第7夜
今作は、前作から香澄の気持ちが変わってきてる お話しです。
何だかオカシイ…香澄の様子が確かにオカシイ。
この前に会社の帰りに買い物…いわゆるshopping!をして帰ってきてから何だか元気が無い。
今は2人で、お笑い番組を見ているのだが…。
「はははっ何かこの2人おもろいな。」
「あははっ
、何語か解らんけどおもろいなぁ」
「…」
と日常的に見えるけど。
テレビを見ていても時折、香澄は思いに更ける様な顔をする。
もしかして!俺が何かしたんか!?
…解らん…何か全然、思い当たる所が無い。
本人には聞きづらいし…。
「ふーっ…なぁ…何か有った?元気無いみたいやけど?」
「…えっ、ウチ?ウチは元気やで。」
幽霊に元気といわれても、変な感じやけど…
「それなら良いねんけど…」
「うん…」
『話をしてくれるって事は俺は原因じゃ無いみたいやなぁ。』
そう思うと少し気持ちは楽になったが、それなら余計に気になる。
「少し、外に行けへん?」
少しでも、この雰囲気を変えようと提案してみる。
「そやね、行こか。」
『いつもなら、もっと乗り気なのに…』
そう思いながら用意をして外に出る。
外に出たものの、何処に行くでも無くフラフラと歩く。
『外に出たけど…何処に行こ…』
空はオレンジに染まって、買い物袋を持った人達が行き交ってる中で立ち話をしてる人達も居る。
何だか懐かしさを感じながら風景に溶け込む様に歩いていると、店からも良い匂いが漂ってくる。
「何か…良いなぁ。」
微笑みながらポツリと香澄が呟く。
「そうやなぁ」
そんな香澄を見てると俺も少し心が温かくなった気がした。
そのまま歩いて近くの公園のベンチに座った。
「少しは元気なった?只の散歩やけど。」
「えっ?何で、元気やで。」
香澄はニコッと笑う。
「そうやなぁ、香澄は、いつでも元気やんなぁ。」
「まぁね!」
「…でも…ホンマに何か有ったら絶対に相談してや。」
「うん…ありがと。」
「んじゃ!暗くなってきたし帰ろか。」
「うん」
人の少ない道で、のんびりと帰りたかっので俺達はマンションに帰るのに来た道とは違う道で帰る事にした。
『少しは気晴らしになったかな…』歩きながら、そう思って香澄の顔を見る。
香澄は沈んでいく夕陽を眺めながら少し離れて付いてきていた。
俺は、彼女の顔を見て少し やりきれない気持ちになる。
夕陽に照らされた彼女の顔が悲しそうに見えたからだ。
俺は自分の無力さが悔しかった。
部屋に着くまでは、お互いに一言も話をしなかった。
部屋に着いても何を話して良いのか解らず少しの沈黙が続く。
「テレビでも見よっかなぁ」
俺は耐えられなくなりテレビを点ける。
「あっ!この番組始まってるやん」
香澄も空気を感じたのか、俺の隣に来てテレビを見る。
それからは、いつもと変わらない時間が過ぎたが少し蟠りが残った。
「さ〜て…明日は仕事やし、そろそろ寝るな」
「は〜い、おやすみ」
俺は部屋の電気を消すと布団に入った。
「ウチは少し外に居てるな。」
そう言うと香澄はバルコニーの方に行くと窓を通り抜け出て行った。
その姿を見ると、彼女が幽霊だと実感する。
「痛ぅ…」少し頭痛がした。
頭痛は直ぐに治まったので俺は布団に寝転んだ。
俺は、ボ〜ッと天井を見つめる。
頭の中では香澄の事ばかり廻っていた。
考えれば俺は香澄の事は名前と今まで一緒に過ごして解った事しか知らない事に気付く。
やはり、気になる。
俺は布団から出ると香澄の居るバルコニーへと向かう。
俺は、ちゃんと窓は開けて出る。
「どうしたん?まだ、寝ぇへんの?」
香澄は俺を見て微笑む。
「ん〜…ちょっと寝付けなくてさ」俺は、彼女の横に移動する。
「それに、香澄と一緒に居たいから」
「あはは、もうカズって上手いこと言うなぁ」
香澄は笑いながら言うと又、空を見上げる。
少しの沈黙が流れる。
「何でウチは幽霊なんやろ?」
香澄がポツリと呟く。
俺は、ドキッとした。
「ウチが生きてたら、もっとカズと違う毎日を送れたのに…」
「俺は、…今でも十分に楽しいで」
「ウチなんかと一緒に居ても何も楽しく無いやろ…」
彼女は俯く。
「そんな事無いで、一緒に居てるだけで俺はメッチャ楽しいで」
「手も繋がれへんし、外では普通に話も出来へんのにカズは楽しいの?」
香澄の声が少し震えてるのが解る。
「前にも言ったけど、俺は…」
「カズは平気かも知れんけどウチは…辛いんよ!」
俺の言葉を遮って香澄が大きな声で叫ぶ。
「解ってるんよ…カズはホンマに優しいから、でもウチは嫌や。」
香澄は下を向いたまま話を続ける。
「この前の水族館の時も、会社の帰りに買い物に行った時も、回りは手を繋いでたり、腕を組んでたり、本当に楽しそうにしてたんよ」
「それは、恋人同士やから…」
「ウチらは違うの?正直に言ってや…俺も普通の女の子と付き合いたいって言ってよ!」
しばしの沈黙が流れる。
「…うそ…ホンマはイヤや…ウチはカズがホンマにメッチャ好きやねん。」
「…俺も、香澄の事がホンマに好きやで」
「…ありがと…でも、生きてるカズにはウチの気持ちは絶対に解らんよ。」
俺は何も言えなくなった。
「ゴメン…嫌な事ばかり言って、気にせんといてな」
気にすんなと言われても俺は、どうして良いか解らずに只その場に立ち尽くすだけだった。
「カズ…ゴメンな、今は1人にしてくれへん?これ以上カズに嫌われたくないから…」
香澄は涙目で俺の方を向くと精一杯微笑んだ。
「解った…」
俺も、顔がひきつっているのが解ったが精一杯微笑んで部屋に入る。
俺は行き場の無い気持ちを抱いたまま布団に潜りこんだ。
俺は一体どうしたら良いのか全然解らなくなっていた。