第46話 君と合いの手
「よっしゃー! ガンガン歌うぜー!!」
「おー!!」
カラオケボックスの部屋に着きハルがマイクを取ろうとした瞬間、ハルは両脇から遥とユウに取り押さえられた。
「え? え!? 何事っ!?」
訳が分からず戸惑ってるハルにユウと遥は優しく声をかける。
「今後大人になって仕事関係や友人同士でカラオケに行く機会は沢山あると思うんだ。
だから今のうちに矯正しないとな?」
「ハルの為を思っての事だから許してね?」
それからハルは遥とユウに手を繋がれ簡易的に拘束された。
「ちょっと!? 零様の曲歌いたいのにー!?」
「今日は7人という大所帯で来てんだお前だけのカラオケじゃねーんだ」
「流石に順番は守らないと、ね?」
そんなハルの様子に男子達はざわつく。
「えーと、天江さんどうしたの?」
太一に聞かれてユウは涼しい顔で答えた。
「荒療治だ。気にしないでくれ」
「いや気にするなって言われても」
「あー! 私の握力だけじゃ手に負えない!」
遥の手が解けそうになった瞬間、ユウが持ってきてた縄跳びでハルの手を後ろに回して縛った。
「これでよし!」
「良くない!! 絵面がすっごく良くない!!」
「あ、みんな気にせずどんどん曲入れてねー時間もったいないから」
「え? あ、ああ」
男子達は女子達の状況に引きつつも曲を入れ始めた。
「うー! 絶対カラオケでは零様の曲フルで全部歌うって決めてるのにー!」
「お前は少しは妥協というものを覚えろ」
ハルが文句を言ってる中、徹人はホル◯ンを歌い始めた。
「お゛ぉー!」
「あ、あの時のデスボ!!」
遥はようやく前のカラオケの時のデスボイスの正体が分かり感動していた。
「相変わらずすげーな鈴木……」
「俺達もう入れたから次そっちどうぞ」
静夜が圧倒されている中、明宏がデンモクを横に座っているユウへと手渡す。
「どうも。
ハル、曲入れるから曲名教えろ」
「零様のページ開いて入ってるやつ全部入れて」
「お前退出させられたいのか?」
「……じゃあ「ヨルアイ」」
ユウに睨まれハルは渋々お気に入りの一曲を伝えた。
「分かった。
私最後でいいや、遥先どうぞ」
それからユウは遥へとデンモクを渡した。
「えー、どうしようかな~?」
遥がデンモクで人気ランキングを眺める中、横からハルがぼそりと助言する。
「せっかく東くんもいるんだしさ、デュエット曲とか入れてみたら?」
「!?
その意見採用!!」
そうして遥は意気揚々と曲を探し--。
「よし!
じゃあ粛聖‼︎ロ◯神レクイエム⭐︎にしよう!!」
「いや待て待て」
ようやく選んだ遥の曲のチョイスにユウは待ったをかけた。
「それデュエットじゃなくて合いの手だろ。
というかそんな曲歌って大丈夫か?」
「NH◯でコンプラ的にアウトだった曲だよね~?」
ユウとハルに心配される中遥は渋々答える。
「だってよく考えたら私デュエット曲あんま知らないんだもん……。
3年目の◯気くらいしか思いつかなかったし……」
「急に昭和だな」
「なにその曲?」
ハルの問いに遥は真面目に答える。
「前にMADで知った昭和の曲……絶対東くん知らないよね?」
「知らないだろうな……」
「じゃあロ◯神でいいや」
そう投げやりに遥が曲を追加すると、明宏と太一が反応した。
「え? 誰かロ◯神歌うの!?」
「はーい」
「じゃあ俺達みんなで合いの手歌おうぜ!
なあ東!」
急に話題を振られ静夜は驚きつつも問い返す。
「は? マジで言ってる?」
「そりゃあ大マジだよ、な!」
「はあ、分かったよ。みんなが歌うなら……」
そして遥の出番が回ってきて遥は元気にロ◯神を歌い上げ、静夜が乗り気ではない中他のみんなは合いの手で盛り上がっていた。
「はぁ歌いきったー! みんなありがとう!
