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134 《SIDE:鈴木真白》メカクレぜつゆる!(許さないとは言っていない)

 真白はその日、激怒した。

 かの邪知暴虐のメカクレを除かねばならぬと決意した。


 ハルカの事務所のオフィスが開かれた記念の、とてもめでたい日のはずだった。


 事の起こりは、真白がハルカに対して

「最近頑張りすぎですよ。ハルカくん。あまり無理せず、疲れたら休むんですよ? お姉ちゃんはハルカくんが心配です」


 そう伝えたことだった。


 ハルカは「大丈夫大丈夫。こんなの天国だよ」とどこか遠くを見つめるような目をして、生気のない声で言っていた。

「ちゃんと夜は五時間も寝ているし、一日二食は食べているし。仕事や生存以外のことを考える時間もあるんだ」

 その眼には光がなく、余計に心配になってしまった。


「ほんとに、ほんとに、無理しちゃだめですよ。身体が大事ですからね」


「本当に大丈夫だよ。ありがとうな、真白さん」


「なら、いいんですけど……」


「ああ、そうだ。ちょっと中村さんのところに行ってくる。頼むことがあるんだ」


「わかりました……」


 そうはいうものの、心配だった。

 一日二食でちゃんと栄養はとれているのか、もっと寝たほうがいいんじゃないのか。具合は悪くしてないか、さみしい思いはしていないか。

 ――ハルきゅんには心身ともに健康でいてもらいたいですからね。


 真白はそう願った。


 そこに、前髪で目の隠れた少女が現れた。


「……は、ハルカ様は神です。神に疲れはありません。自称お姉ちゃんとやらが心配する必要などどこにもないのです」


 そんなことを言い出す少女を真白はいぶかしむ。


「自称!?」

 そう言われると確かにその通りなので、何も言い返せない。


「あなたは?」


「……わ、わ、わたしは、鳶折陰(とびおりかげ)。ハルカ様の、し、使徒でう……いたっ。舌かんじゃった……」

 その少女、鳶折陰はそんなことをのたまった。


「神? 何を言ってるんですか? それに、神だろうと人間だろうと、誰だって限界はあるんです。ハルカくんだって例外じゃありません。それに、お姉ちゃんが心配するのは当然のことです」


 むん、と胸を張る。


 するとメカクレ少女陰が、腹立たしいことに『自分のほうがハルカのことをわかっているんですよ』と気弱そうな声で、しかし確信を持っているような声で言う。


「……は、ハルカ様は、普通の人間とは違います。ハルカ様は特別なんです。だから、私たちが心配することなんて何もないのです。それに神に姉など、い、いらないのです。神には、誰も並び立てないのです……」


「むっ……。わたしは――」


 この子、なんとなく、気に食わないですね……。

 いえ、そんなに簡単に人のことを嫌ってはいけませんね。


「ま、真白さん、ですよね? ちゃ、チャンネル登録して動画を見てます」


 意外といい人かもしれない。


「ほ? えっ、にゃ、にゃぬ? そ、それは、ありがとうございます」

 真白は深々と頭を下げた。


 すると陰も深くお辞儀をする。

「……え、えっと、その、えと、ご丁寧にありがとうございます……」


 それなのに、年下の女の子が看過できないことを言ったのだ。


 長めの前髪で目を隠した少女は真白に向かって言ったのだ。


「……か、神であらせられるハルカ様に、自称お姉ちゃんなど、ふ、不要です」


「なっ! あ、あとから出てきたくせに、なんてことを……!」


 真白はふだんあまり怒ることはない。

 というかずっと自室にこもっていたため、怒るようなこともなかったわけだが。

 でも、ここは引くわけにはいかなかった。


「……は、ハルカ様は世界で唯一至高のお方ですが、その自称お姉さまはいかほどでしょうか。動画の通り、食べ物を食べて、『おいしい~』とか遊興施設にいって『たのしい~~!』とか言っていれば、い、いいのです」


「なんたる! なんたる~!! なんたることを言うのですか!」


 真白は激怒した。

 怒りのあまりに、陰のやわらかそうなほっぺたを引っ張ってやらねばと決意した。


「ふぬ~~!!」

 そう言って両手で陰に向かって両側から手を伸ばす。


 しかし――それは阻止された。


 たったの一手で真白の左右ほっぺたひっぱり攻撃は潰されてしまう。


 陰が片手を伸ばし、真白の額を押さえたのだ。


 手が、届かない。


「あああ! あああああ!」

 真白がいかに手を伸ばそうが、頭を押さえられては届きようがない。


 陰は小柄な少女ではあるものの、真白はさらに伸びしろしかない。


 そのとき、信じられないものを見た。


 陰が笑ったのだ。


「……ふっ」


 まるで小ばかにするように笑ったのだ!


「あああ! もう許せません! 風の精霊さん……! 顔を隠している髪を、まきあげちゃってください!」


 真白は風の下級精霊を召喚し、陰の前髪をぶわーーーーってしてやった。

 陰の隠された顔があらわになる。


「あ、かわいいお顔」


 真白がそう呟くと、陰は「ひゃぁぁ」と言ってしゃがみこんだ。

 手で顔を覆っている。


「ほっほー……」

 にやにや笑いながら陰の顔を覗き込む。


「……ああ、ああ。み、見ないで。うう……」

 陰は顔を首筋まで赤くして恥ずかしがっている。


 真白もしゃがんで顔を覗き込むと、陰は身をのけぞらせて逃げようとする。


「……うう」


「かわいいお顔してますねえ……。おめめもぱっちりじゃないですか」


「……ああ、ああ。み、みないでぇ……」

 陰は消え入りそうな声で言う。


 あ――なんか、楽しい。


 真白は愉悦を覚えた。

 自室にこもってばかりでは知ることのできない気持ちだった。


「よく見れば、顎もいいラインですね。陰ちゃん」


「わぁ!」

 陰が今度は顎を隠す。


「お~。今度はおめめが丸見えですよ~」


「あぁ、あぁぁ……」


 そこにハルカが戻ってくる。

「……何してるんだ? 二人とも」

 訝しむような声だ。


「かわいい後輩の歓迎をしていました。はーい。よちよち」

 真白はそう言って、しゃがみながらおかしな動きをする陰の頭を撫でた。


 ――あ、髪もさらさら。手触りがいいですね。



 その日、真白は完全に格付けを終えた気持ちで、家に帰ることができた。






 家に帰るといつものように、メインパソコンで動画をレンダリングしながらサブのパソコンでネットサーフィンをし始める。


「ふふふ。このハルきゅん切り抜き動画はいいですね。八十二点、ですね」


 ――やはりハルきゅんがほめられているといい気分ですね。

 などと様々なハルカ関連の動画をみていると、気になる動画を見つけた。


「ん……。これも見てみますか」

ここまで読んでくださってありがとうございます!

今週はあと一回更新できたらいいな……!


ちょっと忙しくなってしまって、更新がちょっと不定期です。

週2は更新できたらいいなと思って、書いてます!

現状週1くらいになってますが……2にしたい!



あとコメント全部読んでます!

応援ありがとうございます!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 頑張って!
[良い点] ましろニウム的なナニかが補充できました… 多謝… [一言] >「ま、真白さん、ですよね? ちゃ、チャンネル登録して動画を見てます」 意外といい人かもしれない。 チョロい… 即落ちやないか…
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