第1話~祖父の極秘会談~
時は伏せておこう。第120代内閣総理大臣の小野寺武は、首相官邸にいた。
夜・総理大臣執務室では、内閣官房長官の岡本と副総理兼経済産業大臣の尾崎が極秘会談をしていた。
物凄く険悪な雰囲気なのを3人は察して分かっていた。
まず、口を開いたのは小野寺だった。
小野寺「今日は大事な話で集まってもらった」
岡本「何事ですか。私と尾崎大臣を呼んで」
岡本は冷静で沈着な性格のため、あまり慌てはしなかったが、尾崎は落ち着きのない性格のため、少し汗を出していた。そのため尾崎から出た言葉は
尾崎「まさか...総辞職ですか?」
こればかりは、岡本も戸惑いの顔をして
岡本「総理、それは本当ですか?」
小野寺「尾崎くん」
尾崎「はい?」
小野寺「なんで言っちゃうの?」
尾崎・岡本「はい?」
小野寺はさっきの威厳は無くなって、まるで小学生みたいになり
小野寺「俺の口から言おうとしたのに、なんで言うのよ」
尾崎は岡本を見て、少し違和感を持ちながら
尾崎「それはすいませんでした」
岡本と尾崎がそんなに違和感を持つのも無理もない。だって、いつもは威厳ばっかりで「誠に遺憾」「責任を痛感しています」「存じ上げません」とばかりくり返している彼しか見たことなかったからだ。
そんな小野寺を見て、岡本は話を戻して
岡本「総理」
小野寺「なに?」
岡本「総辞職というのは一体」
小野寺「あぁそれね。いや本当は解散総選挙でもよかったんだけどさ。やっぱりさ、総辞職の方かカッコよくね?」
岡本「は?」
小野寺「だから、解散だとなんか負けたようで嫌じゃん。でもさ、総辞職だったらさ。威厳のまま辞めたってなるじゃん」
尾崎は戸惑いながらも
尾崎「それだけの理由ですか?」
小野寺が頷く。岡本がため息をつきながら
岡本「これだから、我々民和党は、評判を悪くするんです」
小野寺「俺のせいっていうの?」
岡本「いやそんなわけではないですけど」
小野寺は再び、威厳の顔をして
小野寺「岡本君」
岡本「はい」
小野寺「私も、小野寺政権を続けたいよ、3年も続いたんだから。でも、あんな大臣みたらもう総辞職以外考えられないよ」
岡本「ですが」
すると尾崎が考え込み
尾崎「確かに」
岡本「え?」
尾崎「いや、他の大臣は確かに、不祥事ばかり。最近は田野川防衛大臣が、キャバクラで金をバラまいて辞任しています」
岡本も考え込んだ。
その前は中井外務大臣が、予算委員会を欠席して家族と遊園地に行ってて批判を受けて辞任したり、小井川財務大臣が、閣議をすっぽかして居酒屋でトラブルを起こして、書類送検されて辞任したりと、てんやわんやであった。
民和党からも批判が受けていたり、野党からの反発でいつ内閣不信任案を提出されて可決されるかの瀬戸際だった。
しかし、もし総辞職したら、もちろん総理も変わる。もし変わるのなら誰かと思い
岡本「総理」
小野寺「なんだ」
岡本「もし総辞職をしたら、時期総理は?」
小野寺「もちろん」
尾崎が間に入り
尾崎「もちろん私ですよね?。副総理ですし、就任順位第1位ですから」
岡本「あなたはダメですよ」
尾崎「なんでだよ」
岡本が尾崎に言いにくそうに
岡本「あの、あれバレてますよ」
尾崎「あれって...まさか」
尾崎はすぐに察した。最近実は、とある建築会社から1000万の詐欺事件にあってしまって、それどろこか、全ての少しだけは政治資金で払ってしまった。それは絶対にバレないと思っていたが、戸惑いながら岡本に
尾崎「誰にバレたの?」
岡本「日本株式新聞です」
尾崎は口を開き、驚きの顔を見せた。岡本は沈黙の表情をした。
小野寺は何事かと思い
小野寺「何事?」
岡本「い、いや」
小野寺「何よ。気になるよ」
岡本「いや、尾崎大臣が、ちょっとした汚職を」
小野寺「え?マジで?」
岡本「えぇ」
小野寺は目線を尾崎に変えて
