いつもの食卓
髪のセットをし終えると、1階にある脱衣所から2階の自室へと向かう。
衛の家は一般的な一軒家で、折返し階段を上ったつきあたりの左側に衛の部屋がある。
右側には廊下の先に妹の部屋と、両親の寝室兼父親の書斎があった。
自室でハンガーにかけてある高校指定の制服を手に取り着替える。
それが済むと再び一階に降りリビングで朝食を取る。
現代人にとって必要不可欠なスマートフォンは、衛の入り口右手にある机の上にひっそりと置かれたまま。
衛は起きてから一度も気にかけるようなことはしなかった。
時刻は6時半。
石田家では父親の方針でなるべく家族そろって食事する、ということが昔からのルールだ。
今朝は部活動で既に中学校に行っている2つ年下の妹を除いた、両親と衛の3人が朝食の席へと着いた。
父の石田雅治はいつも表情が硬く寡黙。
自宅では新聞や本を読んでいることが多い。
今も味噌汁を飲んでいるが、目線は食卓に広げられた新聞にある。
衛が幼い頃はよく母・弓子から教育に悪いと叱られていたものの、
その度に効率的だからの一言で雅治が聞き入れない内に、すっかり日常の風景とかしてしまった。
そんな父の仕事は、母曰くどうやら技術職であるらしい。
衛は直接父親から仕事に関して聞けたためしはない。
質問をしても、その都度それなりにやっていると父はそっけなく言うのだ。
衛にはそんな父の姿がどこか余裕のないように思えてならなかった。
一方母の弓子は主婦とパートの兼業をしている。
口を真一文字にし、下り眉のどこか老いた犬を連想させる父と比べ、弓子は”整った”顔立ちをしていた。
衛の目から見ても無愛想な父の、一体どこが気に入って結婚することになったのか?
衛には不思議でならなかった。
一度母に質問してみたところ”あれで愛嬌があって話を聞いてくれるところが良い”のだそうだ。
自分の知っている父親像との違いに驚いたところ、あんたにもその内分かるようになると言った
母の瞳は優しいものであった。
自身の朝食を両手に持ち、急ぎ足で椅子に座る弓子は、父とは違い話好きである。
社交的で友人も多く、度々自宅に招いてはお茶会をしている。
今も適当に相槌をしている衛の様子には気付く様子もなく、夢中で昨日のテレビの内容を話して笑っている。
朝から母は元気で、石田家の食卓に毎日華を添えていた。
2019/8/27 一部修正と加筆をいたしまし。
2020/3/3 一部加筆いたしました。




