05
-翌朝-
手早く朝食を済ませたエレノスは船の上にいた。
乗船しているのはFF230である。
エレノスが拠点にしている島から、件の島までは凡そ船で一時間の距離にある場所である。
船は三隻あり他の二隻にはゴーストトルーパーと言語学者達が乗っている。
航海は順調に進み、海獣に襲われること無く無事に島へと到着した。
「ここが例の島か………。見た感じは普通の島だな」
エレノスが拠点にしている島……本島よりもふた回り以上小さな島である。
「お待ちしておりましたエレノス様」
そう言って声をかけて来たのは、この島へと調査チームの隊長を務めるキャプテン・ルーズである。
「それで、原住民達とはその後どうだ?」
「はい。彼らはフレンドリーと言いますか、人を疑うことを知らないと言えばいいのか、よく言えば純粋、悪く言えば単純でしょうか?取り敢えず人のことを疑わない純朴な民達です」
「そうか。それでその者達の居住は此処から遠いのか?」
「いえ、それほど離れては居ませんが、徒歩ですと30分程ですね。此処らの木は太く大きいので、車での移動は困難ですし木は彼らにとって大事な物らしいので、倒すのも憚られますので申し訳ありませんが、徒歩での移動となります」
そう言われて森を見ると本島よりも鬱蒼と木々が生い茂っていた。
仕方がないか。
「わかった。では早速向かうとしよう」
一応獣道程度はあり、前を行くゴーストトルーパーの隊員が道を踏み固め、枝を鉈で切ってくれるので少しはマシである。
30分程と言われたが、子供の足では倍以上の時間がかかり結局は一時間と少しばかり時間が掛かった。
村は高床式の建物ばかりである。
原住民達は小柄であり顔も平べったいモンゴロイド系のようである。
だが、肌の色は黄色では無く黒い。
「彼らはムーア族と呼ぶそうです」
家からムーア族の人々が出て来た。
「よく来なすった。儂がこの村の長をしとるチェルゾフ・ム・プキャホキナホクじゃ」
「私はこのゴーストトルーパー達の君達で言う長をしているエレノス・サイラスです。よろしく御願いするプキャホキナホク殿」
チェルゾフ・ム・プキャホキナホクと握手をする。
「儂らの名前は言い難いじゃろう?チェルゾフで良いぞ」
「ありがとうチェルゾフ殿。では私のこともエレノスと呼んでくれ」
「ああ、よろしくのエレノス殿。それで儂らに何かようかの?」
「それにしても私みたいな子供が長をしていると疑問に思わないのかな?」
「ん?彼らを見ればわかるわい。皆エレノス殿に敬意を払っておる。だから儂は疑っとらんよ」
「ありがとうチェルゾフ殿。それと私の用は貴殿らが使う精霊魔法に興味があってな。出来れば教えてくれんか?」
「ん〜、それは構わんが。教えてくれと言われてもの。儂らはただ精霊様のお言葉を聞いているだけじゃ。精霊様にお願いをして力を貸して貰っているだけじゃからなぁ」
「それでも構わない。それと近くにテントを建てる許可が欲しいのだが?」
「そこら辺に適当に建ててくれて構わんよ」
「感謝します」
天王之眼で彼らを見てみる。
=====ステータス=====
Level:42
名前:チェルゾフ・ム・プキャホキナホク
種族:ヒューマン
職種:精霊使い
年齢:61歳
賞罰:なし
称号:ムーア族長
【魔法】
精霊魔法(風)
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それにチェルゾフの周りには光の粒子見たいものが見える。
多分あれが精霊なのだろう。
いつの間にか、エレノスの周りにはムーア族が集まって来ていた。
エレノス達の装いなどが珍しいのか、興味津々と言った表情でエレノス達を見ている。
「これはお礼だ」
そう言いウサギの燻製などを渡す。
装飾品などよりも食料の方が喜ばれるだろうと判断してだ。
「おお!これはありがたい」と嬉しそうにチェルゾフはウサギの燻製を受け取る。
「他にもあるのだが、食料庫は何処だろうか?そこに運び込もう」
「それならこっちにあるぞ。おい!誰か案内せい」
一人の青年が案内役として食料庫に案内する。
「そう言えば、この辺りに魔物は居ないのか?」
「ん?魔物なら村の若い衆が定期的に狩っているからな。この辺にはもうあまりいないじゃろうな」
どこか誇らしげにチェルゾフはそう語る。
エレノスは適当に拓けた場所にログハウスを召喚する。
その後チェルゾフから許可を貰い、此処から岸までの道を整備する。
「ほぉ〜、凄いのぅ。あっという間に道が出来てるのう」
ブルドーザーやショベルカーなどの工事用重機が、道を形作って行く。
まだSPは15400程あるので、港の建設も容易だろう。
まあ、それは許可も必要だし今はそれよりも精霊魔法の習得が先だ。
「そう言えばチェルゾフ殿はあの渦から抜ける方法は知っているかな?」
何となく渦の事が頭をよぎりチェルゾフに聞いてみる。
「ああ、あの渦かの?あれは自然の渦ではなく海竜の起こしている渦じゃよ。じゃからあの渦を止めるには海竜を討つしかあるまい。しかし海底深くを根城にしておるからのう。まず人ではそれほど深くは潜れまい。対抗出来るのは海の種族ぐらいじゃろうが、此処らには居ないの」
「なんと!そうだったのか!?」
ならば上を通過するのも危険と考えた方が良いな。
潜水艦が召喚出来る様になれば、潜水艦で一戦してみるかな。
だが、仮に海竜を倒す事が出来たとしたら、今まで天然の防壁となっていた渦が無くなり、この島や本島に大陸や島国から船が来る可能性があるな。
うーん。辺り一面を機雷原にするか?
それは追い追い考えるとするか。
「それでその海竜は一体なのですか?」
「伝承ではの。詳しくは流石に知らないの」
「そうですか。いえ、情報感謝します」
「構わんよこの程度」
あとで追加の贈呈品(食料)でも追加するかな。
「では、儂の家まで来んさい。茶でも出すぞ」
「わかりました」
チェルゾフの後に続いて彼の家に向かう。
忙しくて中々執筆出来ない。