小野寺「本当なの?」
尾崎「えぇ、まぁ」
小野寺が残念そうな顔をして
小野寺「そうなのか」
岡本「もしかして、尾崎大臣を次の総理に」
小野寺は真顔で
小野寺「いや、それはない」
尾崎は驚いたのか口を大きく開けた。まさかの自分ではない。そんなことを思うと、先程自分の言う事が恥ずかしく思い、黙り込んでしまった。
岡本「では誰にですか」
小野寺「実はな。去年施行された改正案があるじゃないか」
尾崎「なんでしたっけ?」
岡本「確か、公職選挙法改正案ですよね?。内容は被選挙権を20歳に引き下げる」
尾崎「あぁ思いだした。一昨年閣議決定して法案が可決されて、去年施行でしたよね?」
小野寺「あぁそれでな。今年の衆院選覚えているか?」
岡本「えぇ、まぁあの時は、民和党がギリギリ議席を3分の2獲得して、勝ちましたけど」
尾崎「あの時は野党の平和民主党が強かったなぁ」
小野寺「でさぁ。その時に東京からうちの党推薦で、立候補した人いるじゃない?」
岡本「結構な人数いますけど」
小野寺「俺が言うってことは?」
岡本は考えた。確かに民和党所属の立候補者は沢山いるが、小野寺が気にかけているのは限られている。すると、ふと思いつき発した言葉が
岡本「あかねさんですか?」
小野寺は笑顔になり
小野寺「そうなんだよ。あかねちゃんだよ」
尾崎「あかねちゃんがどうかされたんですか?」
岡本「尾崎大臣。ちゃん付けは」
小野寺は不機嫌な顔をする。尾崎は怯え
尾崎「す、すいません」
と、岡本は考え始めた。先ほどの話を繋げると、まさかと思い
岡本「まさか総理。あかねさんを時期総理に」
小野寺は再び笑顔になり
小野寺「そうだよ。小野寺あかねを第121代内閣総理大臣に推薦する」
岡本「え?それは本当のお考えですか?」
小野寺「そうだよ。あの子は選挙運動や政治活動で判断した。あいつは総理に適してる。ダメなの?」
尾崎「ダメですよ。確かに清純派議員って言われてますけどね」
小野寺「そうなのよ。その名前気に入っている、誰が付けたの?」
尾崎は小野寺の言葉を無視して
尾崎「何せ、評判悪いですし、祖父の七光りって言われるのがオチですよ」
岡本「尾崎大臣」
尾崎は自分が言った一言で、小野寺がまた不機嫌になったのを気付いた。それで黙ると、怒るどころか
小野寺「何?評判悪いの?うちのあかねちゃん」
岡本が渋々頷く。小野寺は少し落ち込んだ顔をしたが、結局開き直り
小野寺「でも俺は曲げないぞ。絶対に皆を説得して、総理にさせるぞ」
一同が黙り込んでしまう。小野寺は察したのか、真顔で
小野寺「あっ以上です」
岡本と尾崎はそのまま執務室を出ていく。長い廊下を歩きながら
尾崎「絶対に非難ばっかりですよ。あんな若い子を総理にさせるとは」
岡本はある自信を持っていた。
岡本「私が説得させます」
尾崎「え?。無茶ですよ」
岡本が先に立ち止まり
岡本「じゃあ、今解散総選挙をしましょう。どうせ平和民主党が勝って政権交代、それがオチ、今度は総辞職して、別の人を総理に指名しましょう。どうせ野党やこの党からの内閣不信任案が出され終わりですよ。そうなったら、この民和党は終わりですよ。だったらあかねさんに期待を持ちましょう」
尾崎「そうですね」
岡本「あっ後、尾崎大臣は辞職ですね」
尾崎「なんでですか?!」
岡本「いや例の件が」
尾崎「そんなの圧力をかければ」
岡本「それが」
岡本が尾崎の耳元で何かを話しかける。尾崎が目を見開き
尾崎「そんなのバレてるの?」
岡本「大臣辞任の話ではなく」
尾崎「国会議員も辞職かぁ」
尾崎が廊下で叫び声をあげる。
その間、話にあがった。小野寺あかね衆院議員は、自宅で自分の作ったハヤシライスを食べていた。笑顔で
あかね「美味しい」
まさか2日後に、この20歳の若い女性が内閣総理大臣を任命されるとは思いもしなかっただろう。
第1話終わり