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番外編 河合優希の秘密

 河合優希。通称ユウ。

 遥の幼馴染でありハルと友達であるイケメン少女。


 そんな彼女には、遥しか知らない秘密の一面があった--。






「おーい静夜ー」


 とある昼休み、静夜の元へと陽太が教科書を借りに来たあの日。


 ユウはそんな2人の様子を見て瞬時に脳内に情景が思い浮かんだ。


(双子のイケメン俳優兄×モブ弟……



 萌えるっ!!)


 彼女は隠れ腐女子であった。


 しかし即座にユウはその妄想をやめようとした。


(いやいやいかん。

 東は遥の想い人なのに、そんな相手にCP欲をぶつけるのは良くない……)


(だけど妄想が止まらないっ!!)


 ユウは妄想をやめようとする事をやめた。





 日曜日、ユウは自室に引き篭もっていた。


 ユウには、特技があった。


 それは、漫画を描く事である。


「いや〜まさか学校にあんな逸材CPがあるとはな〜」


 メガネをかけすっかり漫画家モードのユウは筆をどんどんと走らせた。


「妄想が捗りまくるなーマジで。

 いやしかしこれはまずいか?」


 ユウは描きあげた漫画を見て冷や汗を流す。


「東兄は俳優だから流石に顔変えて描いたけど、東の方はまんま東なんだよな……。

 これ遥が見てもすぐバレるよな?

 今回の新作は遥には見せないでおくか……」

「ユウちゃーん! 遊びに来たよー!」


 突然の遥の来訪に驚いたユウは咄嗟に描いていた漫画を机の引き出しの中に隠して遥の方へと振り向いた。


「おーい遥ー。

 アポ無しで来るなっていつも言ってるだろ?」

「やだなぁユウちゃん、私とユウちゃんの仲じゃんー!


 ところで、今、何描いてたの?」


 遥の質問にユウはやっぱり見られてたか……と内心焦る。


(どうする? 遥には隠し通した方がいいよな? 流石に自分の好きな男がBLの餌食にされてたら流石の遥だって怒るはず……)


「あー、悪いけど、今スランプ中で全然描けてないからさ、今度また描けたら完成したの見せるから」


「えー、そうなんだ、ざんねーん」


 そう言って遥はユウの本棚から漫画を取り出そうとしていた。


(ふう、ひとまず難を逃れた……)


「隙ありっ!!」


 ユウが一息ついた一瞬の隙をついて、遥は引き出しからユウが先程まで描いていた漫画の原稿を見始めた。


「あ! お前! (はか)ったな!?」

「ふふーん、ユウちゃんってば爪が甘いんだから〜!」


 そしてわくわくしながら遥はユウの漫画を読み始め……。


「ユウちゃん……これって」


「あー、流石に気付くよなそりゃあ」


 プルプルと原稿を持つ手が震えている遥の表情は俯いているせいでよく見えなかったが、それでも怒っているに違いないなとユウは推測した。


「ユウちゃん……。


 ひとまず東くんがBLの餌食にされてるのは一旦置いとくとして、この受けの東くんの表情が解釈一致すぎてしんどいぃぃ!!」


 遥は原稿の中の陽太〈がモデルのキャラ〉に攻められて顔を赤く染めている静夜〈がモデルのキャラ〉の表情を見て悶え始めた。


「いや怒らんのかい」


 冷静に突っ込むユウに遥は顔を赤らめながら叫んだ。


「いや怒ってるよもちろん!

 私の想い人がこんな風に犯されるなんて!!

 最高ですありがとうございます!

 最高ついでにこの相手を男じゃなくて私にしてくれませんかね!?」

「悪いけど私ノーマルは専門外なんだ」

「そこをなんとかぁ!!」


 土下座して頼んでくる遥にユウは手をシッシッと返す。


「ただでさえ女なんて描けないのに遥みたいな美少女描くとか無理だわ」

「そんな事言ってたら人間成長出来ないよ!?

