03
「ふぅ、美味しかったよ」
「ありがとうございます。お口に合った様でようございました」
「うん。夕食も楽しみにしているよ」
「はい!お任せ下さい!腕によりを掛けた料理を振るわせていただきます」
エレノスが料理長と会話している間に、メイドがテキパキと料理を片付けて行く。
その時ドアがノックされる。
「うん?入れ」
「失礼します。調査チームから報告がありました。北西に行ったチームから湖を発見したとの報告が上がりました。湖には沢山の淡水魚が生息している模様です」
「そうか。他のチームからは?」
「今のところ目ぼしい情報はありません。人工物などの人が手掛けたと思われる物も発見出来ていません」
「やはりこの島は無人島なのか?もっと人数を増やした方が良いか?魔力も十分に回復したしたな」
残った8人のゴーストトルーパーを集めて、エレノスは事象改変を使い8人を16人に32人に増やした。
「ふぅ結構しんどいな。まあ、装備品も一緒に増やしているからな。あとで予備用の武器弾薬も増やさないとな」
その後は調査用にドローンなどの数も増やして行く。
■
それから数日が過ぎた。
調査は順調に進み島の全貌が明らかになった。
やはりこの島は無人島の様で、周りにも群島がいくつかあるが其処にも人は居そうにない。
島内の魔物を倒しながら調査したのでエレノスのレベルも3に上がった。
だが、その間に拠点もちゃんとした物になりつつあり、小さな基地になっていた。
周囲には高圧電流のバリケードを配置しており、低級の魔物なら問題なくバリケードで対処出来る。
それに建物はこの世界では無く異世界の物で、鋼鉄製なので半端なく攻撃ではビクともしない丈夫さを持っている。
更に各所にはMG08重機関銃が設置され、夜になればサーチライトが作動して周囲を明るく照らす。
それにゴーストトルーパーの数も今や100人以上にまで増えたので、滅多な事ではこの基地は陥落しないだろう。
探索には89式装甲戦闘車を使っているので、魔物に遅れを取ることは無いだろう。
一応島の全貌は明らかになったが、まだ細かい部分の探索は済んでいないのである。
「まだレベル3では大型船は召喚出来ないな。帆船なら出せるけどあの渦の前では役に立たないだろうな。みんな心配しているんだろうな」
エレノスは家族のことを思い出す。
「父様は無事だろうか?」
エレノスの父は一緒に船に乗っていたので、その安否が気掛かりである。
「取り敢えずはこの島の魔物を狩ってレベルを上げて行くしかないかな。そうするとこの基地はどうしよう?ゴーストトルーパー達の事もあるしな。このままにして定期的に来るのは………難しいかな。そう言えば転移魔法が確かあったな。習得は難しいだろうけど、習得出来ればいつでも此処と行き来が出来るようになるからな」
それにしても制限の基準がわからないな。
89式装甲戦闘車は見た目こそ戦車の様だが、内実は違うがそれでも十分に強力な兵器だよな?なのに普通の大型船はまだ制限されているのは何でだ?
「あ〜!もう考えてもわからないや!」
前世の記憶が無いためか、精神が身体に引っ張られて幼くなって来た様に感じる。
「そう言えば港を作って無いな。この島は手付かずの資源がおおく眠る宝島だからな。いずれは船で運ぶ事も考えて港を整備した方が良いな。まあ、先ずはそんな先の未来よりも如何にして大陸に渡るか、だな」
異世界の船で向かうと騒ぎになるのは目に見えている。なので何処かで船を乗り換えないと駄目だな。
「さてと、今日は初めての実戦に参加するかな」
九九式狙撃銃を手に持って感触を確かめる。
メイドに着替えさせられ、準備が整うとエレノスの護衛としてゴーストトルーパーが20名待機していた。
その中から一人前に出る。
他のゴーストトルーパーとは少し装いの違う彼は、この部隊の隊長である。
「護衛小隊準備完了です。いつでも出立出来ます」
「御苦労。では皆M35A2とAMX-10Pに分乗せよ」
そう言いエレノスはHMMWVに乗り込む。
既に運転手は乗り込んでおり、他の二つの車両にもゴーストトルーパー達が分乗して行く。
HMMWVにはキャプテン・ゴーストトルーパーとその部下2名が一緒に乗る。
「では出してくれ」
「了解しました。『出発』」
キャプテンが無線で出発を伝えると、AMX-10Pが先行する。
その後ろをHMMWVが続き、最後尾をM35A2が続く。
基地周辺1キロは既に伐採し、地面も舗装しているので問題は無いが、その先は殆ど道無き道である。
この島の主要な場所は一応簡易だが道は既に作っている。
