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第11話 君と保健室

「うーん……先生別に君を疑ってる訳じゃないんだけどね?

 一応念の為に聞くんだけど……


 事後じゃないよね?」


「何っつーこと聞いてんですかっ!?

 断じて違います!!」


 女性の保健教諭に尋ねられた静夜は顔を真っ赤にしながら否定した。


「いやー、葵さんの脈拍や血圧が高かったから念の為に聞いただけよ。ごめんね?


 ところで、葵さんが頭を打ち付けていたのは、男女の仲のもつれとかじゃないわよね?」


「知りませんよ……俺が教室に来た時には頭をガンガン打ち付けていたので……」


 ベッドに横になり頭を冷やされている遥を一瞥しながら静夜は静かに答える。


「クラスでいじめとか問題とか起きてない?」

「……まあ、小さいいざこざくらいはありましたが」


 保健教諭に聞かれて静夜は数日前遥と女子の間に一悶着あった事を思い出した。


(頭を打ちつけていた事と関係あるのか分からないけど、葵さんも葵さんなりに色々悩んでる事とかあったのかもな……。


 まあ、俺が考えたところで答えなんて分かんないけど)


「そう。

 まあ後は葵さんが目を覚ましてから聞けばいい事かもしれないわね」


「あの……葵さん、大丈夫なんですか?」


 静夜が保健教諭におずおずと訊いてみると、保健教諭は笑顔で答えた。


「ええ、ちゃんと意識があるから大丈夫よ。

 だって彼女、寝てるだけだもの」


 その保健教諭の言葉に静夜は耳を疑う。


「--は?

 寝てるだけ?」


 すると遥はもぞもぞと体をくねらせた。


「……ケーキ……ぐへへ……」


 そして寝言を呟きまたすやーと寝てしまった。


「……はぁぁ~」


 そんな遥の様子を見て静夜はへなへなと項垂れた。


「良かった……」


「まあ額は切れやすいからね。

 血が出てびっくりするのも無理ないわ。

 とは言え頭を強く打ってる事に変わりないから、親御さんが迎えに来てくれるまでは寝かせとくわ。

 東くんはもう帰ってもいいわよ。

 あんまり遅くなりすぎると寮の時間もあるでしょ?」


「あ、はい。

 じゃあ失礼します」


 静夜は保健室から出た後、ふーっと一息ついた。


(まあ大事にならなくて良かったけど……。

 すっげー疲れた……)


 それからぐーっと伸びをする。


(そう言えば女子をおんぶするとか、初めてじゃないか……?

 陽太が怪我しておんぶして帰ったのも小学生の時が最後だったよな……)


(つーか、普通に恥ずかしい事したのでは?)


 今更遥を背負った事を思い出し赤面しつつも、静夜は寮へと帰ってきた。


「ただいまー」

「おー、遅かったな。静夜」


 部屋には相部屋の双子の兄、陽太が勉強をしていた。


「ちょっと色々あってさ……。

 あ」

「ん? どした?」


 自分の机に荷物を下ろした時に静夜は自分が握っていたコンビニ袋の存在に改めて気づく。


「(すっかり忘れてた……)

 陽太、これやるよ」


 静夜はコンビニ袋を陽太の方へと渡そうと手を伸ばした。


「ん? 何それ?」

「のど飴」

「何で急にのど飴?」


 陽太はコンビニ袋をしげしげと眺めながら静夜に質問する。


「クラスに体調悪そうな子が居たから買ったんだけど、渡しそびれたし、別に渡す程の仲でもないなと思ってさ。

 だから陽太にやるよ」


 静夜の返答を聞き陽太はコンビニ袋を持った静夜の手を押し返した。


「俺はいらない。

 ちゃんとその子に渡しなよ」

「……うーん、でも渡す機会ないかもだし」

「同じクラスなら幾らでも渡す機会あるだろ。

 それに、のど飴買ってあげようと思ってるくらいには気にかけてるんだろ?

 その子のこと」


 陽太に問われ静夜は考えながら口を開く。


「うーん、気にかけてるっつーか……変な行動起こしてて気にはなるっつーか……」

「変な行動? 変な子なの?」

「多分……?」

「多分って何だそれ?

 つーか、もしかして女の子?」


 陽太に聞かれ静夜はドキリとする。

 そんな静夜の表情を読み取り陽太はニヤリと笑った。


「うわ図星じゃんマジか!

 とうとう静夜にも春がきたか!」

「違っ……!

 気になるってそういう意味じゃなくて!」

「でも女の子なのは否定しないんだろー?」

「ま、まあそうだけど」

「なら尚更俺はそののど飴は受け取れないな!

 ちゃーんとその女の子に渡せよ! な!」


「……はぁ。分かったよ」


 ニヤついている陽太がもうのど飴を受け取ってくれそうにないと悟り、静夜はコンビニ袋を鞄の中にしまった。


「俺の事気にせず静夜は恋愛も楽しめよ」


 そう言って陽太は笑顔で静夜の頭をバシッと叩いた。


「痛っ! うっせーよ」


 そう言いながらケラケラ笑う陽太の背中を見て、静夜は申し訳なさそうに俯いた。


「……陽太は、さ」「俺は今のところ仕事が恋人だからさ~。

 恋愛してる暇ないんだわ!

 いや~お仕事頑張ってる俺偉いよな?

 てな訳で成績低くても仕方ないという事で、もう勉強サボってもいいよな~?」


 静夜の声を遮る様に陽太は明るくまくし立てながら答える。


「いや、学生なんだから勉強も頑張れよ」

「そんじゃ、ここ聞いてもいい?」


 静夜が力なく突っ込むと陽太は教科書を持ってページを指差しながら尋ねて来た。


「はいはい。分かったよ。

(こいつ、わざと話題逸らしやがって……。

 まあいいか)」


 こうして静夜は陽太に勉強を教えるのであった。


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