第45話 君と初恋
今日は土曜日。
以前ゴールデンウィーク前に遥が静夜を遊びに誘った日である。
「服装OK! 髪型OK!
荷物OK! よーし!」
遥は鏡で全身チェックしてガッツポーズした。
「今日は待ち望んだ東くんと遊びに行く日!
今日でなるべく東くんとお近づきになりたい!
いやなってみせる!
こう言うのは口に出して宣言するのが大事だよね!!
よっし!!」
「行って来まーす!」
気合い十分な遥は早速家を出た。
「お待たせー!
きゃー! 東くんの私服かっこいいー!」
それから遥が待ち合わせの場所に着くとそこにはすでに静夜が来ていた。
「あ、どうも……」
急に褒められて言葉を濁す静夜の横から徹人とハルが遥に声をかける。
「あ、葵さんやっと来たー」
「ルカちゃんおそーい!」
因みにいつものメンバーは全員既に到着していた。
「ごめんって鈴木くんにハル!
恋する乙女たるもの準備に時間かかってさ!」
「あ、ルカちゃん髪結んだんだ!
相変わらず下手だね!」
「うっ!」
ハルに指摘されて遥は急いで髪を解く。
「やっぱり私にヘアアレンジは無理だったよー!」
「もう、だから私に任せておけといつも言ってるのに……。
ちょっとルカちゃんとトイレ行ってくるね!」
「はいはい」
ハルが遥を連れていくのをユウと他の男子達が手を振って見送った。
「なあ、河合さんの私服姿、俺達より格好良くないか……?」
ぼそりと呟く明宏に静夜と太一も頷く。
「正直このメンバーの中で1番格好良いよな」
「だよな……俺河合さんに勝てる気しねーもん……」
「いや何に勝つんだよ」
(ふーむ元気っ子鈍感系鈴木×大人しめ東のCPに爽やか系渡辺×塩顔山本……うん、推せるな)
男子達がそれぞれユウの格好良さに見惚れてる中、ユウは男子達をそれぞれ脳内でCPに当てはめていた。
「お待たせー!!」
それから間も無くしてヘアメイクをばっちり整えて来た遥とハルが戻ってきた。
「えへへーハルにやってもらったんだ!
東くんどうかな?」
遥が静夜に尋ねると、静夜は素直に感心しながら答えた。
「わぁすげー。天江さん手先器用なんだな」
「えへへ~ありがとう東くん!」
「あれ? これ私が褒められる流れではなかったの!?」
ハルが褒められてる横で遥がしょぼくれていると、静夜は少しぶっきらぼう気味に遥へと声をかけた。
「まあ、葵さんもちゃんと似合ってるよ」
「東くんの照れ顔頂きましたー!
ご馳走様ですありがとうございます!!」
急に感謝しだす遥に静夜はため息混じりに口を開く。
「はぁ、毎度こうなるから葵さんの事素直に褒め辛いんだよ」
しかしそんな悪態つく静夜に遥は更に興奮気味に話した。
「東くんの引いてる顔もむしろご褒美です! ありがとうございます!」
「マジかよ無敵かよ……。
ところでみんなお昼何にする?」
静夜は遥に呆れつつ話題を逸らそうとみんなに尋ねると、各々食べたい物を答え出した。
「カレー食べたい!」
「たまには和食でも良いな」
「丼物とか良くね?」
「えー私パスタ食べたーい」
「甘いものが置いてるところ!」
「酷いくらいにみんな意見が割れたな」
ユウが呆れる中、それぞれの意見を聞いて静夜はみんなの食べたい物をそれぞれ復唱した。
「えーと、カレーに和食に丼物にパスタに甘いもの……」
「……よし! 考えるの面倒だからガス◯にするぞ。 大体あるだろ」
ユウの鶴の一声でお昼はガス◯に決定した。
それからガス◯内にて。
「ねーねー、どうせならこのメンバーで恋バナでもしない?」
ハルの提案に一同が一瞬固まる中、ユウが横から即座に突っ込んだ。
「お前零の話がしたいだけだろ」
「えへ~バレちゃった!?
実は昨日新曲のPVが公開されたんだけどそれがもうめちゃくちゃ格好良くって!!」
熱を込めて話すハルに徹人も口を挟む。
「恋バナっつーか推しの話でいいなら、俺こないだ休みの日にYu……」
Yukaと会った事を話そうとしたが、しかしギリギリのところで徹人はYukaに内緒にしてねと約束していた事を思い出した。
「あ、えーと! Yukaのソロ曲めっちゃ聴きまくった!」
「なんだそれ。いつも通りじゃん」
徹人の発言に横から太一が呆れながら突っ込む。
「あ、東くんは推しとかいないの!?」
遥が向かいに座っている静夜に問いかけると、静夜は首を横に振った。
「別にそういうのは居ないかな」
「そ、そっか!
(良かった~!
これで芸能科に推しが居たらどうしようかと思ったよ……)」
ホッと安堵する遥を見ていた明宏が面白半分でみんなに向かって質問した。
「なーなー、みんなは初恋とかどうだったの?
どんな人好きだった?」
「!!?」
ニヤニヤとぶっ込んだ質問をする明宏に一同が驚いていると、明宏が横にいる静夜に声をかけた。
「それじゃあまずは東から!」
「は?
