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番外編 偶然の奇跡と必然の軌跡

「ユウちゃーん! 遊びに来たよー!」

「いつもの如く急だな本当」


 とある休日、遥は毎度お馴染みユウの家へと遊びに来ていた。


「いやーこれも一つの調査の一環でね!」

「調査……?」


 ユウが眉をひそめて問い返すと遥はしまったと言わんばかりに口元を手で抑えた。


「あ! いや、何でもないの! 散歩の一環というか、そういう……ね?」


 口ごもる遥の手から手のひらサイズのメモ帳が落ち、すかさずユウは遥より先にメモ帳を拾い上げて中を確認し始めた。


「ユウちゃん! 返して!

 そのメモ帳は……!」

「お前の言動が怪しすぎんだよ。どれどれ……」


 遥がメモ帳を取り返そうとユウに腕を伸ばすが、ユウはそんな遥の頭を片手で抑えて阻止しつつもう片方の手で器用にメモ帳をめくる。


 そのメモ帳にはびっしりと週末の日時が秒単位で記されており、その横に場所の名前と⚪︎×の記号が書かれていた。


「5月12日AM9:12:21 学校周辺 ×

 AM10:25:45 ドラッグストア ×

 AM10:43:36 ファ⚪︎マ ×

 PM1:52:47 新宿駅 ×

 PM2:23:12 ⚪︎ブン ×……」


 そこまでユウが読み上げると遥はバッとユウから手帳を取り上げた。


「もう! 音読しないでよ!」

「遥……1つ訊いてもいいか?」

「……何?」


 (いぶか)しげに問い返す遥にユウはばっさりと切り込む様に質問する。


「このメモは、まさか東の行動を差してる訳ではないよな?」


「そ、そ、そんな訳ナイヨー」


 泳ぎまくっている遥の目を見てユウは質問を変えつつ問いかけた。


「このメモは、お前が散歩して東に()()()()()()時間を書いてるんじゃないのか?」


「ギクッ!」


 分かりやすく露骨(ろこつ)に図星の様な声を出す遥に、ユウはため息をつく。


「はぁ……お前の言う調査って、東と近所でどのタイミングで会えるか色んな時間帯と場所を試す事だったのか」

「そ、そんなんじゃなくてね! 散歩が最近マイブームでして! だから東くんは関係なくてどの時間に散歩したかを、どれくらい歩いたかなーって記録を付けてるだけでして……」

「それなら単純に万歩計アプリでも使えばいいだろ。わざわざメモなんか取らなくても」

「うっ……確かに……!」


 ユウに正論を突かれ遥はぐうの音も出せずに論破された。


「うぅ……。

 そうだよ! 週末東くんに会えないかブラブラ近所を散歩しつつ東くんと会える会えないの統計を密かに取っていたのは事実だよ!

 でもストーカー(まが)いの事は一切してないよ! ただ統計をとって大体どのタイミングでどの辺に東くんがやって来るか予想してただけで!」

「いやそれ最早ストーカーより怖いわ」


 遥のとんでもない発言にユウは真顔で突っ込む。


「だってストーカーは犯罪でしょ!?

 それに、ストーカーして得た情報って、なんかこうロマンのかけらもないというか、運命を感じないというか……私はあくまで()()東くんと出会(でくわ)したいの!」

「統計取ってる時点でそれは運命を感じるのか?」


 ユウの問いに遥は大きく首を縦に振った。


「だってどんなに統計を取ったって外れる時は外れるし、占いだって統計を元にさもありそうな事を言ってるなんて話もあるし、それなら統計だって立派な運命であり偶然でしょ!?」

「占いのくだりは諸説あるとして、それはかなりこじつけすぎだろ」

「とにかく! ストーカーじゃないし何も悪い事はしてないでしょ!?」


 遥の嘆きにも似た声に、ユウは首をかしげつつも答える。


「まあ確かにストーカーではないし悪い事をしている訳ではないけど……」

「でしょっ!?」


 自信満々に言う遥に、ユウは冷たく一言放った。


「ただお前、その行動を東に胸張って言えるか?」

「え?」


 唐突なユウのセリフに遥は思わず硬直する。


「悪い事をしてないと、東に面と向かって自分の行いを話せるのか?」

「そ、それは……」


 ユウの言葉に遥は冷や汗を流しながら答える。


「は、話せない……かも……」

「なら統計なんかとらずに、もっと正攻法で会えばいいだろ?」

「正攻法……?」


 ユウの問いに、今度は遥が首をかしげた。


「だーかーらー。普通にデートに誘えば良いって話」

「デ、デ、☆⬜︎△◯♡〒♨︎☺︎♯*!!?」


 ユウの発言に遥は今度は驚きの表情で言葉にならない声を出していた。


「お前最初に東をデザートバイキングに強引に誘っといて、その後まともにデートに誘えてないだろ?」


「そ、そ、それは! そうだけど……」

「しかもお前、何でスイーツビュッフェに東ではなく私を誘ってくんだよ?」


 ユウは事前に遥から渡されていたグランドホテルスイーツビュッフェの招待券を遥に見せつけた。


「だ、だって! 静夜くんをどう誘えば良いのか分からなくて……!」

「普段あんだけ東に対してぐいぐいいっといて何を今更」


 顔を赤くして恥ずかしがる遥の様子にユウは呆れていた。


「でもさ! だってさ! 前に勇気を出してゴールデンウィークに遊びに誘った時も静夜くん()()()()遊ぶの前提だったしさ! この前だって買い物で偶然会った時一緒に回るの何か嫌そうだったしさ!

 今回誘って断られたら私もう心が砕けそうで……」


 シクシクとその場に泣き崩れ大袈裟に哀しみながら話す遥にユウはため息混じりに答えた。


「まあ東にだってお前の誘いを断る権利はあるよな」

「うゔっ!!」


 ユウの言葉に更にショックを受ける遥の頭をポンポンと軽く叩きながらユウは話を続ける。


「でもさ、東はお前と友達になる前からデザートバイキングに行ってくれたり、普段からお前の奇行に引きつつも友達やめたりしないで付き合ってくれてるあたり、少なくとも「お前が嫌だから」って理由では断らないと思うよ」


「……そうかなぁ?」


 目に涙を浮かべつつ遥がユウの顔を見上げると、ユウは遥の頭を強めに叩いた。


「いだっ!?」


「だからそんな辛気臭い顔してないで、明日にでも誘えば良いだろ?」

「だ、大丈夫かなぁ……?」


 まだまだ不安そうな遥に、ユウはからかう様に答える。


「まあお前の事嫌になってたらそもそも友達やめてるだろ」


「……確かに……?」


「だからここでぐずぐずいつまでも言ってないで、明日チケット渡す練習でもしとけ」


 ユウの言葉に遥は涙を拭いてすくっと立ち上がった。


「ユウちゃん……! ありがとう!

 私明日頑張るね! 静夜くんとスイーツビュッフェを食べに行ける様に!」


「おう、がんばれー」


 遥が立ち直ると同時にユウは机に向かい漫画を描き始め、興味なさそうに応援の言葉を投げかけた。


「じゃあユウちゃん! 練習相手よろしく!」

「おー、漫画描きながら片手間に聞いてやるよ」


 こうして遥は漫画を描いているユウに一生懸命静夜へチケットを渡す練習をしたのだった。

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