2話
同日帰路へつく上空城凛。
「ワクワクしてついて行った私がバカだった!」
ぷんぷんと独り言を言いながら歩いていると、後ろから人が走ってきた。
「まって!」
息を切らし、困った表情だ。
「えっと…鈴木さん…でしたっけ?」
息を整える美佳。
「うん…あのさ…アンタん家泊めてくんない?」
反応に困る上空城凛。
「うっ…」
急に泣きだす美佳。それに驚いた上空城凛。
「えっ?なになに?どうしたの?」
「アタシあいつに親の借金肩代わりしてもらってて…でも…」
「あわわわ、こんなところで話す事じゃないからね!ね!とりあえず私の家来ていいから!」
そういうと美佳は頷き、上空城凛宅へ向かう。
そこは普通の賃貸アパートだ。
「ほっとミルク飲む?」
「うん…砂糖入で。」
上空城凛はえっ?砂糖入れるの?という表情をした。
「っ…」
また泣きそうになる美佳。
「あーっわかった!わかった入れるよ!ちょっと待ってね!」
「…ありがとう」
美佳は落ち着きを取り戻し話し始めた。
「親の借金どうこうって話は嘘。アタシあいつん家に住み込みでアイドル?やっててさ、ちょっとしんどくて出ていったはいいものの行くあても無くて、そしたらアンタが通りかかったから話かけたの。」
上空城凛は内心で(嘘なんかい!)とツッコミを入れた。
「確かにそれは同情する。同情せざるを得ない。鈴木さん、あの事務所辞めた方が良くない?きっと何か裏があるよ…」
心配そうに言う。しかし美佳は目を背ける。
「嫌。アタシは絶対NO.1アイドルグループになりたいんだ。」
「アイドルグループ?」
「そう。1人では勝てない事くらいアタシは解ってる。でも他に助け合える人が入れば、絶対ナンバーワンアイドルよりすごい事になると思うんだ。」
「そんなに真剣だったのね…でも泣いてるのは本当に見えたけど…」
「あー…それはまた後で話すよ。」
突然目を逸らしよそよそしくなる美佳。
「それよりさ!グループ名決めない?芸名でやるか本名でやるかとか!」
アイドル話をすると美佳はグイグイ喋る。
「えっ?アタシ入らないよ?」
キョトンとしてめを見つめる2人。
「えーーっ!なんで!?しろちんがアレだから?それとも事務所がボロ屋だから?」
それ以外あんのかい!と言いそうになるが我慢する上空城凛。
「やっぱりアタシにはアイドルなんて向いてないかなーって思っただけだよ。」
優しく言う。
「えーッ?そんな事ないよ!めっちゃ可愛いし!胸デカいし!衣装という衣装似合いそうだし!…アタシに無いもの全部持ってるじゃん……」
膝を抱え込み両手の人差し指をつんつんしながら落ち込む美佳。
「え?そうかなー、えっへん!」
「チョロいな」
小声で出てしまった美佳。
「えっ?」
「い…いいキャラしてるよって言ったの!」
なんとか誤魔化す美佳。
(良かった…今夜の宿が無くなる所だった。)
「な〜んだ。」
上空城凛はご機嫌である。
「あ、布団は1つしかないから一緒に入って寝ることになるけど大丈夫?」
「あ、床で寝るから良いよ。すきま風ないだけマシだし。」
「どんな寝室で寝てるの?」
笑いながら言う上空城凛。
「厚さ3cmくらいの敷布団に毛布と布団1枚。」
10秒ほど時間が経ち…
「それだけ?暖房とかクーラー…扇風機とかは?」
「扇風機はあるけど他は何も無いよ。」
「そんな所でよく寝られたね…なんでそれでもあそこでアイドルやろうと思ってるの?」
「アタシはしろちんの才能を買ってるんだ。今はあいつが人探しとバイト頑張ってやってるんだ。すごくない?1人でだよ。それでアタシに生活費…もとい給料も出して。まあたったの3万円だけどね。タダで住まわせてくれてるしご飯は給料とは別で3食でるし意外と悪くないんだ。それに…」
「フフッ」
「なんで笑うんだよ!」
「だって…そんなに白金さんのこと好き好きアピールされても…」
「はぁっ?…好きじゃねーし!ちげーし!どこをどうしたらそうなんだよ!ちげーからな!」
美佳は赤面し、枕を投げた。
「今夜はもう遅いし寝よ?」
「おい!勝手に話決めつけんなよ!」