第2話~祖父の総辞職~
翌日の朝、定例会見で岡本官房長官が前に立ち、20分ほど話をしており
岡本「えぇ今回、国内防衛改正案につきましては、国民の声に真摯に向き合い、審議といたす予定です。えぇ最後になりますが、突然の事ですが。午後3時頃から、小野寺総理の緊急の記者会見を開くことになりました」
会場がざわつく、記者の一人が
記者「もしかして、総辞職か解散総選挙ですか?」
岡本「それにつきましては、ここでは解答を控えさせていただきます。しかし、強いて言うのならば、それのどちらかです」
中にいた記者が慌てて、外に出ていく。岡本は慌てて
岡本「あっ、廊下は走らない。怪我しますよ」
岡本の言葉を無視して、出ていく記者たち。ほとんど誰もいなくなって静かになり、岡本は近くにいた、綺麗な女性手話通訳の人と見つめ合い。
岡本「お茶しないですか?」
通訳「結構です」
手話通訳も出ていく。岡本が見つめた先は、内閣官房副長官で少し小柄の男の稲川だった。
岡本「帰るぞ」
稲川「はい」
岡本と稲川は共に、廊下を歩いていた。
岡本「記者団は、もう少し話を最後まで聞くって言葉知らないのかな」
稲川「それより良いんですか?」
岡本「何が」
稲川「記者団に、強いて言えばどっちか2つってカミングアウトして、総理に怒られますよ。簡単に総辞職できませんよ」
岡本「解散でも総辞職でも、辞めるのには変わりはない。変に隠して、変なデマ流されたほうが怒られるさ」
ふと岡本は気付き、先に立ち止まり
岡本「なぁ稲川」
稲川「はい?」
岡本「どうしてお前、総辞職って知ってるんだ?。まだ尾崎大臣以外、知らないはずだが」
稲川が鼻で笑い
稲川「何言ってるんすか。とっくに他の大臣みんな知ってますよ」
岡本が目を見開き
岡本「はぁ?。誰から漏れたんだよ」
稲川「漏れたの何も、総理が喋ってましたよ」
岡本「えぇ?」
稲川「確か、孫のあかねさんに次の総理にするって話も聞きましたよ」
岡本が小声で
岡本「あのバカ総理」
稲川「はい?」
岡本「いや何でもない。他の大臣の反応は?」
稲川「みんな引いてましたけどね。まだ20歳の孫に総理を指名したって」
岡本はだろうなと思い、それと同時に、あかねの総理の件も誰も納得しないだろうと思い、苦い顔で
岡本「まぁそれが普通だと思うよ。でも、誰も納得しないでしょ?」
稲川「いや、岡田法務大臣と繁田厚生労働大臣は納得されましたよ」
岡本「は?。なんで?」
稲川「いや、饅頭を貰ったって、友達の秘書官から聞きましたけど」
岡本はまさかと思い、周りに誰もいないことを確認して
岡本「それって、下には」
稲川が笑顔になり
稲川「あっ、まぁお金が」
岡本はため息をつき、そのまま走っていった。あのバカ総理にはとことん振り回され、こんな汚職もするとは、バレたら大変と思いながら、40代底力を見せながら、走っていった。
その頃、小野寺内閣総理大臣は、持田総務大臣を総理官邸の執務室に招き入れ、話をしていた。
持田「あ、あの。私を呼ぶって、一体何の用ですか?」
小野寺が笑顔で
小野寺「いやー、持田総務大臣はたくさんの案を通しましたよね」
持田「いや、僕のは一個も通ってないです」
小野寺はやっちまったの顔をした。確かに、持田は案を出したが、批判の多さに廃案にしてしまったのを忘れてしまっていた。場には変な空気が流れて、持田も黙ってしまった。
小野寺「でも、こちら甘いものお好きでしょう」
小野寺は金入り饅頭箱を、目の前のテーブルに置いた。
持田「総理。これは」
小野寺「饅頭ですよ」
小野寺が不気味な笑顔を浮かべる。すると、突然ドアを開けて、岡本が入ってきた。
岡本「はぁ間に合った」
小野寺「びっくりしたな。ノックぐらいしなさい」
岡本はすぐに冷静を取り戻し
岡本「その箱は?」
小野寺「こ、これは、饅頭だ」
岡本がストレートに
岡本「どうせ金入り饅頭でしょ?」
持田が驚き、事態の大きさを気付いたのか
持田「総理」
と少し厳しめの口調で言った。小野寺はまるで小学生のように黙り込んだ。岡本は小野寺に近づいて、箱を開けて、饅頭を取り出す。確かにこの下には、福沢諭吉のお札が大量に入っていた。あまりにも雑に入ってたため
岡本「雑だな」
小野寺「雑って言わないで」
小学生と確信してもいいぐらいの口調で言う。岡本は怒り
岡本「総理。これは汚職ですよ。小学生のようなことして恥ずかしくないんですか」
小野寺「・・・」
岡本「堂々と言いましょう。あっあと、稲川に言って、岡田大臣と繁田大臣からは、総理の冗談として回収してきましたから」
小野寺「回収しちゃったの!?」
岡本「そんなこと言っている場合ですか!」
その場にいた持田も、先程の出来事から頭の整理がつかず、ただ口を開けて見てるしかなかった。
小野寺は半分涙目になっていた。
岡本「総理。一国の総理がそんな手を使わなくても、閣議を開いて、みんなに説得しましょう。私がサポートしますから」
小野寺「本当?」
岡本はこいつ中身、本当は女性と入れ替わってるんじゃないかと思いながら頷く。
当日正午、緊急閣議を開き、大臣らが閣議室に集まっていると、小野寺と岡本が部屋に入ってくる。二人が座り、閣議が始まった。
