第15話 君と友達
放課後、図書室にて。
「し、失礼致しまする!」
「……?
(また変な口調になってる……)
葵さん、はいこれ」
遥の言動を不思議に思いつつ静夜はコンビニ袋を遥へと差し出した。
「ありがとうございます!!
これは……のど飴?」
静夜から袋を受け取った遥は中身を確認して目を丸くした。
「一昨日風邪気味だったのかなーって思って、のど飴買ったんだけどさ……その、まあ俺からこんなの渡すのも変かもだけど」「嬉しい!! すっごく嬉しい!!
ありがとう!!」
食い気味に感謝してくる遥に静夜は驚きつつも喜んでもらえた事にほっとする。
「そ、そう? そんなに喜んで貰えてよかったよ」
「家宝にするね!!」
遥はのど飴の入ったコンビニ袋を大事に抱きしめながら宣言した。
「いや食べてくれよ」
静夜は冷静に突っ込む。
「だって初めて東くんから貰ったものだし大切にしたいもん!」
ニマニマと嬉しそうに笑う遥の笑顔に静夜は不覚にもドキッとした。
「それってどういう意味……」
「だから永久保存するね!」
「いや賞味期限までには食べてくれ」
静夜の質問は遥が興奮しすぎた事により遥には届かなかった。
「でも本当に嬉しいんだもん!
私が甘いの好きだから蜂蜜ののど飴にしてくれたんでしょ?」
遥は可愛い蜂の絵が描かれているのど飴の袋の蜂蜜と書かれている部分をニコニコと指差しながら質問する。
「え? ああ、まあ」
「私の事考えてくれたプレゼントだもん、嬉しいに決まってるよ!」
その返事に静夜は納得した。
(ああ、だからこんなにも喜んでるのか……。本当に甘い物が好きなんだな)
(でもさっき俺から貰ったものだからって言ってた様な……いや考えすぎか?)
「あのさ、葵さん」
「何?」
「その、友達でもないやつからこんなプレゼントとか急にされて嫌じゃないの?」
「え!?
まさか……私ってまだ東くんと「友達」という土俵にすら立ててないの!?」
「え?」
静夜は遥の発言に目を丸くした。
「ごめんね東くん……。
私ったら一緒にケーキバイキングまで行ったしお互いの趣味とか共有してるしもう勝手に友達になってるものだとばっかり……!
勝手に友達認定しててごめん!」
両手を合わせて頭を下げて謝ってくる遥に静夜はたじろぎながらも答える。
「あ、いや、こっちこそ葵さんは別に日曜の事仕方なく俺を誘っただけで今後も別に友達なるとか考えてないもんだと思ってて……」
「そりゃあ確かにあんな誘い方したらそうだよね!?
そこは本当の本当にごめんね!?」
更に勢いよく謝ってくる遥に動揺しつつも静夜は言葉を選びながら口を開く。
「えっと、まあむしろ友達だと思ってくれてたのはありがたいというか……その、俺なんかで良ければ友達に……」「え!? 今友達になっていいって言った!?
言質取ったって事でいい!?」
静夜が話し終わる前に遥が言葉を遮って話を進めてきた。
「いやまだそこまで言ってないし、言質取ったってナチュラルに言ってくる人とは友達になり辛い」
そう興奮気味の遥に静夜は引きながら突っ込む。
「は!? 私とした事が失言した!?
ごめんごめん嘘です嘘!
もう2度と言質取ったなんて言いません!
何なら今後一生「言質」という言葉も発しません!」
今度は必死に懇願する遥に対して、あまりにも変わり身の早さに静夜は笑いを堪えながら喋る。
「くくっ……別にそこまで必死にならなくても良いって……!」
「わ、笑った! (可愛いー!!)」
顔を真っ赤にした遥の表情に静夜は自分が笑ったせいで気分を害したと勘違いし謝罪した。
「あ、ごめんまた笑っちゃって……嫌だよな……?」
「全っ然嫌じゃないよ!!
だって東くんの笑った顔超貴重だもん!」
「え? そうだっけ?」
遥に指摘され静夜はきょとんとする。
「そうだよ!
東くん自分で気づいてないの?」
「マジで言われるまで気にした事なかった……。
でも確かにまだ入学したばっかだし、緊張してたのはあるかも……」
静夜の答えに今度は遥がきょとんとする。
「緊張……? 学校ってなんか緊張するものあったっけ……?」
「葵さんって緊張しなさそうだよね」
遥が本気で分からないといった表情をして静夜は色々と察した。
「いやいや、私だって緊張くらいはするよ! 今だって東くんと話してて緊張してるし!」
「え?
……ああ、初めて異性の友達が出来たからって事?」
「え!? ま、まあそんな感じ!」
遥は焦りながらもそう答える。
「いやまあそれはともかく置いといて!
えーと何の話してたっけ?
あ、ところで結局友達として了承はしてくれたんだよね!? ね!?」
「え? ああ、まあ……」
「よっしゃああ!!」
ガッツポーズで狂喜乱舞する遥を横目に静夜はふと考える。
(勢いで友達になっちゃったけど……よくよく考えたら(色々な意味で)ヤバい人と友達になってしまったのでは?)
遥はそんな風に思われているとは露知らずニコニコと満面の笑みを浮かべながら浮かれていた。
(まあ、嬉しそうだし、側から見てる分には面白いし、いっか)
遥の喜ぶ表情を見て、静夜は考えるのをやめて笑った。
「ふふっ」
「あ! また笑った!」
こうして2人は正式に友達になったのであった。




