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第64話 君とデート1

 待ち合わせ時間3分前の午前8時57分のとある駅前にて。


「お、お待たせ~!」


 何とか待ち合わせ時間ギリギリに間に合った遥は若干息を切らしつつ先に来て待っていた静夜へと声をかけた。


 声をかけられた静夜は触っていた携帯をしまいやや息切れしている遥へ声をかける。


「葵さん、なんか息切れしてない? 大丈夫?」

「大丈夫大丈夫! ところで待ち合わせ時間間に合ってるよね!?」

「まあ、間に合ってるよ」


 静夜から返事を聞いた遥は申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんね、なんか毎回ギリギリになっちゃって……」

「間に合ってるんだからそんな謝らなくても」


 静夜が言い終わる前に遥が食い気味に言葉を重ねる。


「いいや! せめて5分前行動は守らなきゃなのに!」

「それよりさっさと電車乗った方が良くない?」


 いつまでも謝り続けそうな雰囲気の遥を察して静夜はそう提案した。


「あ! それもそうだね!」


 こうして2人は目的地行きの電車へと乗り込み、空いてる席へと並んで座った。


「もっと混んでるかと思ったけどそこまででもないんだな」


 電車内には人は確かに乗っているが他にもぽつぽつとまだらに空いてる席を見て静夜は思った事をそのまま呟く。


「昼間なら大分混むけど、この時間ならまだ土曜日でも空いてるよ。平日のラッシュは地獄だけどね」


 遥の言葉に感心しつつ、静夜は何の気なしに遥へ質問した。


「へぇ、やっぱ詳しいんだな。葵さんってずっと東京なんだっけ?」

「うん! 生まれも育ちもずっと東京だよ! 静夜くんは中学までずっと岐阜なの?」

「まあそうだけど、夏休みとか長期休暇は神奈川の叔母さんの所行ってたりしたな。陽太の撮影の為に」

「そうなんだ! じゃあ結構関東にも来てたんだね!」

「まあ……」


 それから遥は横に座っている静夜をじーっと見つめていた。


「……あの、何でずっと見てくるの?」


 たまらず静夜が声をかけると、遥は顔を赤らめながら答える。


「ご、ごめん! 今日の静夜くんの格好も素敵だなーって思って、これはしっかり目に焼きつけなければ! と思って、つい……」


 ストレートに褒める遥に静夜は若干照れつつ答える。


「あー、普段俺パーカーとかスニーカーとかラフなのしか持ってないから、今日は陽太から借りたんだよ。と言うか勝手にセットアップされた」

「確かにこれまでの静夜くんの私服ってパーカー多かったもんね!

 でも今日のジャケットにズボンも似合ってるよ!」

「それはどうも……あの」


 静夜が遥のワンピースも褒めた方が良いだろうかと口を開くと、それに気付かず遥は被せて話し出した。


「ところで私、いつもと違う気がしない?」

「え?」


 唐突な遥の質問に静夜は戸惑いの声をあげる。


 一方遥は、化粧を褒めてもらえるか内心ドキドキしていた。


「えっと……ワンピース可愛いね……?」


 とりあえず静夜が服を褒めると、可愛いと言われた遥はガッツポーズをした。


「よっしゃぁ! 可愛いって言われたっ!」

「喜び方が全然可愛くない」


 静夜が突っ込むと遥は恥ずかしそうに拳を引っ込める。


「い、今のは無しで! あ、もうすぐ降りる駅だね!」

「そうだね」


 遥は話題を逸らす様に立ち上がり、そそくさとドアの方へと向かった。

 そんな遥を静夜も追いかけ、2人はドアが開くと同時に目的の駅へと降りた。


「確か駅から徒歩3分らしいから、もうすぐで着くと思うけど……」


 遥と静夜が駅から外へ出ると、左向かいのホテルの看板を静夜が指差した。


「あの建物じゃない?」

「あ、本当だ! じゃあ行こう! 静夜くん!」


 無事にホテルを見つけた遥は上機嫌に歩き始めた。


「あの女の子可愛いー、後ろの子彼氏かな?」

「えー? あのくらい可愛い子ならもっとイケメンと付き合いそうだけどな」


(付き合ってねーし、俺が釣り合ってないのは1番良く知ってるっつーの)