まず切り出したのは岡本だった。
岡本「最初に、総理ではなく官房長官である私岡本が話させていただきます。えぇ、岡田大臣と繁田大臣には、先程総理から失礼なことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
岡本が頭を下げる。続けて
岡本「皆様のお耳に挟んでると思いますが、総理の決断で、小野寺内閣総辞職とすることとなりました。時期総理には、小野寺総理のお孫さんに当たります、小野寺あかねさんを、指名する事となりました」
すると、藤谷防衛大臣が
藤谷「話は分かったが、どうも噂によるとそのお孫さんは、総理になるついでに我々全員のクビを切ると聞いたぞ」
すると、それを聞いた他の大臣が、あかねを総理にすることを反対する言葉が出た。岡本は反論し
岡本「それは事実無根の情報です。まず、あかねさんはまだ、総理になる話を我々の方からしていません。この後の会見の後にご自宅に行き、話をするつもりです。私が思った事を話させていただきます。あなた方のクビが切られようとも無くても、私にとっちゃどうでもいい話です」
藤谷「どういう事だ」
藤谷が怒鳴りだし、場が騒然となる。
岡本「もしあかねさんが総理に決まったとしても、あなた方を大臣に置くのは、総理がお決めになる仕事です。てか、自分の身しか考えられない人に、私は任せて欲しくありません」
藤谷「官房長官として、立場をわきまえろ」
岡本「私だって、次に官房長官になれるか分かりません。でも、民和党の今後を考えるんだったら、私はなれなくても大丈夫です。しかし、自分の身一つしか考えられない人に、民和党を語る必要はないです」
岡本は最後に怒鳴りながら言った。
すると、ずっと下を俯いて聞いていた岸本財務大臣は
岸本「それだったら、解散でもよかった話だったのでは」
岡本「じゃあ解散しましょう。この日本民和党潰れますよ」
突然の一言に、場が更に騒然する。
藤谷「言葉を慎め!お前も民和党所属の議員なんだぞ」
岡本「ですが、平和民主党は10年前の結党以来、着実に議席を伸ばしています。前回の衆院選も危なかったですが。政権交代したいのなら、解散など好きにしてください」
周りが黙り込んだ。岡本にとって、これは最終兵器だった。すると、小野寺が立ち上がり、威厳の声で
小野寺「みんな、分かってくれ。これは民和党の未来がかかってる。みんなの決断がこの党の将来が決まる。どうか私を最後に信じてくれ。頼む」
みんなは渋々了承してくれた。しかし、藤谷は最後まで了承はしてくれなかった。
だが、そこの場にいた持田は、先程の小野寺を見ている為、先程は夢だったのかと自分を疑っていた。
午後3時・予定通り、小野寺の緊急記者会見を開いた。先ほどの件があり、たくさんのマスコミの姿があり、小野寺は裏で
小野寺「嫌だよ。あんな大勢な」
また小学生の小野寺が現れた。
岡本「行きますよ」
小野寺「えぇ」
司会からの合図があり、岡本は小野寺を押した。小野寺は記者らの前に出て、威厳を整い
小野寺「今ご紹介にあずかりました。小野寺です。今回、お忙しい中私のために、集まってくださって、ありがとうございます。本題に入りますが、午前中の、岡本官房長官からの話にもありましたが、私は今日を持ちまして、内閣総理大臣の職を辞します。約3年間の小野寺内閣に終止符を打つため、今まで応援してくれた支持者の皆様には、心から感謝の言葉を申し上げます。本当にありがとうございました。明日から早速ではありますが、次の内閣総理大臣に、職を譲ります」
ここから質疑応答に入り、小野寺は様々な記者に出来るだけ、多くの解答をしていた。それを見て、岡本は笑顔で見ていた。
会見が終わり、小野寺が裏に出ると
小野寺「どうだった?」
岡本「良かったですよ」
小野寺が笑顔で
小野寺「ありがとう」
その夜・小野寺と岡本は、あかねが住む自宅に向かった。異様に外が賑やかだなと思ったあかねは、自分の部屋から下の玄関に来ると、インターホンが鳴った。
すぐに出る。
あかね「おじいちゃん」
小野寺「よっ」
あかね「どうしたの?。岡本のおじちゃんまで連れてきて」
岡本「俺はおじちゃんなんだ」
変な空気になる。
小野寺「早速話があるんだ。中入ってもいいか?」
あかね「いいよ」
二人が家の中に入り、長椅子に座る。あかねがお茶を出し
あかね「で、どうしたの?久しぶりに家に来て」
小野寺「実はな。おじいちゃん総理辞めたんだ」
あかね「あっ見たよ。総辞職の会見。おじいちゃんかっこよかったよ」
小野寺が笑顔になり
小野寺「そうかぁ、へへへ」
岡本が真顔で
岡本「総理」
小野寺が正気を取り戻し
小野寺「えっとな。実はえっと」
言いにくそうに話を進める小野寺に、腹が立ってきたのか
岡本「小野寺総理は、あかねさんに大事な話があると」
あかね「そうなの?おじいちゃん」
小野寺「そうだよ。岡本官房長官、後は頼みましたよ」
岡本「は?」
小野寺が必死に言えと、首で合図を送る。岡本はため息をつき
岡本「あかねさん。小野寺あかねを第121代内閣総理大臣に指名いたしました」
あかね「あっ総理ね。私がねって、え?。はぁ?。私が総理―?!」
第2話終わり