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1人自室で思うこと

下校の時も悟は衛と一緒にいてくれた。

6時限目が始まる前の休憩中にもクラスメイトたちから返事はどうするのか?と言った質問をされ”まだなんとも”と濁し続けた。

悟は何も聞かった。

これまでと同じようにアニメや漫画の話をするだけであった。

そして一人で電車に乗り家路についた。

光流と駅のホームで会うことを恐れたがそれはなかった。

玄関から真っすぐ2階に上がり、自身の部屋のベットに制服のまま倒れこんだ。

たった一日でドッと疲れを感じていた。

目を瞑りそのまま動けなくなる。

肉体ではなく精神面が大きく消耗していた。

激動の一日だったとと呼べるだろう。

羽柴結衣から告白されあの目を見たション感は、喜びで震え叫び出したい気持ちになった。

ところがようやく家に帰り、肩の荷を下ろすことができると衛は思っていた。

しかし安心できる自分のベットの上で考えることといえば、明日からの憂鬱な学校生活だった。

元来が目立つことや波風を立たせることを嫌う性分なため、今衛が置かれている状況はほとほとストレスの掛かるものだった。

この状況を打開するためにどうすればいいのか?

答えは簡単だ。

堂々と羽柴結衣のことが好きなことを周囲に伝えればいい。

そうすれば一度は噂話として話題になるが、それ以降尻すぼみになることだろう。

”人を愛する”ということがどういうことか衛にはまだ分からない。

ただ結衣を”好き”という気持ちに嘘偽りはない。

彼女を”自分の延長線上として”感じることができるのであれば、考えることができるのであれば、それは幸福に違いなかった。。

その一方で、現状では結衣の告白に対し返事をすることができない自分がいることも、分かっていた。

1人の女性と付き合うのだ。

そこに年齢は関係ない。

学生の恋愛だからと逃げ道を作りたくない。

自分の持てる力全てで受け止めたい。

結衣の父にも言った通りだ。

自分はまだ”何者にもなれていない”という気持ちが、結衣と付き合うことを拒むのである。

結衣の持つ外見・性格・人望と自身のそれとを天秤に掛けた時、杯は結衣に傾く。

羽柴結衣がもたらしてくれるであろうものに対し、果たして同等のものを返すことができるのか?という疑惑が頭を占め衛を苦しめる。

自分が「何者であるか」という問いに対し声を大にして言えるようになった時、自身を誇れるようになった時になってはじめて、結衣と肩を並べて時を同じくすることができるのではないかと考えてしまう。

つまるところ毎夜頭を掻きむしるほどの悩みが、ここでも頭をもたげ衛の行く手を阻むのである。

そして”俺ってどう思われてるのかな?”という幼い頃からの疑問。

他人には自身の外見について言及されること嫌い、飾らない自分でいたいと思いう。

それが美徳と考えている。

しかしそれは自分の顔が人より秀でているという、確固とした土台の上だからこその考えではないだろうか?

そして心の深い所では、人一倍他人の評価を気にしている自分がいることに、衛は気付いていた。

なぜなら悟のように自分の好きな趣味を大声で叫ぶことができず、志信のように声を大にして自身の考えを言うことができないのだから。

自分は結局人の目を気にせずには生きていけず、いつも自分のどこかを大切な友人にすら隠し生きている。

酷い矛盾か抱えた人間だ。

何度この考えに胸が引き裂かれたことだろう。

思春期から続く衛の悩みに出口も回答もなく、暗澹たる気持ちを抱えベッドで過ごした。

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