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第42話 君と許容

 そしてその日の放課後。


「……」


 静夜が図書室に来ると、影からこっそり静夜の後をつけてきた遥もそのまま図書室へとやって来た。


(バレてないつもりなんだろうけど……バレバレなんだよなぁ……)


 隠れてる遥の存在に気づきつつも静夜はどうしたものかと本を読むフリをする。



 一方遥の脳内では、緊急会議が行われていた。


「どうしよう!? 東くんに嫌われちゃったかもしれない……!」

「落ち着いて東くんに謝罪するのよ私! 全力で謝れば東くんだってきっと許してくれるはず!」

「怒っている東くん怖かったけどかっこよかったなー♡」

「いやでも今は読書中……本を読んでいるのを邪魔するのは逆に余計に嫌われるのでは!?」

「かと言って東くんが話しかけてくるのを待っていたって何日かかるか分からないよ? 下手したらもう2度と……」

「いやーー!! 一生東くんと話せないのは嫌!!」

「読書中の東くんもかっこいいなー♡」

「とにかく謝罪が先決!」

「いやタイミングを伺う為今日は一旦やめて……」

「明日も東くんに会えるの楽しみだなー♡」

「おいこらそこの奴ずっとのろけてないでお前も考えろ!」


 やがて遥の脳内はショートを起こした。



(脳内の私ろくな奴がいない……いやまあそうだよね? だって全部私だし、私1人で考えたってろくな解決策思い浮かばないよね? はぁ……。

 というかせっかく今図書室に来てるんだし、何か上手くいく謝罪の本とかないかな? そういうのジャンルなんだろ?

 心理学? んーとそんな本学校にあるのかな……)


 それから遥は図書室の本棚を物色し始めた。


(あ、あの上の棚の本に「超分かる心理学」なんてもろそれっぽいタイトルあるじゃーん! んー、でも高くてギリ届くかな……でも椅子持ってこようにも東くんにバレそうだし……)


 遥は背伸びして何とかその本を掴んだ。


「よし!


 って、あれ?」


 しかし、その本の上に別の本が乗かっていたらしくそのまま別の本が滑って落ちてきそうになり--。


 遥が直撃覚悟で目を(つぶ)り数秒待っても本は落ちて来ず、やがて恐る恐ると目を開けてみた。


「!? あ、東くん!?」


 すると遥の横には落ちて来た本を持って立っている静夜がいた。


「全く、何してんのさ?」


 やれやれと言わんばかりに本を棚に戻す静夜に遥は深々と頭を下げる。


「あ、ありがとうございます!」

「別にいいよ。

 本戻しに来たついでにそっちが上の本に気づかずに落としそうになるの見えたから来ただけだし」


 それだけ伝えて去って行こうとする静夜の服の(すそ)を遥はそっと掴む。


「ま、待って東くん!!」


「!?」


 咄嗟(とっさ)に裾を掴まれて静夜が驚いて振り返ると、遥が顔を真っ赤にして目に涙を浮かべながら口を開いた。


「あ、朝はごめんね!

 ほ、本当にごめん!! 私、じ、自分のごどじががん゛がえ゛でな゛ぐでっ!!」


 途中から泣きながら謝る遥に静夜はギョッとする。


「あ、葵さん!?

 お、落ち着いて!?」


「うゔ……だっで、東ぐん゛に嫌われだぐな゛い゛よ゛ぉ。

 ぜっがぐ仲良ぐな゛れ゛だの゛に゛ぃ」


「うん分かったから一旦席座ろうか?」


 それから遥は静夜に誘導されるがままに図書室に席に着いた。


「ほら涙拭いて鼻噛みなよ」


 静夜はカバンから取り出したポケットティッシュを差し出すと、遥がおずおずと受け取った。


「あ、ありがど~」


 ずびずびと鼻を吸って目を(こす)る遥に静夜はため息をつきながら尋ねる。


「少しは落ち着いた?」


「ゔん……」


 それから落ち込んで下を俯いている遥の頭上に静夜は紙袋をぶつけた。


「痛っ!?」


 遥は突然の衝撃に頭を押さえつつ、ぶつけられた紙袋を受け取る。


「あの……これは?」


 恐る恐る遥が尋ねると、静夜はぶっきらぼうに尋ねた。


「今日みたいな事もうしないって約束出来る?」


「約束します!! 絶対にもう2度と致しません!!」

「それならその紙袋持ってって」


「!?」


 遥が紙袋の中を確認すると数冊の本としるこサンドが3袋入っていた。


「ほ、本当に良いの!? わ、私にくれるの!?」


 慌てながら確認する遥に、静夜は釘を刺す。


「本は貸すだけだから」

「うん! 東くんありがとう本当に!!


 というか、私だけしるこサンド3袋も入ってる!? 他の人はみんな1箱ずつだったのにどうして……!?」


 遥はお土産が1人だけ量が多い事に気付いて目を輝かせて静夜に尋ねると、静夜は冷静に口を開いた。


「ああ。それ、他の人のお土産に比べてめちゃくちゃ安い奴だからさ。

 何か1袋だけだと悪いなと思って3袋にしたんだよ。それでも他の人のより安いけど」

「成る程! 質より量って事だね!」


 静夜の言葉に遥は納得する。


「ありがとう! この前ののど飴同様大事に保管するね!」

「いや食べろって。

 つーかまだ前ののど飴食べてなかったのかよ」


 笑顔でそう言う遥に静夜は真顔で答えた。


「だって東くんから貰ったものがなくなっちゃうの悲しいもん!


 そ、それと……もう本当に怒ってない?

 実は心の底では憎んでるとかない?」


 恐る恐る尋ねる遥に静夜は笑って答えた。


「流石にもう怒ってないよ。俺もそこまで鬼じゃないし」


(笑ったー! かっわいいー♡)


 遥が静夜の不意打ちの笑顔にやられている中、静夜は更に笑顔で言葉を続けた。


「まあ本当は途中から怒ってはいなかったんだけどさ、なんか反省してる葵さん見てたら反応面白くて途中から怒ってたフリしてただけなんだけどな」


「あれ? 東くんって実は意外とSなの?」


 遥の質問に静夜は真顔で答える。


「そういう発言みんなの前では絶対しないでくれよ?」

「それはもう勿論分かりました!」


「一応最初怒ってたのは本当だからな?

 次やったらもう許さないから」

「分かりました! 肝に銘じます!!」


 静夜の言葉を恐れつつ遥は真面目に返事をした。


(葵さんって割と単純なんだな……)


 一方静夜は遥の扱いに慣れつつあるのであった。

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