16話
時は半年程遡り、6月13日。
星空と美佳が初めて出会った日。
「あ〜。暇な1日の始まりだぁ〜。」
昼過ぎ。寝起きの星空。
「今日も適当に路上をふらつくか...」
支度を済ませて出かける星空。
「ねえ!そこの君!可愛いね!良かったらアイドルやってみないか?」
「えっ?アタシ?」
キョロキョロ周りを見渡す星空。
「ふーむ。少なくとも辺りに君以外の可愛い人がいる様には...見えないなぁ。」
「そ、そうか...?あはは...」
苦笑いする美佳。
「ま、とりあえずお茶でもしながらゆっくり話そうじゃあないか。すぐそこにカフェが...」
と話していたその時。
「このバカ息子がっ!」
突然、男が星空に殴りかかって来た。
その男は星空の父、夜空であった。
「ちょっ、うわぁ!」
ボコッ!
夜空が星空の顔を殴った。
「えっ...何?バカ息子?」
美佳は目の前の出来事に呆然としている。
「貴様、スカウトを名目にナンパなど何を考えている!」
夜空がそういうと馬乗りになり、また殴ろうとした。
「えっ!?辞めなよ!」
美佳が咄嗟に止めに入る。
「嬢ちゃん、息子が迷惑かけてすまなかったね。今、懲らしめるからちょっと離れてな。」
「えっと...」
そう言われ戸惑う美佳。
「あ!アタシ...アイドルになりたいんだ!」
この男がスカウトだのナンパだの言っていたのを思い出し、適当な言い訳をした。
(えっ?この子は何を...)
美佳はただ見ていられなくて止めたのだが、星空はなぜ助けてくれたのか分からない。
「なに?本当か!?」
その答えに食い気味になる夜空。
「あ...ああ!だからその人離してやってよ!」
冷静さを取り戻す夜空。
「どうやら早合点をしてしまっていたようだ。すまなかった。星空、それとお嬢ちゃん。」
「ま...全く。いきなりなんだっていうんだ。」
星空はいかにも自分が正しかったかのような振る舞いをした。
「本当にすまなかった。話があったんだが...また今度が良さそうだな...また後日連絡する。」
そう言うと夜空はどこかへ行ってしまった。
「えっと...」
美佳は困っている。
「さっきは本当に助かった!ありがとう!君は仏様だ!神様だ!いや女神様だ!」
突然美佳に媚びを売り始めた星空。
「べ...別に...」
美佳は少し照れたのでそっぽ向いた。
「所でアイドルをやりたいと言うのは本当なのだろうか?」
急にスイッチが切り替わる星空。
「えっ?あ...ああ...」
(本当は興味無いけど...まあやってみてもいいかな。)と内心思う美佳。
「本当か!?良かったら我が白金星空学園のメンバーとなってはくれないか!?」
「まあ...別にいいよ。」
美佳はすんなり承諾した。
「ってそんなにあっさり...ゴホン。これからよろしく頼むよ。我が名は白金星空だ。君の名は?」
「みか...鈴木美佳。」
「ハーッハッハ!そうか。良い名だ美佳よ。今日は記念すべき白金星空学園メンバー第1号の誕生だ。今夜は...宴だぁ!レッツ、パーリィ!」
ようやく1人目のメンバーを迎える事ができ、テンションがぶち上がった星空。
「って、えっ!?1人目!?ちょっとどういう事!?」
美佳はメンバーの少なさに困惑した。
「ああ、まだメンバーが集まって無いんだ。あと4人集めるのも業務の内だ。よろしくな!」
「ふ...ふざけんなー!」
美佳は怒り叫んだ。
「そんな事よりこれから宴の買い出しだ。我が事務所にて盛大な宴会を開催する。」
「そんな事だと!?...はぁ。アタシやっぱり辞めるわ...じゃあな。」
そう言うと星空から離れる美佳。
「えっ...」
突然の事に焦る星空。
「ま...待って!ななな何か嫌な事あった?な...なんでも相談してね?ねっ?」
震えた声で説得を試みる星空。
「自分の胸に聞いてみな!」
怒り叫ぶ美佳。
「ま、待って!3食宿付きお小遣いなんと月3万円!!」
それを聞きピタリと立ち止まる美佳。
「...アタシはめんどくさい事やらない。おーけー?」
「お、おーけーおーけー!あっ...買い出し行ってくる...いや来ますのでどうかこちらの椅子に座って待ってて下さい。ではっ!」
すると颯爽と行ってしまった。
「はぁ...アタシ何やってんだろ...」
美佳はうつむきながら言った。
1時間が経ち...
「ただいま戻りました!」
両手に買い物袋を持ち、戻った星空。
「遅い!」
星空が遅くて怒る美佳。
「す...すいません!でも事務所はここから徒歩10分です!」
「遠い!今日はもう疲れた!おんぶしろ!」
美佳は調子に乗った。
「そんなぁ...」
白金はやるしかなかった。
「ぐぬぬ...ぜぇ...はぁ...ぐっ...つ...着きました...」
美佳を降ろし、満身創痍で道に倒れ込む星空。
「うむ、ご苦労!あっはっは!」
星空を思い通りに出来た事に満足し、手を腰に当て仁王立ちしながら笑う美佳。
「こ...ここが...我が事務所です...」
自信無さげな星空。
「え?ここか?この先じゃなくて?」
明らかにボロ屋の前に降ろされた美佳。
「はい...ここです。」
とても従順になっていた理由が分かってしまった美佳。
「あ...アレだろ?外は趣きってやつで中に入ったら...」
と言い美佳は玄関を開けた。
「あ...」
美佳は眉をピクピクさせた。
そこは紛れもなくボロ屋だ。
全ての部屋を見に行った。
だがボロ屋だ。
星空に何度もここじゃないよな?と問いかけた。
だがボロ屋だ。
3食宿付きお小遣い月3万円...
だが...ボロ屋だ。
美佳は川のような涙を流した。そして色々諦めた。
「この部屋1番まともだからアタシが使うからな。」
「はい。」
「アタシがいない時勝手に入んなよな。」
「もちろんです。」
「...風呂覗くなよ!!」
「そんな事したら捕まってしまうがな...」
「何!?」
「いえ!覗きません!決して!」
「良し。ハウス。」
「わんわん!」
白金は自分の部屋へ行った。
「ホント何やってんだろ...アタシ...」
自分に問いかけたがその時その答えは美佳の中には無かった。




