第3話~国会同意人事~
その頃、野党である平和民主党代表“真鍋金蔵”は幹事長の東と副代表の南丘と共に平和民主党の代表室にいた。
真鍋は椅子に座り、残りの2人は立っていた。
東「ついに、小野寺内閣が総辞職ですね」
南丘「この平和民主党の時代ですね」
真鍋「いや待て、別に解散総選挙になったわけではない。次の総理の実力があれば、我々は手も足も出ない」
東「そういえば、岡本官房長官が次期総理という線は消えました」
真鍋は驚いた顔をして
真鍋「どういうことだ」
南丘はまさかと言う顔をして東を見つめる。
南丘「もしかして、あの線か?」
東が頷き、南丘の顔が真っ青になる。
真鍋は全く何を話しているか分からずに
真鍋「ねぇ何話してるの?」
何も答えずに悩み始める2人。
その頃、あかねの自宅では祖父の武と岡本は話をしていた。
あかね「どういうことよ。私が総理って。確かに私は衆議院議員になりましたけど。いきなり総理って。岡本のおじちゃんがやればいい話じゃないですか」
岡本は相変わらず冷静に
岡本「おじちゃんって言うな。まぁ私がしたいのは山々なんですが。私は官房長官のままでいいです」
あかね「どうしてよ」
岡本「私はこの3年間官房長官のポストにいて、とてもやりがいと使命感を感じたんです。官房長官はどちらかと言うと、総理大臣より忙しいポストです。だから、忙しいからこそ自分にとって、楽しさに変わっていったんです」
あかねが笑顔になり、岡本が動揺しながら
岡本「な、なんですか?」
あかね「その言い方。おじちゃんもしかしてM?」
一気に空気が180度変わった。
岡本が過去一番に動揺しながら
岡本「な、何を言うんですか!そんなんじゃないですよ」
すると小野寺が咳ばらいをして
小野寺「とりあえず。あかねちゃんを総理に任命する」
あかねが微笑み
あかね「お断りします」
そのまま立ち上がる。
小野寺と岡本が戸惑いながら
小野寺「ちょっと待ってくれ。好きなようにしていいから」
あかねが振り返り
あかね「え?」
小野寺「人事とか政策とか。何でもしてくれ」
あかね「でも、私じゃ総理の器じゃないし」
困った顔をするあかね。
すると小野寺が少し笑顔になり
小野寺「前回の選挙に立候補した時の事、覚えているか?」
あかね「うん」
小野寺「俺に言っただろ。この国を良い方に変えるって。政策を国民に理解をしてもらい、きちんと胸張って出せる。そんな議員になり、いつか総理大臣になるって」
あかね「うん」
小野寺が少し泣き目になり
小野寺「嬉しかったんだ。そんな総理を欲しかった。俺だって総理の器じゃない、そんなこといつも思っていた。だから、あかねちゃんにはそんな議員にはなってほしくない。もし引き受けてくれるんだったら、願い通りの総理をやって、国民を安心させろ」
あかねが岡本の顔を見る。岡本が少し頷く。
あかねが少し笑顔になり
あかね「じゃあ。総理引き受ける。私の思い通りの政治、させてもらいます」
次の日だった。早朝のニュース速報で新・小野寺あかね内閣誕生が報じられた。
女性キャスターが読み上げる。
キャスター「速報です。昨夜総辞職を発表した小野寺内閣ですが、新総理に孫である小野寺あかね議員が就任することが分かりました。憲政史上最年少で女性初の内閣総理大臣の誕生になります」
となりにいた男性解説員が驚いた顔をして
解説員「どういうことですか?まだ小野寺あかね議員は20歳でしょ?」
キャスター「いやーまだ分からないんですが、とりあえず繰り返します」
それに遮って解説員が
解説員「いやー驚いたな。民和党はどうなってるんですかね」
キャスターがブチギレながら
キャスター「うるさい!」
解説員「す、すいません」
その頃あかねの自宅では、なかなか眠れずにソファで黙って座っていたあかね。
すると携帯電話が鳴り、それに出る。
あかね「はい。小野寺です」
岡本「あっあかねさん。今から迎えに行くので。人事会議に出席してほしいんです」
あかね「あっわかりました。準備します」
岡本「あっあと。これからはあかねさんの住まいは、首相官邸になりますので。持てる範囲の荷物を準備してください」
あかね「あっ家具とかは?」
岡本「あっ他の者に手配させときますので」
しばらくして、準備を終え外で待っていると。明らかに近所の住人が変な目で見ているのが見えた。
すると、黒い車で岡本が迎えに来た。乗り込むあかね。
