『100パーセントモテ体質』
ほどよく暖かい春の風に吹かれ、日傘をさして桜並木を歩いて進む。今日は、俺がこれから通うことになる『ロマンス・ハイスクール』の入学式がある。同じく、その高校の入学式を迎えるであろう道行く人々は、男女関係なく俺に見惚れている。
おいおい、そんなに俺ばっかり見ていたら、桜の木にでも衝突してしまうぞ……って、言わんこっちゃない。
だが、それも仕方ないこと。何故なら俺には、"100パーセントモテ体質"という天賦の才能が備わっているから。
100パーセントモテ体質──それは全身の肌と毛が真っ白であり且つ、瞳が透明であるという色素の薄さから成るもの。だから俺は常日頃から日傘をさしている。日差しにめっぽう弱いからだ。
そんな俺は、まさしく美の権化。だが、コンプレックスも存在する。低身長でフツメン。そう、特別高身長という訳でもなければ、特別イケメンという訳でもない。
しかしその、欠点と美点が上手く噛み合ったことで俺は、意図せず沢山の人々を惹きつけてしまう。でも実は、恋愛に興味がない。チヤホヤされる事は好きだが、俺を求める女のがめつさが苦手だ。
だから俺は今まで、一度も告白を受け入れた事がない。その度、相手の気持ちを踏みにじっている。モテすぎる男は辛いんだ。
ロマンス・ハイスクールの校門前にて、新入生たちが俺に道を開けるようにして並んでいる。※全員他人。おいおい、俺はサイレン鳴らす救急車ですかって。入学式なんだから全員が主役のはずだろう。
でも折角だし、有難く花道を歩ませて貰おう。
ん、なんだろう……気の強そうな女が、花道の途中で立ち塞がり、こちらをじっと見ている。こいつから感じるものは、よくある恋の熱視線とは違ってどこか執念深い。気づかず恨みでも買ったか俺?
「"等々力英真"くん、私の事を覚えているかしら!」
ああ、なるほど……また過去に振った女の一人か。覚えてるかと聞かれても困るなぁ。申し訳ないけど一方的に告られて、いちいち覚えているわけがない。
「ごめんだけど俺は、君を覚えていない。入学式初日から遅刻はしたくないんだ。よかったらどいて欲しい」
「最っ低。彼女のことを覚えていないどころか、どけなんて。"三廻部沙姫"、それが私の名前! 現在進行形であなたと付き合っている唯一の女よ!」
────────え?