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第39話 君と病院

「東、病院の予約は今日の夕方になった。

 その時俺が車で送るから」


 お昼を持ってきた男性の教師にそう言われて静夜は力なく返事をした。


「分かりました……ゲホ」


「後もう一度熱測ってみろ」


「はい……」


 教師に渡された体温計を受け取り静夜がもう一度体温を測った後、静夜はそれを教師へと再び渡す。


「38度2分か。熱上がってるな。

 気分はどうだ?」

「ゴホッ……あんまり……」

「まあ無理せず休めよ。

 俺はもう行くから、何かあったらその辺にいる寮母さんか誰かに言うんだぞ?」

「はい……」


 教師が部屋を出て行った後、静夜は机に座り直してお昼ご飯を食べ始めた。


「うっ、喉痛ぇ」


 途中咳が出そうになるのを堪えつつ何とかお昼を食べ終え、静夜はすぐさま倒れ込む様にベッドに横になった。


(何で俺だけ風邪引くんだよ……。

 どっちかと言うと仕事終わらせて帰省してすぐ遊びに行った陽太の方がハードスケジュールなはずなのに……。


 でも昔から陽太より俺の方がよく風邪引いてたっけ……?)


 静夜が過去の事を思い返していると、ふと朝見た夢の内容を思い出した。


(あー……嫌な事思い出しちゃった……。

 確かあの後次の日本当に告白されたっけ?

 俺なんて答えたっけ……?

 振った事は覚えてるけど内容までは覚えてない……つーか今そんな話思い出さなくても良いだろマジ……思考能力終わってんな俺……)


 それから静夜はなるべく暗い気持ちにならない様脳内で無理矢理明るい話題を考えようとした。


(あー今日渡辺と鈴木がお土産くれるっつってたっけ? てか俺もみんなにお土産渡したかったのに……期限大丈夫だったよな? 確か……後なんかあったっけ……)


 静夜がぐるぐると考え事をしていると、枕元に置いていた携帯に通知が届いた。


(誰だ……? 陽太からか……?)


 静夜が携帯を手に取り確認すると、差出人は徹人からだった。


「体調大丈夫かー?

 こっちは葵さんが死んでる」


 徹人のメッセージを見て静夜は沈んでいる遥を想像する。


(うわぁ、めっちゃ想像がつくな……)


 それから静夜はゆっくりと徹人に返事を打ち始めた。


「こっちは熱上がってしんどい」


(葵さんの事は……何て返せばいいか分からんしスルーで良いか)


 少し悩んだ末静夜がそう返信すると割とすぐに徹人から折り返しの返事が来た。


「マジかー。

 早く良くなるといいな!」


 それに対してせいやは短く「うん」の一言だけ打って携帯を閉じる。


(何か画面見るのもしんど……。

 でも寝たくても眠くもないし……)


 その後しばらく静夜は部屋の天井をぼーっと眺めつつ時間が過ぎるのをただただ待っていた。




 それから数時間後、部屋を訪ねて来た先程の男性教師に促されて静夜は車で病院へと連れていかれた。


「はいじゃあちょっと我慢してね~ごめんね~」

「ゔっ」

 

 病院に着き看護師に案内された後、静夜は検査薬を鼻の奥に突っ込まれ涙目になっていた。


「はい終わり。それじゃ検査の結果が分かるまでこの部屋で待っててね~」

「はい……」


(はぁ~だから病院は嫌なんだよ……)


 まだ違和感を覚える鼻を押さえつつ静夜は愚痴を考えながらも大人しく部屋で待った。


 その数分後、白衣を着た医師が静夜に結果を伝える為にやって来た。


「結果は陰性だったから。

 はい口開けて「あー」って声出して言って」

「あー」


 医師に言われるがままに静夜が口を開けると、医師は静夜の喉の状態を確認し出す。


「あー、ちょっと赤いねー。

 うん。俗に言う夏風邪だね。

 お薬出しておくから、処方箋貰ったら隣の薬局まで取りに行ってね。

 はいそれじゃあお大事に」

「はい、ありがとうございました……」


 医師の診察が終わり静夜は待合室へと戻った。


(確か先生一旦学校に戻るから終わったら連絡しろって言ってたっけ?

 あ、でもその前に薬局か)


 その後会計に呼ばれて処方箋を受け取った静夜はとぼとぼと隣にある薬局へと向かった。



 一方遥はと言うと。


「はぁ~~……」


 1人項垂れながら下校していた。


 因みにユウは日直、ハルはバイトの為一緒に帰れる人も居らず、その背中には一層と哀愁が漂っていた。


「東くんにようやく会えると思ってたのになぁ……。

 ああ駄目だ。東くん成分が足りなさ過ぎて道ゆく全ての人が東くんに見えてきた……。

 特にあの向かいの病院から出て来た人なんて東くんにそっくり……はぁ……」


 遥はそのままスルーして一旦病院を通り過ぎたが、足を止めてもう一度病院手前まで戻り歩いている人物を見返す。


「ってかあれ本物の東くんじゃない!?」


 そして遥は道を渡って全速力で静夜の元へと走って行った。


(薬局はこっちか……)


「東くーーん!!」


 大声で唐突に名前を呼ばれた静夜が思わず振り向くと、そこには両手を振って全力で走ってくる遥の姿があった。


「久しぶりー!!

 病院行ってたの!?」


「え? 葵さん、何で……?」


 驚く静夜に遥は笑顔で指差しながら答えた。


「私ん家あっちの方なんだ!


 ってか東くんめっちゃ顔色悪くない!?

 大丈夫!?」


 静夜の顔色の悪さに気付き遥は慌てふためく。


「あ、いや、まあ」

「何で東くんどうしてそんな顔色に……!?

 え、えーと、取り敢えず、付き添っても良い!?」


 動揺する遥の姿が、静夜には夢に出て来た女子と重なって見えた。


 --何で? 東くん。どうして? 

 --えっと、取り敢えずでも付き合ってみようよ?


「付き合わない。

 お前みたいな陽太狙いの女子とは特に」


 静夜がそう返事をすると女子は悔し涙を浮かべながら去って行った。


(ああ、俺確かそんな事言ったっけ……)


 記憶を思い出した静夜はそのまま気を失った。


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