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悲しい恋愛  作者: 火華舞
9/12

第9夜

今回は、カズが動けないので香澄が目線です。

香澄の本心、未練が今作で明らかになります。

本編が少し長くなりましたけど、お楽しみください。

「…カズ…」カズは病院のベッドで静かに寝息をたてている。

「このまま目を覚まさなかったら…」

そう思うと不安で、しょうが無い

カズは丸一日眠っている。

「何で…何でカズが…」

ウチはカズの横に居てる事しか出来ない。ガチャン

カズの母さんが来た。

昨日に病院でカズが倒れた後に病院が調べて連絡をした後に両親と兄さんが来ていたので直ぐに解った。

カズの母さんは殆ど昨日と変わらない部屋を少し片付けるとカズの横に座りカズに優しく話し掛ける。

「いつまで寝てんねや?早く起きや…」

でも、カズは起きる気配が無い。

少しの間、カズを見てカズの母さんは帰り支度をする。

「又明日、来るからね。」

カズに、そう言うと少し悲しそうな顔をして部屋を出ていった。

「カズ…」

ウチはカズの顔に触れようとする。

しかしウチの手はカズの頬を素通りする。

「うっ…う〜っ」

ウチはカズの布団に顔を埋める。

何時間が経ったのだろう。

外は真っ暗になっていた。

「お姉ちゃん!」

小学校の低学年位の女の子がウチに声を掛けてきた。

「えっ…ウチ?」

ウチは女の子に問い返す。

「うん!」

女の子は微笑みながら頷く。

「あなた…ウチが見えるん?」

ウチは思わず問いかける。

「うん!見えるよ。だってサキは幽霊だもん!お姉ちゃんも幽霊だよね?」

自分の事をサキと言った子は首を傾げる。

「えっ…うん、ウチは幽霊やけどサキちゃんも幽霊なんや。」

「うん、私は昨日に死んじゃったみたいなの。」

「えっ…昨日に…」

「うん、ずっと入院してたんだけどね、昨日ね気が付いたら私の寝てる横に立ってたの。」

「…」

「それでね病院の先生が一生懸命に私を起こそうとしてて、サキのママがねサキに起きてっていってるの…」

ウチは、涙が溢れてきて、サキを抱き締める。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

ウチは、何も言えずにサキを抱き締めた。

「でも、私は幸せだよ。ママやパパには、たくさん迷惑を掛けちゃったけど凄く大事にしてくれたから私の事で、もう困らしたく無いから。」

サキは嬉しそうに笑う。

「そこで寝てる人は、お姉ちゃんの大事な人?」

「うん、そうだよ…ウチの凄く大事な人。」

「そうなんだ…でも、このままだと死んじゃうよ。」

「えっ…」

ウチは、サキの言葉に動揺する。

「お姉ちゃん、そろそろ戻るね。」

そう言うとサキはウチの腕から抜け出して扉の方に駆け出して行く。

「ちょっと待ってサキちゃん!カズが死ぬって、どういう事なん?」

サキは、こちらを向くと

「お姉ちゃんが居てるから!」

そう言うと扉に姿を消した。

「ウチ…ウチが居てたらカズは…」

ウチはフラフラとカズの横に愕然と座る。

「どうしたん?泣きそうな顔して…」

「カズ!気が付いたん?」

「だから、何で泣きそうな顔してんの?」

「カズ…何でも無いんよ」

「それなら良いねんけど…ここ何処?」

「えっ、ここは病院」

「病院?何で?」

「何でって…頭痛が酷くて病院に来て倒れたんやん!」

「頭痛で?…そぉなんや…」

「覚えてへんの?」

「いや〜ゴメン」

「もうっ、心配したんだからね!」

「ゴメンゴメン」

カズは笑いながら言う。

ウチはサキの言葉が気になったがカズの姿を見ていると何かの間違いだと思えた。

「ところで君は看護婦さんなん?」

「えっ…?」

「何か仕事で嫌な事あったん?」

ウチの脳裏に色んな事が過る。

『カズは、ウチの事が解らへん?それとも冗談?』

ウチは一瞬ドキッとした。

「何を言うてんのウチやん、香澄やんか!」

「香澄?…」

「ホンマに解らへんの」

「ゴメン…」

カズは、そう言うと寝息をたてる。

ホンマに記憶喪失なのだろうか?

