第67話 君とデート4
シューティングゲームでは。
「ええ!? 何でこれで弾当たってるの!? 避けたのに!?」
静夜の勝ち。
エアホッケーでは。
「あれ? 間違って自分のとこ入っちゃった!?」
静夜の勝ち。
太鼓のゲームでは。
「え待って、このバチ重くない? もうバテてきたんだけど……」
静夜の勝ち。
他のゲームでもことごとく静夜の連勝であった。
「葵さん、本当にゲーム苦手なんだね」
「ち、違うもん! 静夜くんが強すぎるだけで!」
「俺平均くらいだと思うけど。つーか葵さんがほぼ1人で自爆してばっかだったし」
「うぐ! た、確かに!」
正論を言われた遥は照れながらも小さく反論する。
「だ、だって静夜くんと並んでゲームしてると思うと、意識しすぎて緊張しちゃって……」
「ゲームでそんな緊張する事ある?」
「あ、あるよ! だって2人で同じ事してるんだよ!? そんなんもう共同作業じゃんっ!」
「共同作業はお互い戦わないと思う」
遥の相変わらずな発言に静夜は的確に突っ込みを入れた。
「そうだけど~! ……あ! ねえねえ静夜くん! あれ!」
遥は話している最中にとあるUFOキャッチャーを見つけて指を差した。
静夜は何事かとそちらを見る。
至ってシンプルなUFOキャッチャーの中に、いかにも中高生のカップル向けなペアのキーホルダーの景品があった。
キーホルダーは猫、うさぎ、熊と3種類ある。
「静夜くん、猫とうさぎと熊ならどれが良い?」
「どれが良いって、まさかこれ取る気なの?」
「もっちろん!」
笑顔で宣言する遥に静夜は嫌な予感しかしなかった。
「やめときなよ、全額溶けるって」
「大丈夫だよ! こう言うのは確率機って言って、何十回もやればゲットしやすくなるらしいから! いけるいける!」
静夜が止めるも遥は聞く耳持たずにUFOキャッチャーをやり始めた。
そしてあっという間に5000円がなくなった。
「やめとけば良いのに……」
「ま、まだまだこちとらお金はあるし!」
必死にUFOキャッチャーをする遥に、静夜は首を傾げる。
「お金あるならわざわざゲーセンじゃなくて、普通に雑貨屋とか行けば似た様なの売ってると思うけど」
「そうだけど! でも折角静夜くんと初めてゲーセンで遊んだのに手ぶらで帰るのは嫌というか、形に残る思い出が欲しいというか!」
しかし遥の思いとは裏腹に景品は中々引っかからない。
「うぅ~もう確率が上がっても良いと思うんだけどな……」
「キリの良いとこで諦めなよ葵さん」
「ま、まだまだぁ……!」
静夜は駄目そうだなと時々遥を止めつつも静観し、遥は必死にUFOキャッチャーにくらいついている中、1人の小さなおばあちゃんが2人へ声をかけた。
「もし、そこの可愛いアベックさん」
「「!?」」
突然話しかけられて2人が驚いていると、おばあちゃんは笑いながら話を続けた。
「あ、今はかっぷるって言うんじゃったか? まあいい、お嬢さん、その景品が欲しいのかい?」
「え? ええ、まあ」
「なら私に1度だけやらせてくれないかい? もし取れなかったら100円は弁償するよ」
「え? でも……」
遥が答えに迷っていると、おばあちゃんはきっぱりと遥に告げる。
「お嬢さん、今のやり方ではいつまでも景品は取れないぞ」
「え? な、何で!?」
「まあまあ、一度私を信じてみなさい。手本を見せてやろう」
そう言っておばあちゃんはキーホルダーの隣にあったお菓子のUFOキャッチャーを始めた。
すると、見事に一発で景品をゲットした。
「凄……」
「おばあちゃん凄ーい!」
2人が感心している中、おばあちゃんはゲットしたお菓子を遥に見せた。
「どうじゃ? 私に任せてみるか?」
「……おばあちゃん、その、お言葉は嬉しいんですが……私、どうしても自分の手でこのキーホルダーをゲットしたいんです」
遥の言葉におばあちゃんは小さく下を向く。
「……そうか」
「なのでおばあちゃん! どうか! ボタンを押すタイミングだけでも教えて下さい!」
遥の言葉に静夜は動揺する。
「それって、自分で取ったうちに入るの……?」
「自分で操作してるから、入る!」
遥の静夜への返事におばあちゃんは大きく笑った。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ! こりゃあ面白いかっぷるさんだ。良いよ。タイミングを教えてあげるから、その通り操作してごらん」
それから遥はおばあちゃんの誘導通りにボタンを押していく。
すると、一発で景品が引っかかり、見事猫のペアキーホルダーをゲットした。
「凄い! 本当に取れちゃった!」
「ふぉっ、ふぉっ、良かったのう。これは選別じゃ、私は食べられないから2人で仲良くお食べ」
おばあちゃんは遥に先ほど取れたお菓子を手渡した。
遥はそれを受け取りおばあちゃんに深くお辞儀をする。
