18話
翌日朝10時。
「しろちんおはよー!」
美佳は何事も無かったかの如く元気に挨拶した。
「待っていたぞ。これを見たまえ。」
星空がそう言うと1枚のチラシを掲げた。
『アイドルになりたい方大募集!!!今なら面接のみ、履歴書不要でアイドルになれるチャンス!!!こんな機会もう来ないかも!?そこのアナタ!気軽にどうぞ!!!』
と書かれている。カラフルでド派手で素人が作ったであろう感満載である。絵も手書きで落書きレベルだ。
「な…なんだこれ…」
美佳は頭を抱えた。
「こ、これはメンバー募集の為に俺が制作したチラシ…だ。」
星空は自信なさげに言った。
「そんな事分かってるよ!書いてある事は100歩譲ってまあいいよ、でもこのチラシ、クオリティ低すぎだろ!もっと他に無かったのかよー…」
美佳は(コイツ本当にプロデューサー出来るのか?)と不安になった。
「ふっ。やれやれ…そんな些細なことで怒るとは…」
「些細じゃねえ!」
美佳は星空を蹴った。
「痛っ!蹴った、やだこの子蹴ったわよ!おまわりさーん!ここでーす!ここここ!」
「はぁー。もういいよ。」
美佳は諦めて部屋に戻ろうとする。
「すみませんでしたふざけすぎました。」
星空は土下座した。
「最初から真面目にやれ。」
美佳は土下座した星空にビシッと指を指した。
「ごめんなさい。」
星空は深々と謝った。
「そのー、見ての通りチラシ制作が上手くいかんので…その…助力をと思ってだな…?」
星空はキョドキョドしながら言った。
「わかったよ。チラシはなんとかするよ。」
美佳は呆れつつも頭をかきながら言った。
「いいのか!?助かる!」
星空は明らかに顔色が良くなった。
「ま…まあ?なにもしないのも気が引けるしな。」
目を背け、照れ気味に言う美佳。
「ありがとう。なら俺はスポンサーを取ってくる。」
「いいって…ってはー!?スポンサー!?」
突然星空が無茶な事を言い出し驚く美佳。
「ああ。活動にも資金が必要だからな。」
「いやいや、無理に決まってるだろ。普通に考えてこんな超弱小事務所に投資する人間いる訳ないから。」
当然の如く美佳は手を振り全否定した。
「それを可能にするのが俺の仕事だ。まあ期待して待っていてくれたまえ。はーっはっはっは!」
星空は高笑いしながら走って出かけてしまった。
「あいつ…マジでやばいな…」
心の底から思う美佳であった。
そして時間が過ぎ去り、13時頃。
「でーきたー。我ながら上出来っ!」
チラシを作り終え背伸びをする美佳。そして自画自賛で鼻息を吹く。
それとほぼ同時に星空が帰宅した。
「たっだいま〜!」
大声で挨拶した星空の声は美佳の部屋まで届いた。
「ん?もう帰ってきたのか。」
美佳は当然スポンサーなどつくはずもなく、諦めて帰ってきたと思っている。
だが星空にはあの父親がいる。
美佳は星空の部屋へチラシを持って行った。
「おーい、この美佳様がチラシを作ってやったぞー。」
美佳は冗談ぽく言った。
「あー、ご苦労。…フムフム…おお!これは実に素晴らしいチラシではないか!これならスポンサー様もきっと喜んでくれる事だろう!」
社長椅子に座りやたらと演技かましい星空。
「え?スポンサー?」
美佳はキョトンとした。
「この私の辞書に不可能の文字は無いっ!」
星空は調子にのる。
「はいはい。虚言も現実に響かない程度に納めましょうねー。」
美佳は本当にスポンサーを取ってきたと思っていないので呆れている。
「ならばこの契約書を見るがいい!」
そう言うと星空は契約書を美佳に突き出した。
それは正真正銘、本物の契約書である。
「ええーっ!?……ちょっとまって、頭が…追いつかない…」
美佳は不意をつかれ思考停止した。
「俺だって真面目にやればこのくらい朝飯前さ。言っただろ。お前の人生、最高にしてやるって。」
星空はとんだペテン師だ。だがそれもバレずに最後まで貫けるなら良い…のだろうか。
「はっ…いや…でも…うん。流石に見直したぞ。」
格好つける星空に何故か胸がキュッとした美佳。
しかし、スポンサーは実の親という情けない事情だ。それは弱みになり、威厳を維持出来ない為、星空が美佳に伝えることは無かった。
「どうだっ!凄いだろうっ!」
「あっ…ああ!これは凄いよしろちん!」
美佳は初めて大きな仕事を成した星空を認め、見直した。そして無意識にあだ名で呼んでいた。
「しろちん!?」
星空は急に呼ばれたあだ名に驚く。
「べっ…べつにあだ名で呼んだっていいだろ…」
美佳は照れ、そっぽをむいた。
「それでは威厳がなかろうが…」
星空は威厳を保てなくなりそうで焦る。
「い…いーの!しろちんに威厳なんて無いの!バカ!」
照れ隠しで腕を組み後ろを向いてしまった美佳。
「そんなぁ…」
しゅんとする星空。
「ま…まあ?あだ名で呼ぶにふさわしい立場まで昇格したんだからっ…ありがたくおもっ…おも…思えよなああぁぁぁぁ!」
美佳は恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして部屋へ走り去った。
「ええぇ…」
星空は困惑した。
部屋へ戻り布団を抱え寝そべる美佳。
(アタシ…なんでこんなにドキドキしてるんだ…?もしかして…いいや!それは絶対無い!恥ずかしいだけだ。びっくりしてるだけだ。そうだ。落ち着こう。)
美佳は悶々と思考を繰り広げていた。