だが今回向かう狩猟エリアは未整備である。整備すると動物が寄り付かなくなり、それを餌にする魔物も各地へ散ってしまうからである。
AMX- 10Pが木々を薙ぎ倒しながら、道無き道を進みある程度まで来ると下車する。
「よし。此処からは歩いて獲物を探すぞ」
魔物を探しにゴーストトルーパー達が辺りに散らばる。
暫く待つと無線に連絡が入る。
『こちらブルー03。指令部応答願う、魔物を発見した』
『こちら指令部。了解ブルー03。現在地を送れ』
『了解』
『こちら指令部。情報が届いた。ブルー03はその場に待機し魔物の状況を逐次送れ』
『了解した』
「エレノス様。魔物を発見したとの報告が入りました」
「ならば向かうとするか」
「はっ!了解しました!」
早速無線のあった場所へ向かう。
魔物を捜索しに向かったゴーストトルーパーは10名は魔物を発見した場所で合流予定であり、残ったゴーストトルーパー10名を引き連れて向かう。
車両には運転手だけを残してだ。
10名のゴーストトルーパーはエレノスを中心にして進む。
前を進む3名が鉈で草木を取り除き、エレノスが通りやすくする。
まだ6歳のエレノスはそこまで体力が無いので、防備も軽装備でありエレノスの九九式狙撃銃はゴーストトルーパーの一人が持っている。
一応エレノスは腰のホルスターにコルトローマンを入れている。
20分程で漸く情報があった場所に到達した。
ブルー03が指差す方を見る。
岩陰から覗くと緑色の小汚い小さな醜い生物が居た。
天王之眼で魔物を見る。
====ステータス====
Level:7
名前:なし
種族:ゴブリン
状態:平常
================
「おお!ファンタジーの定番のモンスターだな。おっと此処では魔物か。それにしても一説には妖精ってあったが、とてもそうは見えないな」
思わず声を出してしまう。
ゴブリンは全部で5匹おり、それぞれ思い思いに寛いでいる。
「エレノス様。どうしますか?」
「よし九九式狙撃銃を渡せ」
ゴーストトルーパーに渡した九九式狙撃銃を受け取り狙いを定める。
肺に四分の三空気を取り込み止める。
ゴブリンの頭に狙いを定めて引き金を引く。
パァーン‼︎
見事にゴブリンの頭に命中した。
それに続く様に4回銃声が響き渡る。
そして残った4匹のゴブリンは倒れ臥した。
すると身体に力が漲る。
=====ステータス=====
Level:5
名前:エレノス・サイラス
種族:ヒューマン
職種:サイラス侯爵家三男
年齢:6歳
賞罰:なし
称号:漂流者
【能力】
異界召喚・SP13940
事象改変
天王之眼(魔眼)
==================
どうやら自分の手で倒した方が経験値の入りが良いな。
ゴーストトルーパー達が倒した場合は、全体の半分かそれ以下しか経験値が入らない様だな。
まあ、普通はそうだろうな。
この世界にも確か召喚士や魔物使いがいたな。それらも俺と同じなのか?
それとも違うのか?
考えても仕方がないか。
少し待つと散らばった他のゴーストトルーパーがやって来た。
「よし。撤収するぞ」
「了解しました!聞いたな野郎ども!引き上げるぞ!」
車両を止めている場所まで戻る。
戻る途中豪風が吹いた。
上を見るとそこには蜥蜴の様な腕と脇の間に飛膜がある魔物がいた。
あれは!?
====ステータス====
Level:19
名前:なし
種族:ワイバーン
状態:平常
【スキル】
ブレス(炎)
================
「エレノス様を守れ!各自牽制射撃!」
ゴーストトルーパーの一人が、カールグスタフ無反動砲を構えて狙いを付ける。
後方確認をして背後に誰もいないことを確認してから発射する!
ワイバーンもまさか矮小なヒューマンに自分を傷付ける攻撃が出来るとは思ってもおらず、無防備な右の脇腹に直撃する。
使用した砲弾はHEAT751であり標準的な防弾鋼板を貫通する事が可能である為、ワイバーンの鱗を難なく貫通し爆発する。
ワイバーンは右半身は木っ端微塵になった。
「周囲を警戒しろ!他にもいるかも知れん!」
エレノスは素早くゴーストトルーパーの一人に抱えられ、太い木の後ろに隠された為に無事である。
暫く物陰に身を潜めたが、他にはどうやらワイバーンはいない様だ。
「ふぅ、どうやら一匹だけだった様だね」
「その様ですね。ですが念の為に狩猟は中止にして今日は基地に帰還しましょう」
キャプテンの進言に頷き、エレノスは念の為にマックスプロMRAPを召喚してそれに乗り込む。
木々を薙ぎ倒しながら、HMMWVなどが置いてある場所に戻る。
その後は寄り道せずに基地に帰った。