「あ、ありがとうございます! 通りすがりのおばあちゃん!」
「なぁに、良いって事よ。それじゃあの」
そう言っておばあちゃんはふぉっ、ふぉっと笑いながら人混みに消えてしまった。
「何だったんだ、あのおばあちゃん……」
静夜が見ず知らずのおばあちゃんの事に気を取られていると、横から遥が嬉しそうにお菓子とキーホルダーを静夜に見せてきた。
「やったよ静夜くん! キーホルダー取れたよ! ついでにお菓子貰えたよ!」
「まあ、ほぼおばあちゃんのおかげだったけど」
「そ、そうだけど! 私も頑張ったんだよ! だから、はい!」
それから遥は黒い猫のキーホルダーを静夜に渡そうと手を伸ばした。
「プレゼント! ねえねえ、お互い鞄につけようよ! あ、静夜くん白猫が良かったら交換するけどどっちが良い?」
静夜は遥から黒猫のキーホルダーを受け取り返事をする。
「別に俺はどっちでも良いよ。……キーホルダー、ありがとな」
お礼を言う静夜に、遥はニヤニヤと笑う。
「えへへ~静夜くんとお揃いのキーホルダー♡」
浮かれている遥の様子を見て静夜はふと考える。
(本当に嬉しそうだな、葵さん)
それから黒猫のキーホルダーに目を移し再び考えた。
(……俺も同じくらい喜んであげられたら良いんだろうけどな)
「早速鞄にー……あ、この形状じゃ鞄に直接つけられないか。百均でチェーンみたいなの買うしか無いかな」
遥がキーホルダーをそのまま鞄の紐の部分に付けようとしたが、紐の部分が太くてそのままではつけられ無さそうだった。
「……キーホルダーなんだし鍵に着けたら?」
「んー折角なら見える所につけたかったけど……あ! でも鍵の方がアクシデントで落っこちる心配もないし、周りに気付かれにくいけど実はペアってエモい展開もあり……? うん、ありだな」
「……?」
遥がぶつぶつと呟いていたが、ゲームセンター内が騒がしいせいか遥の言葉は静夜には聞き取れなかった。
「ねえねえ静夜くん! 静夜くんも一緒に鍵につけない?」
「まあ、別に良いけど」
「やったー!」
手放しでバンザイのポーズをした後、遥は更に静夜にもう1つお願いしたい事を話す。
「それとそれと~、折角のゲーセンなので2人でプリクラ撮りたいな~♡」
「それは却下」
しかし遥の願いは即座に断られた。
「えぇ!? 何でそんな瞬殺!?」
「何かプリクラは付き合ってるっぽいというか……男女の友達で2人きりでは普通撮らないだろ」
「そんな!? ペアのキーホルダーは良いのに!?」
「まあこのキーホルダーは(半分以上おばあちゃんのおかげとは言え)葵さんが取った物だし友達からの貰い物なら大事にするけどさ、そこは違うというか」
静夜の友達か付き合ってるかのライン引きに遥は首をひねる。
「う~ん……カレカノっぽいと言えばそうかもだけど、ただ写真撮って落書きするだけだよ?」
「いや、普通の写真より距離感近いじゃん」
「そうかもだけど! 落書きが出来るし加工も出来るよ!」
「スマホでも似た機能あるじゃん」
「た、確かに……!」
静夜の正論に遥は言い返せなくなった。
「まあ、静夜くんが嫌だと言うなら無理強いするのも良くないしね。一旦諦めるよ」
「……一旦?」
諦めてくれてホッとした静夜だが、遥の発言に違和感を覚える。
「男女2人きりが嫌という事は、他に人が居たら男女でもOKって事でしょ?」
「まあ、それなら別に良いけど」
「じゃあ今度はみんなで遊びに来れたら、その時プリクラ撮ろ!」
笑顔で宣言する遥に、静夜は呆れる様に答える。
「分かったよ」
「絶対約束ね! ね!」
「はいはい」
ゲーセンを楽しんだ2人は休憩がてらゲーセンの横にあったベンチに座っておばあちゃんから貰ったお菓子を食べ始めた。
「あ、そう言えば知らない人からお菓子貰ったけど良かったのかな?」
「……まあ、元はゲーセンの商品だし大丈夫なんじゃない?」
「まあ、そっか」
(葵さんって変な所真面目なんだな)
お菓子を食べてる遥を見て静夜は感心していた。
(……葵さんって確かに変わってるけど、何してても楽しそうだよな。どのゲームでも負けても最後は必ず「楽しかったー!」って言ってたし。葵さんに負の感情とかってないのかな……)
静夜が考え事をしながら無意識に遥を見つめていると、遥はその視線に気付いて顔を赤らめる。
「あ、あの~静夜くん、そんなに熱い視線を送られるとて、照れちゃうというか……」
「あ」
遥にそう言われて静夜はパッと視線を逸らして咄嗟に言い訳した。
「えっと、今のは電車で見つめられた仕返し」
「そんな……! そんな仕返しならもっとやってくれても良いんだよ!? さあさあ!! 隅々まで見て良いよ!! 是非とも見つめてくだされよ!!」
「あ、いや、そこまでは……」
(やっべ、何か葵さんの変なスイッチ押してしまった)
静夜は困惑しながら自分の失言を反省した。
誰なんだあのおばあちゃん