俺別に初恋とかねーよ」
明宏の質問を静夜は面倒そうに答える。
「えー? マジかよ東、今まで好きな人出来た事ねーの?」
「ない」
きっぱりと言い切る静夜に明宏はつまんねーのと呟きつつ他の人にも尋ねた。
「渡辺や鈴木は?」
「俺昔音楽の先生に一目惚れした事ある。
結婚してたけど」
「あー、お前歳上好きそうだもんな」
「俺は同じクラスの女子に告られて付き合ったくらいかなー」
徹人の回答に明宏が更に突っ込む。
「それって前話してた1度目のデートで振られた子?」
「そう!」
「へー、鈴木くん元カノいたんだ」
意外だと言わんばかりに驚いてるハルにも明宏は尋ねた。
「天江さんは? やっぱり零なの?」
「いや、私も中学の頃一時付き合ってた男子居たよ。
性格合わなくて振られたけどさ」
「へー、意外。零一筋かと思った」
ハルの言葉に太一が驚いていると、ハルが更に補足した。
「でもその後に零様の存在を知って、そこからは零様一筋だから!」
そう断言するハルの横で遥は頬を染めながら視線を逸らしていた。
そんな遥を見て明宏は意地悪く質問する。
「そんで? 河合さんや葵さんは?」
「私も特にいないな」
あっさりとユウが答える中、最後に質問され遥は声を震わせながら答える。
「わ、私は……」
みんなが固唾を飲んでどう答えるか見守る中、遥はビシッと指差した。
「私の初恋の人は、そこに座っているユウちゃんです!」
遥の答えにユウ以外のみんなが驚いた。
「え!? そうなのルカちゃん!?」
「え? ガチ? ネタ? どっち!?」
「これもう分かんねーな?」
周囲がざわつく中、遥は顔に両手を当てて照れながら答える。
「私幼稚園の頃ユウちゃんの事男子だと思っててさ。ガチプロポーズしたんだよね」
「ああ、そういえばそんな事もあったな」
遥の言葉にユウも昔の事を思い出しながら返事をする。
「あの時のユウちゃん本当男の子にしか見えなかったもん!」
「まあ兄貴のお下がりばっか着てたからな」
昔話に花を咲かせる遥に明宏は白けた様に話した。
「えー流石に初恋が勘違いの同性はノーカンだろ」
明宏にそう言われて遥は不服そうに答える。
「え!? ダメなの!?
んー、それじゃあ幼稚園の時いたイケメンの先生とかでもいい?
好きって言うより仲が良かったってだけだけど」
「あーそう言えばそんな先生いたな」
「みんなから人気だったのに途中で辞めちゃったんだよね……。あれこそ正しくみんなの初恋泥棒ってやつ?」
「みんなにとってはそうでもお前は違うんじゃ……。
てか他に思いつかないのかよ」
「ん~他ならそうだな~」
勝手に盛り上がる遥とユウをよそに男子達はそれぞれで話しだした。
「ちぇ~てっきり東って答えるかと思ったのに……」
横から小声で話す明宏を静夜は肘で小突く。
「お前な……!」
「まあでもお前も葵さんの初恋事情とか知れて良かったんじゃねーの?」
そう更に隣から茶々を入れてくる太一を静夜は睨む。
「別にどうでも良いって」
「とか言いつつ内心自分が呼ばれなくて寂しかったりとか~?」
「んなもんないから!
俺飲み物取ってくる!」
からかわれるのが嫌になった静夜は飲み物を飲み干してすぐさまドリンクバーへと向かった。
「あ、東くんおかわり行くの?
私も行くー!」
静夜が席を立った事に気付いた遥も慌てて立ち上がり静夜の後へとついて行った。
2人が席を外したところでユウが明宏へと尋ねる。
「山本は遥に告白でもさせたかったの?」
直球で尋ねるユウに明宏は笑いながら答えた。
「だってあそこまでバレバレなのに中々進展しないのもつまんないじゃん?
たまにはこういうのもぶっ込んだ方が良いかなって思ったんだけどさ。
でも流石にやりすぎたか?」
途中から真面目に心配しだした明宏にユウは首を横に振る。
「いや、あれくらいの質問なら遥は簡単に流せるし問題ないよ」
「あ、やっぱそうなんだ?」
ユウと明宏が会話している中、ドリンクバーへ行った静夜は遥に話しかけていた。
「なあ葵さん」
「(!? 東くんから話しかけてくれた!)
な、何!? 東くん!?」
静夜からの声かけに遥が驚いていると、静夜は真面目に話し出した。
「山本のああいう質問とか、答えたくないやつは無理して答えなくてもいいからな。
どうせからかってるだけだし」
そう忠告する静夜に遥は笑顔で答える。
「東くん、そんなに心配しなくても私その辺はスルー出来るから大丈夫だよ!
さっきだって上手くかわせてたでしょ?」
ドヤ顔で語る遥に静夜は小さく笑いながら頷いた。
「まあ確かに、逆に葵さんの方が俺よりそういうの得意かもしれないな」
「(東くんの笑顔いただきました~!!
ごっつぁんです!!)
あ! じゃあ私今度から東くんが答え辛そうにしてたら助け舟出すね!」
興奮しつつもそう提案する遥に静夜は冷静に答える。
「それは何か余計に話がややこしくなりそうだから遠慮する」
「ええ!? 何でッ!?」
こうして2人はそれぞれ飲み物を片手に席へと戻っていった。
「お、お2人さんおかえり~」
「つーか山本、お前みんなから聞くだけ聞いといて自分だけ答えてないよな?」
静夜が席に戻るとすぐ隣の明宏に質問した。
「あーそう言えば俺答えてなかったっけ?
俺の初恋の相手は巴マ◯」
「それ2次元じゃねーか」
「山本なんかズルくねー?」
それからみんなそれぞれお喋りしながらもお昼を食べ終わり、カラオケへと移動するのであった。




