第66話 君とデート3
遥が食べ終わり2人は会計を済ませて外に出ると、時刻はまだ午前11時過ぎだった。
「せ、静夜くん、まだ時間大丈夫? 出来たらもう少し遊びたいかなーなんて……」
照れながらまだ遊び足りないと伝える遥に静夜は冷静に口を開く。
「葵さんってたまに女子らしい事言うよね……」
「えぇ!? 今までも女子らしかったでしょっ!?」
静夜の発言に意を唱える遥に対して静夜は淡々と話した。
「いや、前はもっと強引に誘ってきたから」
「ま、前はその! 静夜くんに悪かったという気持ちで静夜くんの用事に付き合うって言っただけで! 下心とかなく純粋な気持ちで!」
「今は下心あるみたいな言い方だけど」
「ないですっ! 断っじてっ! ないですっ!!」
遥の必死な返事に静夜は声を出して笑った。
「ははっ! 必死すぎでしょ葵さん。まあ流石に冗談だからさ」
「(あああぁぁ~! 静夜くんの笑った顔堪らん~!)
じゃ、じゃあ、まだ今日は遊べるんだね? ね?」
遥の問いに静夜は悟った様に答える。
「まあ、何かあったらすぐ警察に駆け込むけど」
「あれ? 冗談だと思われてなくない?」
遥の発言をスルーして静夜はスマホでマップを出した。
「この周辺で遊ぶなら……」
「あれ? スルーされてる?」
「本屋もあるしカラオケもあるしゲーセンもあるな。葵さんどっか行きたいとこある?」
静夜にそう訊ねられ遥は迷いながらも話し出した。
「うーん、私は別に静夜くんとなら何処でも良いけど……本屋はどうかな?」
「それって俺が本好きだから?」
「それもあるけど、私も本好きだしね!」
遥は静夜の問いにあっけらかんと答える。
「そっか、じゃあすぐ近くの本屋に行くか……」
それから2人は本屋に向かい歩いて行くと、割とすぐ近くに目的地の本屋があり入店した……のだが。
2人は店に入った瞬間明らかに普通の本屋ではない雰囲気に一瞬固まってしまった。
((あ、このお店……本屋を名乗ってるアダルトショップだー!!))
状況を理解した2人は揃って無言で店から逃げる様に去っていった。
そして再び大通りに戻ると遥が気まずさからすぐに口を開いた。
「け、健全な所に遊びに行こうか!」
「そ、そうだね、てか、俺店の名前しか見てなくて、その、ごめん」
静夜が慌てながらも気まずそうに謝ると、遥はいやいやと首を横に振る。
「あんな名前でお店の見た目も普通だったら間違えるよあんなの! 街中のトラップみたいなもんじゃん! あれは仕方ないよ本当! そ、それより気を取り直して何処行こうか?」
遥が話題を変えると静夜は携帯のマップを見ながら再び遊べそうな場所を探し始めた。
「そうだな……ゲーセンとカラオケ、どっちがより健全な場所と言えば……」
静夜の言葉に遥はゲーセンとカラオケのどちらが健全か考えた。
(まあ普通に考えればカラオケのが健全……いや待って……?)
(私こんな脳内ピンクの状態で静夜くんと密室で2人きりなんて耐えられる!? 普通に考えて無理じゃない!? 意識しない様にしても絶対途中で静夜くんの事襲ってしまう恐れがある!!)