それとも只単に寝惚けていたのか…今は解らない。

でも、カズが目を覚ました。

それだけでウチは凄く嬉しかった。

朝になるとカズは普段通りに目を覚ました。

それを見た看護婦さんが先生を呼びに行ったり、カズの御両親が来たりと何だかバタバタしていた。

ウチは昨日の事があったので病室の外から様子を見ていた。

夕方になるとスケ君とユウさんも御見舞いに来た。

「カズ〜起きてるか〜。」

「あら、ユウちゃん久しぶり。」

「あんた、大丈夫かい?」

「ホンマやわ、携帯は繋がらんし、出たと思ったらカズのオバチャンに病院で倒れた言われるし、しかも意識無い言われたからマジでビックリしてんで〜。」

「いやぁ…バレちゃいましたか〜」

「そんな呑気に言わんといて〜。」

「あんた、死にかけてんで解ってる?」

カズは2人に責めらている。

でも、カズはニコニコしながら2人を見ている。

『2人共、ホンマに心配したんやろなぁ…ウチにも、あんなに心配してくれた友達って居てたんかなぁ…』

そう思うとカズの事が凄く羨ましかった。

「ユウちゃん、そろそろ帰りましょか?」

「そんじゃ、カズ又くるなぁ。」

「今日は悪かったねぇ」

「全然良いさ。」

「気を付けて帰ってや。」

「おーっ!あっ、それと近々 ショウ君とこ、とアキラんとこも来るってさ。」

「マジで?連絡したん!」

「当たり前やん、みんな心配してたで。」

「はぅ〜、マジでか。」

「んじゃね〜、ちゃんと治しや。」

2人が帰って病室には静けさが戻る。

消灯時間になり、部屋は闇と静寂に包まれる。

ウチは、まだ部屋の外に居た。

「お姉ちゃん」

ウチは、驚いて声の方を向く。

「…サキちゃん」

ウチは少女の顔を見てホッとする。

「どうして部屋の外に居てるの?」

ウチは、その質問に答えられずに苦笑する。

「サキちゃんこそ、どうしたん?」

少女はニコッと笑うと。

「お姉ちゃんにバイバイしに来たの。」

「えっ?」

「サキね、ママと一緒にお家に帰るの。」

「そぉなんだ。」

「ママがね、ずっと泣いてるの…サキが死んじゃってから毎日ね泣いてるの…だからねサキね、ママの傍に居てあげるの!」

ウチの目に涙が溜まる。

「そしたら、ママも泣かなくなると思うの!このままだとママが可哀想だから、サキには居てあげる事しか出来ないから…」

「サキちゃんは凄く優しいね…」

ウチはサキちゃんを抱き締めた。

「でも、お姉ちゃんは可哀想だね。」

「えっ!何で?」

「お姉ちゃんは、中の人の事が好きなの?」

「…うん、凄く大好きなんよ。」

「でも、あの人…お姉ちゃんが一緒に居たら死んじゃうよ。」

ウチは少女の言葉に驚いて両肩を持って少女の顔を見る。

「どういう事なん?何でウチがカズの近くに居たらカズが死ぬん?何で?ねぇ何でなん?」

ウチは少女に詰め寄る。

「サキも良く解らないの。」

「じゃ、どうして…どうしてカズが死ぬなんて言うたんよ…」

「はしっこの部屋のオジサンがね昨日言ってたの、お姉ちゃんが中の人と一緒に要ると中の人の磁場って言うのが変になっちゃうんだって。」

「磁場?磁場が変になると、どうなるん?」

少女は首を傾げる。

「サキも良く解らないの、オジサンに聞いてみたら?ここの一番端っこの部屋に居てるよ。」

「ありがと、行ってみるね。」

そう言ってウチは奥に向かう。

「あっ!サキちゃん色々ありがとう、ママと仲良くね。」

「うん、お姉ちゃんも元気でね!」

お互いに手を降りあう。

通路の一番奥の部屋の前に男性が立っている。