 苦手も克服してこそ立派な人間になれるというものだよ!!」

「私別に立派な人間になりたい訳じゃないからな」

「うわーん! ユウちゃんのケチー!

 もう漫画のベタ塗り手伝ってあげないよー!」


 遥の台詞にユウはうっすら青筋を立てながら答える。


「お前、前に締め切りギリギリの漫画のベタ塗り任せたら原稿にインクぶっかけたの、今でも忘れてねーからな?」


「その節は本当に御免なさい。

 申し訳ありませんでした」


 ユウのブチ切れに遥は土下座して謝った。


「それはそうとユウちゃん」

「なんだ?」


「このページの東くんの絵写メってもいい?

 携帯の待ち受けにしたくて……」

「それを待ち受けにするのは構わないけど、もし万が一東に見られたらまずくないか?」


 ユウの言葉に遥はハッとした。


「確かに! じゃあこれは隠れて眺める用の東くんフォルダに入れておこうっと!」

「……待て、東くんフォルダって?」


 遥の言葉にユウが引っかかり質問した。


「え? そんなの勿論、隠し撮りした東くんの写真フォルダだけど?」

「それ犯罪だからな?」


「……てへぺろ⭐︎」


 遥がわざとらしく誤魔化そうとしたところでユウは遥の携帯を奪いとった。


「隙ありっ!!」


「ああっ!!? ユウちゃん待って!!

 それは私の生きる糧なのー!!

 それに卑猥な写真なんて撮ってないよ!

 横顔とか読書してる時の顔とかそんなんばっかりだよ!

 やめてやめて本当お願い何でもするからっ!!」


 遥が携帯を取り戻そうと奮闘するもしかしユウに簡単にいなされてしまった。


「遥……私だって友達相手にこんな事したくはないさ……。

 でもな……。



 犯罪はやっぱり良くない」


 そう言ってユウは遥が盗撮していた静夜の写真を消していった。


「ああああっっ!!

 頑張って盗み撮りした私の宝物がぁっ!!」


「許せ。

 そしてお前はもう少し真っ当に生きろ」


「酷いよユウちゃん……。

 自分だって東くんにBL欲をぶつけてる癖に!!」


 遥の台詞にユウは図星を喰らう。


「うっ……まあ、私はただ東をモデルにしただけだから、写真撮った訳でもないし」

「私だって絵が描けるなら私×東くんの漫画描いてるよ……」


 ぐすぐすと泣く遥を見てユウは先程まで遥が読んでいた漫画の原稿を手に取った。


 そしてそれをゴミ箱に捨てようとした。


「!!?

 な、何してるのユウちゃん!!」


 しかしそれを遥がすかさず阻止した。


「何って……確かにお前の言う通り東を勝手にモデルにして私のCP欲の餌食にしたんだから、捨てようと思って」

「そんな……!? こんなに良く描けてて面白いのに!?」


 遥の言葉にユウは驚いた。


「面白かった……?」

「うん! まあ正直私BLには興味ないけど、ユウちゃんの絵いつも綺麗だし話は面白いなって思うし、それに……漫画の中の東くんがこんなにも可愛らしいのにこれを捨てちゃうなんて勿体無いよ!!」

「いやでも私はお前の宝物としていた盗撮写真を消したんだぞ?

 それなのに自分だけ許されるのは……」


 ユウの言葉に遥はいいやと制止する。


「ユウちゃん……確かに私の盗撮は100%悪い事だよ。都条例にも多分引っかかるよ。


 でもね……。


 憧れは止められねぇんだ!!

 だろ!?」


「!!


 ……遥、分かった」


「ユウちゃん……!」





 --お前と同類にはなりたくないから、やっぱり捨てるわ--


 --ひどいよユウちゃーん!!--



 こうして東双子の人権は図らずも守られましたとさ。

 

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