 途中で周りの人の声が聞こえて静夜は嫌な気分になった。


 しかし遥は相変わらず周りを気にする事なくホテルへと入って行く。


「あの! 私達スイーツビュッフェに来たんですけど!」


 遥は意気揚々とチケットを係の人に見せると、2人は店員に案内され席に着いた。


「さーて! 早速取りに行こ!」


 颯爽と立ち上がる遥に静夜は静かに声をかける。


「先取りに行って良いよ。荷物見てるから」

「あ、そっか……じゃあお言葉に甘えて先に取ってくるね! 早目に戻るから!」


 そう言い残し遥は足早にスイーツを取りに行った。


 その後ろ姿を静夜は眺めながら周りを見渡すと、土曜日の為か家族連れが多い事に気付きとある疑問を抱いた。


「お待たせー」


 遥が皿いっぱいにスイーツを乗せて戻ってくると、静夜は遥に質問した。


「葵さん、ここってもしかして前みたいにカップル限定ではない?」

「? うん、たまたまお母さんからペアチケット貰えたから静夜くんを誘ったんだけど?」

「あ、そうなんだ……」


 静夜の質問に最初不思議そうに答えた遥は静夜の気まずそうな様子を見て察した。


「あ、もしかして静夜くん、今回もカップル限定だと思って私がまた困ってると思って来てくれた?」

「まあ……前回がそうだったからてっきり今回もそういうものなのかと……」


 静夜がそう正直に答えると、遥は恐る恐る静夜へと質問する。


「あのぉ~、それじゃあもしかしてカップル限定でなかったら静夜くん来てくれなかった……?」


 遥の問いに静夜はどう答えようか迷いつつ口を開く。


「あ~、どうだろ……。でもなんやかんや行くとは思う」

「なんやかんやとは?」


 更に遥に問われて静夜はやや顔を赤らめて困りながらも答えた。


「いや、今まで女子から2人で遊ぼうとか誘われた事なんてなかったし、まあでも葵さんの事別に嫌いな訳じゃないから断る理由も無いと言えば無いし」


 答えつつ静夜は先程周りの人の言葉を思い出し遥に質問を返した。


「と言うかさ、何で葵さん、俺の事が好きなの?」


「えぇっ!?」


 いきなり静夜からのストレートな問いに遥は驚きのあまり声が裏返った。

 それからたどたどしくも静夜の問いに答え始める。


「そ、それは~何と言うか……その、前にも2人でスイーツ食べに行った時に……」

「うん」


 遥の言葉に静夜は相槌しながら耳を傾ける。


「その時、静夜くんの笑った顔が可愛くて……」

「か、可愛い?」


 可愛いと言われ戸惑う静夜を無視して遥は話を続けた。


「そこからどんどん静夜くんを意識する様になっちゃって、静夜くん優しいし、呆れてる顔も怒ってる顔も素敵だし、読書家だし、それなのに友達多いし声も良いしふわふわそうな髪撫でたいし八重歯エロいし身長気にしてるとこ可愛いしそれからそれから」


「待って待って、もう良い、もう良いから!」


 途中からオタク特有の早口のごとく静夜の好きな所をどんどん発表する遥の言葉に耐えきれず静夜がストップをかけた。


「えー、まだ全然語り足りないのに?」


「本人に語る事かそれ?」


 物足りなさそうな遥に静夜はバッサリと突っ込む。


「とにかく葵さんが俺を好きな事は分かったんだけど、俺は正直何で葵さんにそんなに好かれてるのか分からないんだけど」


 静夜からそう言われて遥はきっぱりと答えた。


「私がスイーツを好きなのは美味しいから」

「え?」


 答えになってない様な答えを聞き静夜が驚いているのに構わず遥は言葉を続ける。


「私が皺猫を好きなのは可愛いから。私が静夜くんを好きな理由は、初めてときめいた異性だから。どんな簡単な理由であれいずれ好きな人が出来る事だってあるって静夜くんが私に教えてくれたよね?」


「……あ」


 静夜は遥の言葉を聞いて自分が過去に遥と2人でスイーツバイキングに行った時遥に話した言葉を思い出した。


「……参ったな、まさか自分の言葉がここで返ってくるなんて」


 驚きつつも感心してる静夜に遥はニコッと微笑みかけた。


「静夜くんのお陰で私好きな人が出来たんだよ? だからありがとね、静夜くん」


「……それはどーも」


 静夜は照れているのを隠したくてややそっぽを向きつつ返事をした。


「静夜くん、照れてるの?」


 ニヤニヤとしながら訊ねてくる遥に静夜はため息をつきつつ答える。


「そりゃあ綺麗な人にそう言われたら誰でも照れるって」

「え!? 綺麗って言った!? 私の事!?」


 静夜の言葉に驚き顔を赤くする遥に静夜は冷静さを取り戻しつつ答える。


「葵さんは誰がどう見ても美人さんだろ。クラスでもすぐに告白されてたし」

「そんな、静夜くんが私の事美人だと思ってくれてたなんて……!」


 感動している遥に静夜はやれやれと口を開いた。


「だから綺麗な花を見て綺麗って言ってるのと同じで、世間一般の感覚として葵さんは綺麗な人って言っただけで」

「私の事花の様に綺麗だと思ってくれてるんだね!」

「……もういい、俺もなんか取ってくる」

「えへへ〜行ってらっしゃ〜い」


 遥に説明しても(らち)が明かないと分かった静夜は席を立ってスイーツビュッフェのコーナーへと向かって行った。

スイーツビュッフェ行ってみたい。

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