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19.幸せでしてよ

子供の頃読んだ絵本。とある国のお姫様が素敵な王子様に恋をするお話。恋をした王子様もお姫様の事を好きになって、素敵なプロポーズをされ、二人は盛大な結婚式を挙げていつまでも幸せに暮らしました、という内容の話。その絵本に描かれた真っ白なドレスに憧れて、私もこんなドレスが欲しいと父親に強請ったのも懐かしい。

今漸く、望んだ通りのドレスを身に纏い、サティアは一人控室に籠っている。

Aラインのシンプルなドレス。よく見ると白い糸で細かく薔薇の刺繍が施され、編み込まれた髪には鮮やかな花たちが品良く飾られていた。メイドたちの渾身の力作だ。


「用意は出来たかな」


ノックの音と、父親の声。もう一度結婚式をすると報告すると、もう一度エスコートしたいとクリストフから言ってくれた。

扉を開けば、うっすらと涙を浮かべたクリストフと目が合った。

義理の母と揉め、実家に戻ってきた娘をずっと心配していたらしい。今は楽しそうにやっていて、ギルバートと共にもう一度式をするまで仲睦まじい夫婦になろうとしている事が嬉しいのだとクリストフは笑った。


「前のドレスより似合っているよ」

「あれは本当に最悪だったわ」

「本当にな。でも今回のドレスは本当によく似合う。…本当に、お姫様だなあ」


ぐすぐすと泣き出して、クリストフは何度も何度も似合っていると褒めてくれた。むず痒い気分になったが、こんなにも泣かれてしまうとサティアも少し目頭が熱くなってくる。化粧をしているからと必死で涙を堪えながら、クリストフの手を取って笑った。


「お父様、心配ばかりかけてごめんなさい。でももう大丈夫、ギルバート様はとっても良い夫なの」


ずびずびと鼻を鳴らし始めたクリストフの手をぎゅうと握って、サティアは満面の笑みを浮かべた。


「私、とっても幸せよ」


あの絵本のお姫様みたいに、迎えに来たのは王子様ではないけれど、美しい鴉は不器用なりに努力してくれている。その話は手紙に書いて実家に報告しているし、サティアの顔を見れば分かる。


「良かった。今度こそ安心してお前を送り出せる。…後悔していたんだ。あの日本当にお前を送り出して良かったのか、何度も何度も考えた。一度送り出したのだから、もう甘やかしてはいけないとも思っていた。でも本当は、ずっと心配していた」

「ごめんなさい…でもね、お父様。私はギルバート様の妻になれて幸せよ。あの方ちょっと不器用だけれど、ちゃんと守ってくれるわ。だからもう一度、私を送り出してください」


様子を見に来たクラリスに差し出されたハンカチを受け取って、クリストフは顔を拭きながら何度か頷いた。時間ですよと困り顔のクラリスに詫びながら、今度は笑顔で娘を見たクリストフが手を差し出した。

その手を取って、二人はゆっくりと歩き出す。庭に出てすぐに鳴り始める楽団の音楽と、客人たちの拍手。

穏やかな顔で妻を待ちわびるギルバートは、上から下まで真っ黒な制服姿だ。


「サティア、私の可愛い愛娘。きっと、幸せになるんだよ」


また涙を浮かべながら、しっかりとギルバートに娘を預けて笑う。今度こそ我慢しきれなくなったサティアは涙を零した。


「泣かないって約束だったじゃないですか」

「仕方ないだろう!何だか娘を取られた気分でもう…あんなに小さな妖精だったのに!」


客席で待っていたシェリルの隣で号泣している声が聞こえる。まだ涙を零したままだったのに、そんな会話が聞こえれば笑ってしまう。そっと夫から差し出されたハンカチで涙を拭って、一度誓った誓いをやり直す。

死が二人を別つまで、互いを愛し、支え合う事を誓おう。鴉と妖精なんて組み合わせはやけに空想的だが、案外良い組み合わせかもしれない。

沢山の花を模したレースのベールを上げられ、二度目の誓いのキスをした。


「もう一度、ここから夫婦をやり直そう」

「ええ、よろしくお願いします」


沢山の花びらが舞う。屋敷の使用人や、非番の騎士団員、そして少数の友人たちという面子だが、サティアはとても幸せそうに微笑んだ。


「おめでとうサティア!」

「団長殿お幸せに」


やっと呼べたゴールドスタイン夫妻が揃って花びらを空に向かって投げる。

少しでも、あの夫婦に近付けただろうか。そんな比べなくても良い事を考えてしまうが、相変わらず仲睦まじいあの夫婦はサティアの憧れで、隣を歩く夫となりたい姿なのだ。


「そういえば、私は白い服でなくて良かったのか?」

「良いのです。だって、私の鴉はとっても綺麗なんですもの」

「白が似合わなかったんだな」


クスクスと笑い合いながら、二人は揃って顔を見合わせる。

きっと上手くいく。これから先、長い長い人生を、少しの喧嘩をしながら共に生きるのだ。鴉と妖精は互いの手をしっかりと握りながら、花びらのシャワーを存分に浴びた。


氷の妖精は鴉に寄り添う、これにて完結です!

途中更新滞りましたが、お付き合いいただきありがとうございました。

また思いつき次第短編や番外編更新するかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。→https://ncode.syosetu.com/n6636gn/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界恋愛の貴族のご令嬢の多くは政略結婚で、皆が皆、結婚後の生活が幸せとは限らない……親友の幸せな結婚と自身の結婚を比べてしまう。でも、サティアが親友や夫を恨んだりすることなく、自分に出来…
[良い点] 完結おめでとうございます。 そして今回も素敵なお話をありがとうございました! 愛情を惜しみなく伝えてくれるアラン様も素敵ですが、全く伝わってはいなかったけれど一途に相手を思う不器用なギルバ…
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