「あの〜すいません。」

ウチは恐る恐る声を掛ける。

「あの兄さんは、まだ生きてるかい?」

ウチは、その言葉にドキッとする。

「ウチが、ウチがカズの傍に居たら死ぬって…どういう事なん?」

ウチは怒鳴り気味に言う。

「…あんたには、解らへんか?」

男は少し笑いながら言う。

「解らんから聞いてんねやろ!」

「あの兄さん、霊が見えるやろ。」

「えっ?何で、そんな事が解るん?」

「霊が見える人間の磁場って特別でね、普通とは少し違う。」

「それで?」

「それに、あんたの磁場も普通の霊のモノとは少し違うんや」

「ウチもカズも特別なん?」

「あんたは、あの兄さんに憑いとるんやろ?」

「そやで!」

「特別な人間に特別な霊が憑いてるって事は、その人間の身体には凄い負荷が掛かるわなぁ特に磁場は脳に危害を及ぼしよる」

「あっ…」

ウチの頭に最悪な答えが導き出される。

「解ったみたいやなぁ」

「で、でもウチら離れられんのよ!」

ウチは少しパニック気味なる。

「それは、あんたの気持ち次第やろ?」

「ウチの気持ち?」

「あんたの未練は、あの兄さんやろ?」

それは、ウチにも解ってた事。

ウチがカズの事が好きだと言う事。

でも…今の関係を壊すのが嫌で解らないフリをしていた。

「あんた、どうする気なんや?このまま後2、3日一緒に居たら兄さんも死んで一緒に居れるで。」

「ウチは…ウチは決めた。」

「ほう〜、一緒に居とくか?」

「今すぐ離れる。」

「えらい早いなぁ、そんな急がんでも2日位は傍に居れるで。」

「ううん良いいんよ、ウチが傍に居ればカズの記憶が消えるかも知れんから。」

ウチは、オジサンに頭を下げてカズの病室に戻る。

カズは静かに寝息を立てている。

「カズ…」

いざ、となると決心が鈍る。

「ウチは…」

自然と目から涙が溢れ出してくる。

「もう、あなたの声を聞く事が出来なくても。」

目から涙が流れ出す。

「あなたの笑顔を見る事が出来なくても、もっと、あなたと一緒に居たい。」

「本当は、サヨナラなんて したくない。」

「あなたの笑顔を、ずっと傍で見ていたかった。」

「…もっと…もっと好きだと伝えたかった。」

その場に泣き崩れる。

「カスミ?ちゃんだっけ?」

ウチは、思わず顔をあげる。

「あっ…カズ…。」

「大丈夫?」

「えっ…うん大丈夫。」

ウチは急いで涙を拭う。

「俺は…俺は君に何をしてあげれる?」

「えっ?」

「何かさ、君の事を前から知ってる感じがすんねん。」

「カズ…」

「だから、オレは何をすれば君は笑ってくれるん?」

「…ううん…今までメッチャして貰ったから。」

「え…」

「でも、最後に1つだけお願いしても良い?」

「えっ、あぁ良いよ」

カズは微笑む。

『やっぱりウチ、カズの事が好きやなぁ〜』

そう思うと又、目に涙が溜まる。

「それじゃ、少しの間 目を閉じて。」

「そんな事で良いん?」

カズが目を閉じる。

ウチは、少しの間カズの顔を見る。

「もう、良い?」

カズが目を開けかける。

「カズ…」

ウチはカズにキスをする。

唇は触れ無いが、キスをした。

「カズ…本当にありがとう。」

「…」

「ウチはカズがメッチャ大好きやで!」

ウチは涙を流しながら最高の笑顔を送った。

するとウチの身体が薄くなり消えて行く。

「カズ…大好き…」

ウチが最後に見えたのは泣いてるカズの顔やった。

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