表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第8話~予算委員会~

とある日の事。この日はあかねが総理大臣になって、初の予算委員会だった。いつも国会中継で見ていた光景の場所にいくなんて思いもしなかったが、今の現実を見てある意味ワクワクしていた。反論する準備は既に出来ているからだ。

すると岡本が総理執務室に入ってきた。


「失礼します。あかねさん」


あまりにもひっ迫した顔に、少しあかねは不安を覚えながら


「どうしたの?」


「実は、藤谷が先日、民和党の離党届を出しました」


「え?」


薄々嫌な予感がしていた。彼は既にただの衆議院議員で官僚でも閣僚でもない。確実に彼の性格なら離党届を出してもおかしくはない。そう思っていると岡本が


「それだけじゃないんです。平和民主党に入党届を出したみたいなんです」


「はぁ?」


思わず席を立ち上がってしまった。平和民主党に入党したとは全くの予想外だった。あの野党に入られては好き勝手される。また嫌ほどありもしないことをばらまかれる。そうなったらこの内閣は嫌でも終わりになる。そう思い


「あの。岡本副総理」


「はい」


「今日の予算委員会に、彼は来ませんよね」


すると岡本は少し苦い顔をした。それにあかねは恐怖を覚えていた。岡本が重い口を開き


「実は、何故か質問者の中にいるんですよ。彼が」


「ちょっと待ってください。もう質問者は決まってるんですよ」


「代行みたいです」


思わずため息をついてしまったあかね。絶対に私を責め上げるに違いない、彼は一度恨んだ人物はとことん潰さないと気が済まないとんでもない奴だからだ。でももうすぐで時間だ。とりあえず行かなければ何も始まらない。そう思い


「岡本副総理。とりあえず行きましょう」


「分かりました」


2時間後、午前9時から予定通りの予算委員会が始まった。今回は第一分科会である防衛費などを議論する会だった。

あかねと岡本が会議室に入る。すると目線の先には、野党側に座っている藤谷の姿もあった。あかねは何も反応せずに椅子に座った。

まずは男性の予算委員長が


「これより会議を開きます。一般会計補正予算の議題にして基本的質疑に入ります。質疑の申し入れがありますので、順次これを許します。藤谷三郎君」


平和民主党からの拍手があり、藤谷が質問台に立つ。


「えぇ藤谷。先日日本民和党を離れて、平和民主党に入党しましたことをここでもう一度ご報告させていただきます。それでですね。まず岡本副総理兼防衛大臣に質問します。今回の防衛予算の半分は必要な武器のための予算と書かれてますが、そんなに要りますかね。既に国内防衛法案は、来週の国防法特別委員会で自衛隊明記に戻すことはほぼ可決確定的です。しかし武器の保有に使うにはいくらなんだって多すぎじゃないですか?いいですか大臣。これは国民の税金で動いていることをお忘れなく」


藤谷は鋭い意見をぶつけた。それにあかねは物凄い恨みを残しているんだなと思い、恐怖を覚えた。その間に岡本が手を上げる。予算委員長が


「防衛大臣・岡本洋一君」


岡本が壇上まできて


「えぇ。ただ今藤谷議員からご質問がありました通り、防衛予算の約3分の1は武器保有に使わせていただきますが、決してこれを大量生産し、戦争に使おうとかそう思っていません。実際前にも衆議院本会議でも答弁しました通り、やむを得ない武器保有とミサイル撃破などで武器を生産するための予算です。勘違いをなされないように」


藤谷が手を上げる。予算委員長が


「藤谷三郎君」


藤谷が質問台に立つ


「えぇでは質問します。そのやむを得ない武器の保有とは一体どういった時に使い、そしてどんな武器なんでしょうか。事細かく教えてください」


岡本が手を上げる。予算委員長が


「防衛大臣・岡本洋一君」


岡本が壇上に上がる。


「えぇ。それは機密事項なので発言を控えさせていただきます」


藤谷が手を上げる。予算委員長が


「藤谷三郎君」


藤谷が質問台に立つ。


「それはないでしょう。いいですか大臣。ここではカメラがあります。当然今のこの状況は中継されてますよ。国民が見てるんですよ。それなのに発言を控えさせていただきますは、さすがにないじゃないんですか?もう一度お尋ねします。武器の保有の意味を教えてください」


確かに藤谷が言ってることが合っているが、なぜ岡本はその事実を話さない。実際の武器の保有はもし敵国から攻められた時の爆弾や銃などだ。やむを得ないのもその理由。今回の国内防衛法案改正も、ただ国防軍を自衛隊明記に戻し、敵基地攻撃能力を全面白紙にするだけのことで、あまり内容は細かくは変わっていない。それだけなのになぜ岡本はそれを話さないのか、あかねはそう思いながら岡本を見つめていた。

その頃岡本は手を上げる。予算委員長が


「防衛大臣・岡本洋一君」


岡本が壇上に立ち


「えぇ。ですからそれに関しましては。一切発言を控えさせていただきます」


すると藤谷の顔が一瞬にやけるのが見えた。あかねもその光景を見て少しゾッとした。すると藤谷が手を挙げて、予算委員長が


「藤谷三郎君」


藤谷が質問台に立つ。


「えぇ見ましたかみなさん。これが犯罪者の言い訳ですよ」


一瞬ざわめき始める会場。あかねも一瞬何を言ってるのか分からずにいて、隣の岡本を見ると少し動揺していた。藤谷が続けて


「この副総理は、あの民和党の予算を横流しして、挙句の果てには今回の防衛予算も横領しようとしてるんですよ」


会場が完全にざわつき、平和民主党の議員からは酷いヤジが飛んできた。あかねは藤谷の言葉に絶句した。また彼の嘘だと思ったが、岡本は反論する余裕はなかった。それどころか尋常じゃない汗が出てきていた。

すると予算委員長が


「静粛に願います」


あかねはこれ以上の審議は不可能だと思い、予算委員長に中止を申し入れ、予算委員会は中止した。

その後、総理官邸の執務室では座っているあかねとその前に立つ岡本、そして近くの長椅子に座っている山本官房長官の姿もあった。

まずあかねは冷静に


「さっきの話は本当なの?」


岡本は何も答えなかった。するとあかねは


「何とか言いなさいよ!」


と怒鳴り散らした。すると驚きながらも山本が立ち上がり


「あかねちゃん。落ち着いて」


あかねは冷静になり


「どうなの?」


岡本に再び聞く、すると岡本が


「本当です」


二人は驚いた顔をする。山本が少し動揺しながらも


「岡本さん。嘘ですよね」


あかねは開いた口が塞がらないでいた。そのまま下を俯いたまま、黙ってしまった。

すると岡本が


「本当に申し訳ございません」


頭を下げる岡本。あかねの目には涙があふれていた。





~第8話終わり~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