Day1 Part1 ~独り言は心因か
一日に1partか1Day投稿します。
Day1 Part1
体を起こす、まさぐり、確認する。
手を握ってみる。軽く、強く。
その場で足踏みをしてみる。跳んでみる。
五体満足、服は光に飲まれる前のままスーツだ。
周りを見ると、どうやら遺跡のような場所にいるようだ。
「ストーンヘンジみたいだな、あそこはがっかりスポットだった」
声を確認するように、ぽつぽつと独りつぶやく。
「きれいな平原だなぁ、ちゃんと開発してる?土地余りすぎでしょ」
緩やかな丘のある平原が広がる。ストーンヘンジは丘の上にあるようでよく周りが見渡せる。
いくつかの森、川、遠くに雪の積もった山が見える。
「あれは、、、町ですか?いや田舎の限界集落くらいの大きさか?」
3.4kmほど先に家が見える。
「あの医者、転生っていってたよな・・・」
あの医者の言をそのまま信じるのは癪だったが、瞬間にして新宿の心療内科から自然豊かな平野に飛ばされてしまうと、すがるしかない。
「行くしかないのかなあ」
現実逃避気味に周囲に転がていた自分のビジネスバッグを拾う。
筆記用具、水筒、財布、会社のセキュリティカード、ハンカチ、ティッシュ、折り畳み傘、ブレスケア、家の鍵。
「これじゃあ30日は無理だしな」
あの医者は30日の転生と言っていた。村までいかず、川の近くで野宿するにしても、1週間程度ならともかく、さすがに30日の自身はなかった。
「実際30日で戻れるのかもわからないしな、諦めて行きますか」
25歳会社員、松崎諒はネクタイを外し、異世界の地を歩み始めた。