しかも名前のところルカちゃんに改変までしてもらっちゃって!」
(東くんが私の事ルカちゃんって言ってくれた嬉しい嬉しい嬉しい嬉しいetc……)
遥は歌い終わった後みんなに礼を言いながら脳内では(合いの手とは言え)静夜にルカちゃんと呼ばれた事に感激していた。
「はぁ~幸せな一時だった……」
「あんなんで幸せになったのかお前」
隣に座っているユウに突っ込まれ遥は笑顔で返す。
「そりゃあもう東くんが引きながらも酷い合いの手を言ってくれるなんて最高だったよ……!
でも欲を言えばむしろ東くんに歌ってもらって私が合いの手を入れたかったなぁ」
「それは多分東の性格的に叶わないだろうな」
一方静夜は無難に最近流行ってるJPOPを歌い始めた。
「きゃ~東くんの生歌!!
めっちゃ声綺麗やばい幸せすぎる耳が孕む!!」
「もっとまともな褒め方出来ないのかお前は」
(集中し辛い……)
遥に褒められまくり静夜は終始歌に集中出来なかった。
そしてハルは歌う時だけ拘束を外してもらえたのだが……。
「よっしゃー! 拘束が外れればこっちのもんよ! ガンガン入れて……!」
「させるか!」
デンモクを取ろうとするハルを即座にユウがいなし、絶対にデンモクはハルの手元へは渡らなかった。
「うわーん! 酷いよー!」
「酷いのはお前のその執念だ」
こうして楽しいカラオケの時間も過ぎていき夕方。
「今日は楽しかったー!
またみんなで遊ぼうぜー!」
会計を済ませた後徹人がみんなに声をかけた。
「うん! またみんなで遊ぼうね!」
「今度こそ零様の歌歌いきりたい!」
「お前はそれを諦めろ」
「それじゃあ帰るかー」
それから電車組のハルと明宏は先にみんなと別れた。
「ハル、山本くん、またねー!」
「またなー」
「まったねー!」
「おー、また学校で」
2人と別れてしばらく歩いたその後学校の近くまで来た遥が嘆きだす。
「うぅ……私東くん達を学校まで送っちゃ駄目?」
「貧弱なお前が何の為に送るんだよ?
返ってお前が送られる側になるだろそれ」
別れを惜しむ遥にユウが冷静に突っ込んだ。
「葵さん達家そっちなんだなー」
「そうだよ……私も寮に入ろうかな……」
「歩いて5分圏内の奴が寮に入ってどうすんだよ。
ほら行くぞ」
嫌がる遥の首根っこを掴んで引きずりながらユウはすたすたと歩き出した。
「それじゃあみんなまた」
「引っ張んないでよユウちゃーん!
東くん! それと鈴木くんと渡辺くんも! また学校でね!」
遥は引きずられて涙目になりつつも笑顔でそう男子達に挨拶した。
「葵さん河合さんまたなー!」
「2人ともまた」
「また学校でなー!」
徹人と静夜と太一はそれぞれ引っ張られていく遥に戸惑いつつも手を振って2人を見送った。
それから男子3人は学校の寮目指して歩き出した。
「俺らも帰るかー」
「また今度このメンバーで遊ぼうぜ!」
「まあ、機会があればな」
徹人の発言に静夜がそう答えると、太一は横から静夜の肩に腕を回して尋ねた。
「東ー、少しは葵さんと仲良くなれたかー?」
「別に普通だって」
そう素っ気なく答える静夜に太一はしみじみと話す。
「でも良いよなー、お前は葵さんからあんなに好かれてさ」
「お前本気でそう思ってんの?」
静夜の問いに太一は真顔で返した。
「ぶっちゃけ性格はあれだけど好かれるのは素直に羨ましいと思ってるし、すんなり付き合われるとそれはそれでムカつくから葵さんには悪いけど俺は玉砕して欲しい派」
太一の言葉に徹人が横から口を挟む。
「俺は葵さん応援してるから2人にくっついて欲しい派!」
「あっそ」
変な派閥が出来てる事に突っ込む気力も失せて静夜は力なくそう返事をする。
「何だよその余裕そうな態度は!
このこの〜!」
そんな静夜を太一は肘で小突いた。
「やめろって」
それからふざけつつも3人仲良く寮へと帰って行ったのだった。
「うう、東くんにくっついてる渡辺くん羨ましす……」
「ふーむ東×渡辺も悪くないな」
一方そんな男子達を遥とユウは影で眺めながら各々物思いにふけるのであった。




