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流浪園殺人事件  作者: 若庭葉
第四章:魔獣の貌
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1:愛されなかった

 この悲劇の(やかた)で死んでいくんだ。それ以外の死に方はない。


 エドガー・アラン・ポー(巽孝之訳)『アッシャー家の崩壊』

 四年前の雷雨の夜。

 波が浜辺の砂をさらって行くように、青年の意識は、深い晦冥の底に沈もうとしていた。

 ──どうして、誰も……俺のことを、愛してくれないんだ……。

 落雷により瀕死の状態に陥って尚、頭に浮かぶのは同じ問いだった。それほどまでに、彼は他人からの愛を──とりわけ()()に愛されることを、望んでいたのだ。

 しかし、愛されなかった。

 彼を受け入れてくれる者は、結局誰一人として、現れなかった。

 ──鮎子さんだけじゃなく……織部さんですら、()()()()()()……。

 ──どうして、俺はこの世に生まれて来てしまったのだろう? 誰にも望まれてなど、いやしなかったのに。

 ──何故、俺を生み出したのですか? 教えてください……。


 ──お父さん。


 まるで、海中に沈みながら、小さな泡沫(あぶく)を吐き出すかのように。

 届くことのない問いを発した直後、彼の思考は、闇に閉ざされた。

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