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悲しい恋愛  作者: 火華舞
2/12

第2夜

月曜日の朝。

「お坊っちゃま、おはようございます。」

携帯のアラームで目を覚ます。

何とか身を起こすが、何だか まだ夢の中に居る感じがする。

「あんまり寝た気がせん」

土曜日の夜に明るい幽霊にあった。

愚痴を聞かされた。

「…」

頭が働かない… ボーとしたまま洗面台に向かい歯磨きしながら幽霊の事を考える。

「ちゃんと成仏したかな?」

鏡に映る自分に問い掛ける。

『大丈夫』

今は、そう願うしかない。

昨日は昼過ぎに起きた。

起きてからは予定も無く、ただダラダラと過ごした。でも、どうも明るい幽霊の事が気になっていた。

昼まで寝てたのも災いしてか、なかなか寝付けなく夜中の3時位まで起きていた。

幽霊の事を待っていた自分も居たのかも知れないが…とりあえず今は出社だ。


9時に出社して18時に退社。

いつもと変わらない日常を過ごして帰宅する。

部屋に入ると真っ暗な闇が待っていた。

「はぁ〜何か今日も疲れた〜」

愚痴を言いながら電気のスイッチに手を伸ばす。

「お疲れさま」

労いの言葉が掛かる。

「ほんま疲れたわ、何して疲れたか解らんけど。」

会話をしてるが俺には違和感があった。

「ほんまに、そうやなぁ〜、仕事って何か疲れるよねぇ〜。」

と女の子の声が返ってくる。

「それで、自分の部屋に着いたら直ぐに寛げるもんなぁ」

…やはりオカシイ。

「って、何で俺の部屋に居てんねん!」

違和感の正体は解っている。

そもそも誰も居ない部屋で声がする時点で間違ってる。

そこに独り言みたいに俺が1人で会話をしているのを連れが見ていたら即、病院に連れて行かれるだろう。「成仏なさったのでは?」

何故か丁寧口調になる。

「なんでやろ…出来ひんかったみたい」

彼女は少し悲しい笑顔で答える。

そして少しの沈黙が流れる。

「少し話そうか?」彼女のそんな姿を見ていると自然に声を掛けていた。

「うん!ええよ。」彼女は満面の笑顔で答える。

俺はその笑顔にドキドキする。

「可愛い顔して…」ポツリと呟く。

「んっ?どうしたん?」

「何も無いよ。」

俺はイタズラっぽく答える。

「うち、かすみ!澄んだ香りって書いて香澄。」

彼女は自己紹介を始めた。

「俺は、カズ。カズでも、カズ様でも、カズ将軍でも好きな呼び方で良いで」

すると彼女は即答で、

「カズゴメス!」

『何の名前ですか〜』

「ごめんなさい、カズでお願いします。」

「仕方ないなぁ〜、良いよ、カーズ」

彼女が笑顔で言う。

少し俺は照れ臭くなる。

「あ…そうそう、お互いの名前も分かった事やし話そうや」

俺は彼女に悟られない様に話を振った。

「うん」

俺がソファーに座ると彼女は返事をして隣に座る。

お互いの食べ物の好き嫌いや香澄が余り生前の記憶を余り覚えて無い事等を3時間程話した。

「それで、何で成仏は出来へんかったん?」

俺は率直に疑問を聞いてみる。

「ん〜…まだ未練が残ってるんかなぁ?」

彼女は少し悩みながら答えた。

「でも、この前に成仏が出来そう。とか言ってなかった?」

続けて質問をする。

「あの時は出来ると思ったんよ」

彼女が少し困った顔をする。

「香澄の未練って何やったん?」

「よくは解らんけど、カズと…男の人と楽しい時間を過ごしたから…」

「えっ?」

俺は一瞬喜びそうになったが話を整理してみた。

「香澄は、男の人と仲良くした事が無いの?」

すると彼女は照れながら

「そんなん有る筈無いやん。生きてた頃は、ずっと女子校で寮住まいだから男の人なんて周りには居なかったんよ。」

「案外…記憶有るんちゃうん?」

俺は思わず突っ込む。

「有ると言えば有るんよ。でも、大雑把にしか覚えてないんよ。」

彼女の顔が少し曇る。

「ゴメン…変な事言って」

空気が少し重くなった感じがした。 「そんなん全然良いよ。カズが気にする事じゃ無いから…」

香澄は心配を掛けまいと精一杯の笑顔を作ってみせた。

「そろそろ行くね。」

そう言うと彼女は立ち上がった。

「気を付けてな」 俺は少し後ろ髪を引かれながら見送る。

「うん、今日は有り難うね。凄く嬉しかったよ!」

彼女は満面の笑みを俺に送ると窓に向かって行った。

「またな!又おいでな。」

窓に消えていく彼女の背中に向けて声を掛けた。

「はぁ…でも何か楽しかったなぁ」 もう一度ソファーに座り、1人になり少し広く感じる部屋で落ち着く。「そうだね〜何だか私達は合いそうだよねぇ」

俺は飲みかけた物を吹き出しそうになる。

「グハッ…ゲホゲホ…何…何で居てるんゲホ、さっき感動的に別れたとこやん。」

俺は噎せながら声の主…香澄に質問する。

「あはは、それが何故だかカズに取り憑いちゃったみたいで…帰れなくなっちゃった。」

彼女は凄い事をサラッと言ってのけた。

「なんですとー!!」こうして幽霊との同居生活が始まった。


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