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第69話 君と進路 前編

「うふっうふふっ♡ぐへへ♡」


 月曜日の朝の登校時間、遥の顔は終始ニヤけっぱなしだった。


「遥、せめてもうちょっとまともな顔しててくれないか? 一緒に登校したくなくなるから」

「いやいやユウちゃん! 静夜くんとドキドキ♡2人きりデートがあった後ですぞ!! これがニヤけずにいられますかな!?」


 変なオタク口調で話す遥に、ハルは不思議そうに突っ込む。


「デートがあったの土曜日でしょ? まさか一昨日からずっとその表情なの?」

「だってページ的には1ページしか経ってないから……なんてメタ話は置いといて」

「?」


 遥のメタ発言にハルは頭にクエスチョンマークを浮かべ、ユウは毎度の事ながらスルーした。


「静夜くんとケーキを食べてお互いゲームセンターで楽しんだ……これはもう乙女ゲームなら好感度ゲージMAX間違いなし!」


「私の見立てだと、東はおそらく全キャラ攻略した後に追加される隠しキャラで攻略難易度が1番高そうな奴っぽいだけどな」


 ユウの分析に先程までニヤけていた遥は途端に不安になる。


「た、確かに……!? でもそうなると恋愛初心者の私には打つ手なし!?」


「ま、そんなこんなでお前と東の乙女ゲームでのゲージはまだ30%くらいってとこだろ」

「あれだけ色々とあって30%は低くない!?」


 驚いている遥に横からハルが口を挟んだ。


「でもルカちゃんマイナスも多いし妥当じゃない?」

「そんな……!? 確かにちょっとの失態や失言はあったしトラブルなんかもあったけど!」

「ところで遥、お前ちゃんと書いてきたか?」


 遥の言葉を遮りユウは話題を切り替えた。


「え? 書いてきたって何を?」

「何って、進路調査票だよ」


 ユウの言葉に遥はハッと目を見開く。


「……忘れてた」

「提出期間今日の放課後までだぞ」


 ユウの言葉に遥は慌てて2人に問いかける。


「ふ、2人はもう書いてきたの?」

「私は配られた初日にさっさと出したぞ」

「私ももう提出したな~」


 2人の返答に遥は更に慌てふためいた。


「え!? もう2人とも出したの!?」

「まあ、将来の事は考えてあるしな」

「そう言えば、ユウちゃんは将来安定だもんね……」


 遥とユウのやり取りを見ていたハルは不思議そうにユウへと訊ねる。


「安定? ユウちゃんの将来の夢はもう決まってるの?」

「まあ、夢というか、家の会社手伝う感じだな」

「家の会社って……?」


 ハルの質問に、遥が横から何故か得意気に答えた。


「ユウちゃんのお父さん、社長さんなんだよ」

「ええ!? 社長さん!? 初耳なんだけど!?」


 ハルの驚きにユウはやれやれと呆れた様に返事をする。


「はぁ……社長っつっても、小さい家族ぐるみの会社だからそんな立派なもんじゃないぞ」

「それでも凄いよ! じゃあユウちゃんは次期社長って事!?」


 ハルの問いにユウは首を横に振った。


「いや、流石に社長になる気はないよ。親も私より兄貴か弟に継がせたいみたいだけど……兄貴は音楽で食ってくとか言って大学でバンド組んでるし、弟はサッカーに夢中だから最悪私とも考えてるっぽいけど」


「へぇ、そうなんだ。家を継ぐとかって問題は大変そうだけど、就活しなくても良いのは羨ましいかも~」

「まあ、就活しなくて良いのは確かに利点だろうな」


 ハルとユウが話しているのを横目で眺めつつ、遥はユウをジッと見た。


(でもユウちゃんの第一希望は漫画家なんだろうなぁ)


 ユウの漫画(BL)を描いてる姿を思い浮かべた遥は納得した様にうんうんと頷く。


 それから遥はハルへと質問した。


「ところでハルは何か将来の夢あるの?」

「私の夢はメイクアップアーティストだよ! プロのメイクアップアーティストになって、零様専属になるんだ♡」

「でも零様って男じゃん」


 遥の言葉にハルは呆れた様に話し出す。


「ルカちゃんテレビとか見ないの? 今時テレビに出てる男性の俳優さんやアーティストさんはメイクしてるの割と普通だよ?」

「え? そうなの?」

「因みにルカちゃんの大好きな東君のお兄さんの東陽太だってメイクしてるよ! まあ勿論女の人みたいなガッツリメイクじゃなくて、テレビ映えする為のメイクだけどね」

「はえー、そうなんだ。全然知らなかったや」


 そんな話をしてるうちに3人は学校の教室までやって来ていた。


「ところでルカちゃんの夢は?」


 ハルに訪ねられ遥は満面の笑みで答える。


「そりゃあ勿論静夜くんのお嫁さん♡」

「まあ、だと思った」


 呆れるハルを気にせず遥は更に冷静に言葉を続ける。


「……なのは大前提として、今のご時世専業主婦だなんて言ってられないし、静夜くん1人に仕事の負担を任せるなんて恐れ多いから働こうとは考えてるんだけど」

「既に前提込みでの話だったのか」

「でも肝心のなりたい職がまっっっったく思いつかない!」


 遥の嘆きにハルとユウはお互いに目を合わせた後、揃って思っている事を口にした。


「ルカちゃん」

「遥」


「「そもそも社会生活出来るの?」」


「え? 私の問題ってそんなに根深い?」


 戸惑う遥に2人は口々に言葉を重ねる。


「根深いっていうか、何というか……」

「頭の良さと社会性は比例しないってつくづく思うよ」

「後人間性も無いよね~」


「ちょっとぉっ!? 2人とも言い過ぎじゃない!?」


 それから分析を終えた2人は遥の肩を叩いた。


「まあ、頭は良いんだからその変人っぷりさえ治せば割と何にでもなれるんじゃねーの?」

「いっそその変人っぷりを活かしてユーチューバーなんかも案外アリかもね」


 ハルの意見に遥は難色を示す。


「うーん、ユーチューバーは当たれば稼げそうだけど、安定しなさそうだしなぁ」


 3人で話している所に、遥の隣の席である徹人が声をかけた。


「おはよー! 3人で何話してんの?」

「あ! てっちゃんさん! てっちゃんさんはもう進路調査票出した!?」


 遥の質問に徹人はあっけらかんと答える。


「あ! 出すの忘れてた!」

「仲間だー! 進路って決めるの難しいよね!」

「あ、でも俺もう進路は決めてんだ。体育大学行く予定!」

「え? そうなの?」


 徹人の進路を聞いてハルが不思議そうに声をかけた。


「まあな! 体動かすの好きだから、何か体使う職業が良いからさ!」

「なるほど~得意な事を伸ばすタイプか~」

「でも、高校は体育科にしなかったんだな?」


 ユウの質問に徹人は笑って答えた。


「まあ、高校入試の時は何となく東京の高校へ行ってみたいって興味で寮のある高校受験したからな! 先生からは偏差値的に諦めろって言われてたけど何とか受かって良かったぜ」

「本当よく受かったよね……ハルもだけど」


 遥の苦笑混じりの言葉にハルは拗ねる様に反論する。


「私だって零様と同じ高校入りたいって頑張ったんだから!」

「はいはい。それより他の人の進路も参考に聞いてみよっかな」


 それから遥は他の面々にも質問していった。

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