9話
翌日11月28日。
「昨日のアイツを何としてもメンバーにするぞー!」
美佳はやる気満々だ。
「そうね。あの人は押せばイけるタイプの子だわ。」
「そんなに無理やり誘わなくても…」
「何言ってるの恵!30日までには5人メンバー集めてないといけないんだよ!?下手に人や場所を変えたりするより、目の前のオチそうな人を口説いた方が確率高いよ!」
「凛はちょっと口に気を付けた方がいいぞ…まあ確かに、凛の言ってることもあながち間違っちゃいないけどね。」
まだ朝の6時だというのにとても元気だ。
そこへ昨日現れた人物が走って来た。服装から、早朝トレーニングをしている様子だ。
「あー!」
「あ!昨日の!」
「どうも…」
「昨日はどうして逃げたりしたの?」
凛は不思議そうに言った。
「その…昨日はごめんなさい。パニックになってしまって…」
「ううん、アタシこそ怒鳴ったりしてごめん。」
「あの後も考えたんですけど、やっぱりアイドルにはなれません。ごめんなさい。」
そう言うと去ってしまおうとする彼女。
「ちょ、ちょっと待ってください!今日これから暇ですか?良かったらもっとお話しませんか?」
凛は止めるのに必死だった。
「んー、トレーニングが終わったら特に用事は無いですけど…」
「じゃあその後でいいですから!」
「まあ、話するだけなら…」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
(こいつはやはり押せばイける)
と内心キメ顔をする凛。
「あ、自己紹介しますね!私は上空城凛です!凛って呼んで下さい!」
「こっちのちっこいのが鈴木美佳!」
「ちっこい言うな!…美佳でいいよ。」
「で、あっちのデッカイのが時任恵!」
「えっ?…あの…よろしくお願いします…」
「で、あなたのお名前は?」
「舘楓です。」
「舘楓…珍しい名前ね。じゃあ…楓って呼ぶね!よろしく!」
「…よろしく。」
照れる表情をする楓。
凛達は楓と連絡先を交換した。
「じゃあ時間になったら連絡してね。」
「分かりました。」
そして立ち去る楓。
「ナイス凛!これはマジであるぞ!あるぞ!!」
「へっへーん、どんなもんだい!」
天狗になる凛。
「と…とりあえず場所移動…しない?」
「それもそうだな、さすがに日曜に学校前ってのもな。」
「あっ、私は楓と約束あるから2人はメンバー集め頑張ってね!」
「何?アタシ達も一緒に行くんじゃねえのか?」
「二手に別れた方がメンバー集めの効率がいいでしょ?期限も間近だし、こっちは私が何とか説得してみせるよ。」
「そういう事なら仕方ないか。分かったよ。」
「うう…何の役に立たなくて…ごめんなさい。」
「だ…大丈夫だよ!恵は大事なメンバーなんだから、いてくれるだけで嬉しいよ!」
「そうだぞ!変に自分を責めたりするなよ!ちょっとでもそんな考えが起きたらすぐに言えよ!何回でもお前を必要としてやるからな!」
「美佳…ありがとう。」
「かっ…勘違いすんな!別にお前の為じゃないからな!アタシの為なんだからな!」
恵は嬉しくて涙が出た。
(美佳ってこんなに人想いだったのね。見直したわ。)
凛はそう思った。
「さーて!私は楓の所に向かおうかな!」
「お、おう!そっちは頼んだぞ!」
「よろしくね…凛。」
「まかせときんさい!」
凛と美佳恵チームはここで別れた。