風物死。
茹だるような暑さ。
額から吹き零れる汗。
一心不乱に励む。
そうしていたら突如注文が入る。
どうやらキンキンに冷えたビールを所望していた。
致し方なく作業を中断して、チューバーから絞り出す。
冷えたグラスに並々と注がれた泡が溢れることの無いように。
客は口を寄せて吸い付き、それは大変旨そうに目尻を寄せていた。
よし。
とりあえず、務めは果たしただろう。
直ぐ様踵を返し、つい先程の作業を再開しようとする。
── カンカン ──
── カンカン ──
── カンカン ──
拳大の汗を滲ませて。
ただ、ひたすらに斧を叩き付けた。
あとは、搾るだけだった。
「すみませ~ん。かき氷……ええっと、イチゴ味で」
続けざまにやってきた明るい声。
そう。その一言を待っていたのだ。
嬉しさが隠せなかったのか、客が引こうとも決して狼狽えず。
ふわふわのかき氷の上に真っ赤な液体を盛大に注ぐ。
「はい、お待たせ。練乳は入りますか?」
「あ、じゃあ……白玉は有りますか?」
「ええ、勿論」
目玉のような白玉がふたつ。
真っ赤に染まるかき氷の上にひっそりと佇む。
決して口にしてはいけない甘味。
寧ろ、妙に鉄臭かった。