたくない感じ?」


「一応、親からは芸能界で働いて欲しいって言われてる」

「ええ!? 静夜くん俳優さんになるの!?」


 遥は驚きつつも俳優の静夜の姿を妄想した。


「そんな……静夜くんが俳優さんとして売れて欲しい気持ちと、静夜くんが人気になりすぎて他の女がしゃしゃり出てくるんじゃないか? って不安な気持ちがそれぞれある……あ! いっそ私も女優になれば!」

「いや、芸能界って言っても裏方の方だから」


 妄想を広げまくる遥に静夜が忠告すると、遥は次に芸能界の裏方になった静夜を妄想した。


「芸能界の裏方……カメラマンは重たいカメラ持って駆けずり回る重労働だって聞くし、アシスタントとか演出家とか監督とかも時間関係なく働かされて大変そうなイメージしかないんだけど? そんな明らかにブラックそうなところに静夜くんを放り込むなんてそんなの私出来ないよ!」


 熱弁する遥に静夜は冷静に答える。


「いや、出来ないと言われても……まあ親的には芸能界で陽太だけでやっていけるのか心配だから、俺が陽太のマネージャーになってくれたら安心だって事らしい……俺としても他にやりたい事ないしどうしようか迷ってはいるけど」


 静夜からの回答に、遥はやや不満気だった。


「うーん、静夜くんのやりたい事なら固唾を飲んで応援するけど、別にやりたい事じゃないなら無理してまで大変そうな職業に就かなくてもいいんじゃないの?」

「だから迷い中なんだって」

「そっか……まあ、私達が働く頃には働き方改革が成功して働きやすくなってると良いけどね」


 遥の言葉に静夜も同意する。


「それはどの職場でも大なり小なり言える事だな」

「そうだね。とは言え芸能界の裏方か……多少力仕事とかありそうだし私に出来るかな……」


 そう呟く遥に静夜は呆れながら訊ねる。


「力仕事だけではないだろうけど……葵さん、まさか俺の働く場所に一緒に就職しようとか考えてるの?」

「え!? 一緒に働いちゃ駄目?」


 遥からの質問に静夜はキッパリと答えた。


「それは嫌だ」

「ええ!? 何で!?」

「働いてる時って仕事に集中したいだろうし、知ってる人と一緒には働きたくはないな。注意とかされたらお互い気まずいだろうし」

「そ、そうかぁ……(あわよくば静夜くんの進路希望と同じにしようと思ってたけど、駄目かぁ)」


 静夜に拒否されがっかりした遥は、他に進路希望の参考に出来る人は居ないかと教室を見渡した。


 すると、みんなと離れてる席に座っている太一を発見してそちらに駆け寄った。


「渡辺くん、進路決まってる?」


 遥は明宏や真央に聞いた時と同じトーンで質問したが、太一は普段声をかけられた事のない遥にドキッとしていた。


(葵さんから俺に質問なんてどうしたんだ……?)


「あ、突然で驚かせたならごめんね、今みんなに聞いて回ってるんだ」


「あ、そうなんだ……。俺の進路は別に普通に大学行って、無難に公務員って感じだけど」


 太一の言葉に遥はポンと手を叩く。


「公務員か~、いいね、それ! 私もそれにしよーっと!」


 あまりにも軽く自分の進路を真似しようとする遥に太一は驚き問いかけた。


「ええ!? あ、葵さん俺と同じ進路にすんの!? もうちょっと考えた方が良いんじゃない!?」

「でも提出まで残り時間も少ないし、公務員なら私でもなれそうだし! 進路聞かせてくれてありがとね! お陰で参考になったよ!」


「え、えぇ……」


 るんるんと機嫌良く去っていく遥の様子に太一は呆気に取られていた。


「さーて進路も決まった事だし、さっさと書いて提出してこよーっと!」


 遥は希望欄に「大学進学」、将来の夢の欄に「公務員」と書き先生へと提出したのだった。

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