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悲しい恋愛  作者: 火華舞
3/12

第3夜

香澄に憑かれてから数日間…

少し距離も縮まってきた頃、香澄の未練の事を考える様になっていた。

「なぁ、香澄は自分の未練て何か解らんの?」

テレビを見ながら聞いてみる。

「ん〜、そう言われてもウチも良く解らんのよ」

確かに香澄が前迄 考えてた未練は違っていたから仕方がない。

「明日は土曜日やし散歩がてらに少し香澄の居た墓地の回りに行ってみよか?」

彼女の反応を見てみる。

「え〜、良いの?

カズと散歩。

初めて男の人と出掛けるよ。」

自分の事に踏み込まれる事を嫌がるかと思ってけど、そういうのは無いみたいだな。

でも、男の人と出掛けるのが初めてで恥ずかしがる前に一応だけど同居してる事には気付いてるんかなぁ?

土曜日の朝

「早く行くよ」

香澄に急かされながら家を出る。

「天気が良くて良かったな」

思わず漏れた言葉にハッとする。

香澄は幽霊で他の人には見えないから普通に喋ってると変な人に間違われる。

「香澄」

回りに人が居ないのを見計らいながら香澄に声を掛ける。

「んっ…どうしたん?」

「外では悪いけど普通の人に香澄は見えへんから…」

と言い掛けると…

「解っとるよ、ウチは幽霊やねんから良く解っとるよ」

そう言う彼女を見て胸がチクッとした。

「さぁ、とりあえず歩いて墓地迄行こか!」

彼女は俺の横を歩く様に付いてくる。

とりあえず香澄の居た墓地に行く事にした。

向かう途中に香澄に覚えてか確認をしながら歩いて行くが香澄は覚えて無いと言うより解らないといった感じだ。

「この辺も解らへん?」

一応は聞いてみるが。

「ごめんなぁ、幽霊になってからは見てるけど生きてた時の事は思い出せんのよ。」

彼女は少し困った顔で答える。

「いや、全然良いねん。」

俺は笑って答える。

20分程歩くと目的地の墓地に着いた。

「なぁ、何か思い出した?」

俺の問いに彼女は難しい顔をしている。

「それじゃ、俺は墓石に香澄の名前が有るか見ていくから香澄は遠くには行かれへんと思うから周りを見ながら付いといで」 彼女は右手を挙げて

「はーい」

元気に返事をする。

俺は1つ1つ墓石を見ていく、その上で彼女が回りを見ながら心当たりを探している。

全ての墓石を見ると言っても数は100にも満たない数である。

「あっ!カズあっちの壁の方に行ってみよ」

香澄は何かを思い出したのか言われた方に行ってみる。

「この辺?」

言われた壁近くで聞いてみる。

「うん、ちょっと待っててね」

彼女はフワフワと3m位の壁の上へと浮いて行く。

少しして彼女が降りてくる。

「ゴメン…何か思い出せるかと思ったんよ、でもダメみたいやわ…」

彼女は少し位顔をする。

「何を言ってんねんな、その為に来てんねんから何か有ったら何でも言いや」

それから2時間程墓石を見ながら香澄の気になる場所にも行ってみたが手掛かりも無く、名前も見当たらなかった。

彼女は少し申し訳なさそうな顔をして下を向いた。

「大丈夫!そんな焦らんでも、ゆっくり思い出したら良いからさ。」

「…うん…ありがと」

彼女は俯いたまま消えそうな声で言った。

こんな時まで俺は何で彼女に何もしてあげれないんだろう…彼女を抱き締めたいのに触れる事すら出来ないなんて。

「それに、余り早い事思い出されても俺が寂しいやん」

言った後少し恥ずかしくなり香澄に背を向ける。

「この回りを少し歩いて…」

言い掛けた時、彼女の手が腰に有るのに気付いた。

彼女が後ろから抱き締めてる様なカッコになっている。

「触れる事が出来たら良いのにね、 今ね…私は凄くカズを抱き締めたいんよ」

出来る事なら俺も抱き締めたい…

「お、俺も凄く香澄を抱き締めたい」

彼女は少し黙っている。

「カズは優しいね…でも嘘はダメだよ…嘘はね癖になるんよ」

「ちゃう、俺は!」

「カズは本当に優しいなぁ、カズは優しい嘘のつもりでも優しい嘘も良い嘘も悪い嘘も嘘はクセになるんよ。」

そう言う彼女の声は寂しい感じがした。

彼女は俺の前にクルッと回り込むと

「なんてね、さぁ行こうか!」

と言って彼女は俺の前を進んでいく。

「行きますか」

俺も後を付いて行く。

俺の前に来た時に彼女は笑っていたが彼女の目からは涙が流れていた。

この後は暗くなる前までウロウロ周辺を歩いて回ったが手掛かりは見つからなかった。

香澄は何も無かった様に明るい彼女に戻っていたが俺には、忘れられない1日となった。

彼女の言葉…俺の彼女への気持ち…変な蟠りだけが残った1日。


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