表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/31

番外編①

時間軸▶︎▶︎▶︎[王宮編:9.婚約者はレティシア・ローレン]後となっています

-------------------------------------------------------


 魔力暴走事件をきっかけに、指導係、侍女、侍従が、第一王子妃候補(レティシア・ローレン)に対する謀略を図っていたことが、公となった。


 それに、レティシアは、現段階で習得すべきとされている内容以上に、知識、作法などを心得ていた。従って、カリキュラム、スケジュールなど、妃教育に関わる すべてを見直さなければならなかった。


「他に任せらんねぇしな…、」


 コンコンッ


 第一王子室で、計画書を作成していると、扉が叩かれた。


「ルーク・ローレン公爵子息様がいらっしゃっています」

「…ルーク、が?」


 “ 失礼致します ”と告げられて、扉が開いた。


「訪問に際して、事前にご連絡せず、申し訳ありません。早急に、殿下にご確認いただきたい書類がございまして」

「構いませんよ」


 隣に配置されている長椅子(ソファ)に促して、侍女に紅茶を頼む。ハーブティーに入れられたカモミールが、ふわりと香った。


 レティシア 同様、艶やかな黒髪を揺らす青年は、洗練された所作で、紅茶を口にする。三歳差とは思えない程に、大人びて見えた。


「それで…、書類というのは」


 カップをソーサーに戻して、机に置く。ゴソゴソ、と鞄に入れていた書類を取り出した。



 おい、待て……多くないか



 俺にとっては、“ 手渡される紙類 = 公務 ”だ。提出期日に追われるであろう姿に、ゾッとした。


「これは…?」

「弟に関する取扱説明書になります」

「…………は、?」


 ドサッ、と分厚い紙束が、机に置かれ、口にされた内容に、思考が停止する。

 文字列が、脳内を無機質に横切っていく。さながら、ショート寸前になったロボットだ。


【 取扱説明書 】

 ・・・ 機器、製品に関する操作方法などを説明する冊子など。製品取扱前、又は使用中に、操作方法、エラー対処法を調べる為に、使用が想定された冊子など。


 人間に使う言葉じゃねぇ…よな、


「弟と婚姻するに際して、必要かと思いまして」



 “ 色々と…ありましたから ”



 そう、呟いた彼は、視線を落とした。


 伏せられた長い睫毛に、時折 レモンクォーツを彷彿とさせる金眼が透けて見えた。

 その優艶さに、子息令嬢が目を奪われ、色香に()てられていることに、納得がいく。


 伊達に、乙女ゲームで“ ミステリアス ”担当を担っている訳じゃない、ってことか


 何せ、俺は婚約者(レティシア)にしか興味がない為、ルークを含む 夜会で()と称されている子息令嬢に対して、整った容姿とは思うが、惹かれはしない。要は、()()()()()意味で、興味がない。


 それに、ローレン公爵家と関わる際は、現公爵と対峙することが多い為、ルークと話すことは、滅多にない。多少、挨拶を交わす程度だ。



 視線を、差し出された紙束に戻す。数枚が、冊子に纏められていた。


 ざっと十冊…ってとこか


““レティシア・ローレン[齢 六歳]

  ローレン公爵家 次男

  闇属性 所有

   ・

 鶏肉を使ったフリカッセが 好物

 強がっている際には、下唇を噛む癖がある””


 

 一冊 手に取って、パラパラと確認すれば、氏名、出生といった基礎情報に次いで、好物、思考傾向、癖など、長年を共にしなければ、分からないような内容が記載されていた。


 乙女ゲームでは、ルークは、弟レティシアを(いみ)嫌っていた。


 公爵家という権力を振い、第一王子に執着し続ける弟に、“ (いず)れ 問題を起こす ”と考え、遠ざけていた。


 嫡男として、公爵家を守る為に、彼は弟を見捨てた。


「弟は、心優しい性格故に、傷付きやすいです。自己嫌悪に陥り、精神を不安定にすることだって多いです」


 だが、現実は 正反対だった。ルークは、これから先、レティシアが傷付くことを憂いている。


「ですが…、」


 ふっ、と笑った後、視線を戻した。


「弟は、殿下と出会って、強くなりました。それ故…貴方を失えば、弟は……」


 声が、(かす)かに震えている。先に続く言葉は、容易に想像がついた。



 “ 弟は…()()()()()()



 それを言えば、必然的に、俺を縛り付けることになる。王家に仕える臣下として、躊躇(ためら)った。


「俺は、レティシアを離しませんよ」


 その言葉に、ハッと目を見開いた。


「弟を、宜しくお願いします」


 そう、無邪気に笑った。目尻に浮かべた涙が、弟を思っていることを証明付けている。


「必ず 幸せにすると、約束します」


 刹那、彼の胸元が、照明を反射させ、光った。


 公爵夫妻から贈られたであろう、レモンクォーツが装飾されたネックレス。



 石言葉は……、“ 明るい未来 ”



読んで頂き、ありがとうございます

良ければ、評価・ブックマーク等を宜しくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