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第27話 君と好きな人

「静夜ー! ただいまー!」


 夜、小鳥遊寮の一室にて。


「げっ。……おかえり」

「おいおいお兄ちゃんの帰宅に「げっ」はないだろうよ~」


 静夜はswi◯chでマイ◯ラに勤しんでいた中帰ってきた陽太にうざ絡みをされていた。


「なーなー静夜くんよー。

 何かお兄ちゃんに言う事はないかい?」

「……」


 ニヤニヤとした笑顔で聞いてくる陽太の言葉を無視して静夜は頑なにマイ◯ラに集中していた。


「おいおい~無視すんなよ~。

 仲の良い兄弟同士隠し事は無しだろ~?」

「何も隠し事なんてしてないし」


「またまた~。葵さんだっけ?

 あの可愛い子ちゃんとはいつの間に仲良くなったんだよ~?」

「別に同じクラスでたまたま席が近かったから仲良くなっただけ」

「ふ~ん? へえ~?」


 ニヤニヤとし続ける陽太に嫌気がさした静夜が声をかけようとすると、先に陽太が口を開いた。


「もういいっ……」「安心しろよ。俺別に葵さんに近づいたりしないからさ」

「……!」


 そう寂しそうに笑いながら宣言する陽太に静夜は一瞬口を閉ざす。


「……別に葵さんは小野さんと全然違うし……つーかそもそも陽太が気にする事何もないだろ」

「なあ静夜、そろそろ本当の事言ってくれないか?

 あの日小野さんと一体何があったんだよ?」


 先ほどの茶化していた雰囲気から一転して真剣に聞いてくる陽太に対して静夜は視線を外しながら静かに答える。


「だから前から言ってる通りだって……。

 俺が勝手に告って振られただけだ。

 抜け駆けして告白したのは悪かったと思ってるけど……」

「いや俺別に抜け駆けとかそんなの気にしてる訳じゃなくてさ」

「人の失恋話をいつまでえぐるんだよ。

 趣味悪いな」


 静夜に悪態をつかれてしまい陽太はそれ以上追求するのをやめた。


「分かったよ……。


 ところで、お前さっきから何の装置作ってんの? 随分大掛かり過ぎじゃね?」


 陽太はすっかりいつもの調子で声をかけながら静夜が手に持っているswi◯chの画面を覗き込む。


「ああ、これクラスの奴からマイクラで曲作れるって聞いてさ、試しにちょっと作ってみようと思って」

「へぇ、今どんな感じなの?」


 陽太に尋ねられて静夜は作りかけの曲を再生した。


 マイ◯ラからYukaが所属しているアイドル「ラビット」の代表曲「ツキノウサギ」のサビが流れ出した。


「え? クオリティ高っ!

 お前これYou◯ubeに上げたらバズるんじゃね?」

「何言ってんだよ、これYou◯ubeに載ってた作り方の動画見ながら作ったんだから無理だろ。

 でもおかげでどうやって曲作ればいいのかある程度要領は掴めた」

「マジかー。次何作るの?」


 陽太に尋ねられて静夜は淡々と返事をする。


「クラスの友達に頼まれたホル◯ンの曲でも作ろうかと」

「いきなりレベル高くね?」


 陽太はそう突っ込むが静夜は至って真面目に答えた。


「どうやったらどんな音が出るか大体把握したし多分いける」

「それ完成したらYou◯ubeに投稿しなよマジで」

「嫌だよ動画投稿とか面倒臭い」




 こうして和やかに夜はふけていき、次の日、小鳥遊学園普通科の教室にて。


「東くんに好きな人がいたらどうしよう?」


 遥は真剣な表情でユウとハルに問いかけた。


「急にどうした?」

「何何? 東くんと何かあったの?」


 ユウが素っ気なく、そしてハルは興味津々に遥へと(たず)ねる。


「昨日のお昼にね、私の横に大橋瑠奈って子が座ってきたんだけど」

「え!? あの大橋瑠奈!?

 すっごーい! 会えたんだ!」


 遥の発言にハルはオーバーリアクションで驚いた。


「あ、やっぱり結構有名なんだ?」

「遥って本当芸能人に疎いよね……私が言うのもなんだけどよく小鳥遊学園入ったな」


 大橋瑠奈の事をよく知らなかった遥にユウは呆れていた。


「それで、大橋瑠奈が横に座ったらね、私をまたいで東くんが大橋瑠奈の事を見ていたの!!」

「そりゃあ東だっていきなり女優が来たら物珍しさで見もするんじゃないか?」

「私でも大橋瑠奈が来たら一生懸命見るかも~」


 遥の発言に2人は納得した様に首を縦に振る。


「え!? そうなの!? 芸能人って言ったってただ顔が可愛いだけの私達と同じ人間だよ!? 隣にチンパンジーが来たら流石の私だって見るけどさ」

「いやチンパンジーは見る以前の問題だろ。学校にそんなん居たら問題になるわ」


 遥の独特な例えにユウは思わず突っ込んだ。


「ルカちゃんって本当に他人に興味ないよね」

「そんで? お前はそれだけで東が大橋瑠奈を好きなのかと勘違いしたって事か?」


 ユウの問いかけに遥は狼狽(うろた)えながら答える。


「だ、だって! 私がすぐ横にいるのに他の女の人を見てるのが凄くショックで!!」


「激重束縛系女子じゃねーか」

「しかも付き合ってすらいないのに。

 重症だね」


 2人にそう言われて遥はうぅ……といじける。


「確かに付き合ってもいない私がこんな事思うのはお門違いだって流石に分かってるよ。

 それはそうと東くんが他の女子を見てたら不安になる」


「見てるだけで不安はヤバいだろ」


 ユウが突っ込む中、ハルはそんな遥の頭をぽんぽんと撫でながら口を開いた。


「でも気持ち分かる~私も零様が他の女の子と話していたら不安に思っちゃうかも~」


 ハルがそう言った後、廊下から女子の黄色い声が飛んできた。


「見て見て! 零がいるよ!」

「隣の女の子誰だろ? 何か仲良さそうじゃない?」

「え~ショック~」


 廊下からの声を聞きユウがハル声をかける。


「噂をすればその状況になったぞ……」

「零様に無断で近づいてるクソ女はどこのどいつだぁ!!」


 ハルが殺気だって廊下へダッシュしようとするのをユウが全力で止めた。


「やめろ過激ファン」

「止めないでユウちゃん!

 相手を血祭りにしなくちゃ!」

「頼むから犯罪を犯すな」


 暴れ狂うハルを遥は冷ややかに眺めた。


(何か(はた)から嫉妬に(まみ)れてる人を見るのって実に滑稽(こっけい)だな……)


「ユウちゃん……私、もっと広い心で余裕を持つ様にするよ」

「おう、是非そうしてくれ。

 その方が私も助かる」


 ユウに止められる暴れ狂うハルの姿を見て遥は静かにそう宣言した。





 遥がそう誓った中、静夜は真央に話しかけていた。


「あ、隅田さん、ちょっといい?」

「どうしたの東くん?」

「次の図書委員会の集まりなんだけどさ……」


 2人が話しているのを目撃した遥は真顔で立ち上がった。


「私隅田さんに用事が出来たからちょっと行ってくるね」


 真顔で真央の元へ行こうとする遥をユウが止める。


「お前1分前に誓った事を忘れたのか」

「私は常に未来に生きてる!

 過去なんぞ捨て去った!」

「かっこいい事言ってる様でやってる事めちゃくちゃだからな?」


 ハルと遥の暴走を止めたユウは1人ため息をつくのであった。

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