「ゲーセンにしよう! ゲーセン!」
遥の勢いの良い返事に静夜はびっくりする。
「え? カラオケの方が健全じゃないの?」
「い、今はゲーセンの刺激が欲しいの! 色々と雑念を払いたくて!」
「ま、まあそれならゲーセンで良いけど……」
「ありがとう静夜くん!」
遥の意見に静夜も納得し、2人はゲームセンターへと向かった。
「わぁ~クレーンゲームにUFOキャッチャーにメダルゲーム……普通のゲーセンだ~!」
普通のゲームセンターである事に遥は感動した。
「まあゲーセンは流石に普通だよな、うん」
静夜も内心普通のゲームセンターである事に安堵する。
「ねえねえ、静夜くんって何か得意なのある?」
「えー、これと言って得意なのないけど……」
「私も別に得意なのないんだよねー」
そう言いながらも2人はゲームのディスプレイに入っているぬいぐるみやフィギュア、お菓子類などを物色して回った。
「静夜くん好きなアニメや漫画のキャラとかいる?」
「漫画は話題になってるのは読むけど、別に好きなキャラとかないなー」
「そっかー、残念だなぁ。静夜くんの好きなキャラ取ってあげれたらプレゼント出来たのに~」
「葵さん得意じゃないって言ってなかった?」
静夜の疑問に遥は財布を開き1万円札を3枚取り出した。
「軍資金ならこれだけあるからいけるいける」
「お金の暴力じゃんそれ。絶対普通に買った方が良いよ」
「ええー、自分の手で掴むからこそロマンがあるんだよー。それに、今直接手渡ししたいじゃん」
「ふーん、そんなもんかな……」
遥の言葉はあまり静夜には響いていない様だった。
「ところでさ、折角来たんだし、何かゲームで対戦でもする?」
静夜の言葉に遥は意気揚々と答える。
「うん! しよしよ! あ、あのレースゲームとかどうかな?」
土曜日の昼下がりなのでどのゲームも混んでいたが、遥の指差したレースゲームの方はちょうど2人分空きがあった。
「おう、やろっか」
「あ、どうせなら負けた人が勝った人の言う事1個聞くってのはどう?」
「それは凄く怖いんだが」
レースゲームのシートに座ると、横から嫌な提案をしてくる遥に静夜は苦言を呈す。
「大丈夫大丈夫! 勝てば良いんだし! 私だって流石にやばいお願いはしないからさ~♡」
「いや、それでも怖いって」
しかし静夜が反対意見を述べてるうちにレース開始の時間になった。
「絶対勝つぞー!」
「マジか……」
(まあ負けてもそもそもOKしてないって言えばどうにかなるか……?)
静夜がそんな事考えていると、勢い良くスタートダッシュを決めた遥はカーブで思いっきり脱線した。
「あれ! な、何でそっち行っちゃうの! ハンドル切ってるのに!?」
(あ、普通に勝てそう)
横で勝手に事故ってパニクっている遥を見て静夜は安全運転を心がけて運転した。
結果は、お察しの通り静夜の勝ちだった。
「負けた~! 悔しいー!」
「次待ってる人いるからとりあえずどこうか」
悔しがる遥に静夜は冷静に声をかけて2人はレースゲームから離れる。
「うぅ……負けちゃった……仕方ない、静夜くん! 何か私にお願いしたい事ある? 何でもするよ! 文字通り何でも♡」
何故か負けたのに嬉しそうにお願い事を催促してくる遥に引きつつ静夜は少し考えて答えた。
「そうだな……じゃあ次からこういう「賭けはしない」で」
「ええ!? それが静夜くんの願いなの!? 私を好きに扱えるのに!?」
驚きつつも残念がる遥に静夜はため息をこぼす。
「はぁ……なんかこれ勝っても負けても葵さんが得してる感じしかしないんだけど?」
「え!? そ、そんな事……ない、とは言い切れない、かも、だけど……」
「だからこういうの無しで純粋に楽しもうって事。友達とただ遊んでるだけで変な緊張感持ちたくないし」
静夜の正論に遥はシュンと小さくなった。
「そっか、ごめんね……私としては楽しみのスパイスになるかなって思ったけど、静夜くんとしては楽しくなかったよね、ごめん……」
素直に謝る遥に静夜は自分が言い過ぎたかと少し不安になる。
「あー、葵さんなりに盛り上げてくれようとしてたのは分かったから。だからそんなに謝らなくて良いし、それよりさ、他のゲームでもしに行かね? 折角来たのにレースゲームだけってのもアレだし」
気を遣って静夜が話題を変えると、遥はぷるぷると震えながら口を開いた。
「静夜くん……何でそんなに優しいの!? こんな卑しい私にまで気を遣ってくれて! そういうところ本当好き! あ! これは告白じゃなくてね! そういう部分が良いというだけで!」
いつもの調子で弁明を繰り返す遥に静夜はクスリと笑う。
「はいはい分かった分かった。とりあえず他のゲームしに行こうぜ」
「あ、うん!」
それから2人は色々なゲームをしに歩き回った。
高校の頃本屋の見た目をしたアダルトショップに間違って入った事あります。あれはトラップなので皆さんちゃんと一度調べてから行く様にしましょう。