岡本「これは最初で最後ですから」
あかね「えぇ。ありがとう」
車を発進させる。
車中では少し重い空気が漂ったが、運転しながら岡本が口を開き
岡本「人事会議では。あかねさんがすべてを仕切りますから」
あかね「私が?!」
あかねは少し驚いた顔をしながら言った。
岡本「そうです。だって明日からあかねさんが新総理になりますからね」
あかね「あの、おじちゃん」
岡本「おじちゃんはやめて。で、なんですか?」
あかね「私のこと。総理って言うのやめて。あかねさんでも何でもいいから。それに私官房長官のポスト決めてるの」
岡本「そうなんですか?」
あかね「うん。それと私岡本のおじちゃんを副総理にさせたいの」
岡本「ですから、おじちゃんって…え?!自分をですか?」
慌てて路肩に車を止める。
あかね「あのね。おじちゃんにはすごくお世話になっているし、それに信頼できる人がおじちゃんしかいないの。本当は官房長官にしようかなって思ったんだけど、一人どうしても官房長官にさせたい人がいるからさ」
岡本「それは一体誰なんですか?」
あかねが岡本の方をずっと見つめ続けて
あかね「ひ・み・つ。行ってください」
車は国会議事堂に向かっていった。
会議室では大勢の閣僚が待っており、中には新幹事長になった藤谷前防衛大臣の姿もあった。しばらくして、あかねが先に会議室に入る。
続いて岡本が入ろうとしたとき、藤谷が待ち構えて
藤谷「おい」
岡本「なんですか?」
藤谷「どういうことだ。俺が幹事長っていうのは」
岡本「総理がお決めになった事です。逆らうんですか?」
藤谷が苦い顔をする。
藤谷「貴様。覚えとけよ」
岡本「本当なら、クビを切ったっていいんですよ。私だって副総理になりましたから」
藤谷「副総理?まさか」
岡本が少し笑顔になりながら、会議室に入った。
藤谷は悔しそうに岡本を見つめていた。
しばらくして国会同意人事が始まった。
最初に座っていたあかねが立ちあがり
あかね「最初に、この度第121代内閣総理大臣に就任する小野寺あかねです。明日からどうぞよろしくお願い致します。それでは人事を発表します。昨日徹夜で考えました。まず副総理兼防衛大臣・岡本洋一、そして内閣官房長官には山本実久」
周りの人間が驚いた顔をする。それもそうだ。山本はあかねと同期女性議員で親友同士、そして同じ20歳である。もし就任したら最年少である。
岡本「あの、あかねさん」
あかね「私が決めましたから」
大きな声で周りに伝えた。
その日の夜、山本を首相官邸の応接室に呼び出し、岡本が入る。
岡本「呼び出して申し訳ない」
山本は笑顔で
山本「大丈夫ですよ。で何でしょうか?」
岡本「いや、実は先ほど国会同意人事を行いまして」
山本「そうなんですか?岡本さんはどのポストに?」
岡本「私は副総理兼防衛大臣に任命されました」
山本「え?本当ですか!それはよかったです。あっそうだ、聞きましたよ。あかねちゃんが総理になったとか」
岡本「それについてなんですけど」
山本が気になった顔をする。岡本は少し引き締めた顔になり
岡本「実は、山本さんを内閣官房長官に任命いたしました」
山本「あっえ?えー」
山本は驚いた顔で一瞬固まってしまった。
岡本は何をしていいか分からずに
岡本「あの、引き受けてくれますよね」
山本は顔を普通に戻し
山本「あっはい。それは引き受けますよ」
少しわざとらしく言ったが完全に動揺していた。
岡本はほっとしたような顔になり
岡本「それでですね」
岡本が少し厚めの紙を机の上に置く
山本「これは?」
岡本「もうすぐ新・官房長官の閣僚名簿の発表会見をするので、その原稿です」
山本「え?もうするんですか?私まだ聞かされたばかりですよ」
岡本「早く覚えてください」
山本は完全なる動揺をしていた。しかし早急に覚えなきゃいけないので、すぐに原稿を読み始めた。
すると岡本が
岡本「小野寺あかね総理も大胆なことをします」
山本は原稿を読みながら
山本「はい?」
岡本「いや、前小野寺内閣の閣僚を私以外全員のクビを切った」
山本は驚きの目をしながら岡本を見る。そして原稿を読み返す。
山本「確かに、全員新任だ」
岡本「古参の幹部が黙っちゃいませんよ」
山本「大丈夫なんですか?」
岡本「大丈夫です。山本さんが官房長官として、あかね総理の右腕になってください」
山本「分かりました」
そして新・小野寺あかね内閣が誕生したのであった。
~第3話終わり~