01
今日はエイプリルフール!
この小説は不定期更新です。
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残念ながら嘘ではないです。
大海原を航海中の一隻の大型船の帆船があった。
この船はミステリア王国所属艦であり、現在は貿易国である島国に向かって二週間の航海をしたいた。
乗船しているのは、ミステリア王国の重鎮であるサイラス侯爵家の当主とその三男である。
何故侯爵家の当主が船に乗っているかと言うと、島国との交渉の為である。
交渉内容は貿易関係の事で、本来なら三男は乗る筈では無かったが、最近は仕事の都合で久しく家族と過ごす事が出来ず、更に三男とはこうして出掛けた事が無かったので、一緒に連れてきたのである。
最初の一週間は順調な船旅であったが、徐々に天候が崩れて来て波が出始める。
多少の嵐程度なら熟練の船乗りである彼らなら、問題なく航海は出来たであろうが、運が悪い事に普段ならこの海域には居ないはずの海の魔物である海獣に襲われて沈没してしまう。
海に多くの人達が投げ出されて行く。
■
…………ザブーン………ザブーン……ザブーン!
波の音が聞こえる。
足が冷たい。
少しずつ意識が覚醒し始めた。
「うっ、此処は………」
起き上がり、辺りを見回すとそこは砂浜であった。
どうやら俺は漂流して此処に流れ着いたらしい。
辺りには木片が多くあることから、木製の船にでも乗っていたのだろう。
立ち上がってわかったが、目線が低い事が判明した。
水面に映った顔を見ると、金髪碧眼の美少年の姿があった。
「うう……何も思い出せない」
服装は豪奢であるので、ある程度身分のある家柄の生まれなのであろうと予想される。
取り敢えず此処に居ても仕方がないので移動するか。
動き出そうとした矢先、頭に声が響く。
『災難じゃったな。無事かね?』
「誰だ!」
周囲を見回すが誰も居ない。
『そうじゃった。記憶を無くしたのであったな。それと儂の事を探しても無駄じゃよ?頭の中に直接話しかけているのじゃから』
「そうなのですか?何故俺は記憶を無くしたのですか?」
相手が神と言うことなので、丁寧な口調で話す。
『それはの、お主が望んだ能力の代償じゃよ。お主の魂の器では少しばかり足りなかったのでな、その代償としてお主は記憶を失ったのじゃよ。
まあ、これぐらいなら良いかな?お主は地球と言う此処とは違う世界で生まれ育った人間じゃったが、ある出来事でお主は命を落としてのそして儂の力で此方の世界に転生する事になったのじゃよ。
前の世界では日本と言う島国出身の若者での、その国にはラノベと呼ばれる読み物があってな、それを読んでいる者達は理解が早くて助かるので、積極的にこちらの世界へと転生させて居るのじゃよ。
まあ、転生させている理由は多々あるが気にせんで良いぞ?儂以外の神も転生や転移させているので、総数は不明じゃが年間数百人ぐらいじゃの。
それでお主はこちらの世界でミステリア王国と呼ばれる大国の侯爵家に生まれ変わったのじゃよ。転生先はランダムじゃからな。
お主は運が良かったのじゃが、儂とした事がお主は記憶を失っておるので能力を与えたことも覚えて居なかったのじゃよ。儂もその時は少しばかりドタバタとしてのう。少し目を離したすきにおっちょこちょいの儂の部下がお主を儂の許可なく転生させてしまっての。
儂も忙しくて気付かなくての、お主に命の危険が迫って漸く気付いたのじゃ。なので今からお主に能力の使い方をインストールするぞい。
少しばかり頭痛がすると思うが我慢するんじゃぞ』
"ほい"っと言った軽い掛け声とともに急に激しい頭痛が襲い来る。
あまりの痛さに意識を手放してしまう。
目が醒めると、頭痛の衝撃でこの世界での出来事を思い出した。
名前はエレノス・サイラス。
ミステリア王国のサイラス侯爵家の三男である。
確か父の仕事の関係で海を渡り、島国に行く航海中であった船が海の魔物と呼ばれる化物に襲われて沈没したんだった。
それで俺は海流に流されて運良く島に流れ着いたんだ。
それにしても嵐があり助かった。もし嵐が起きていなければ海獣に食べられていただろう。
『フォフォフォ。どうやら思い出したようじゃな。ではこれで儂の心残りは解消されたのでな。達者で暮らすが良い』
「待って下さい!何か使命などはあるのですか?それか制約など?」
『そんなものはないぞ?まあ、それは神によるがの。儂の信条は自由じゃからな。お主も自由な様に生きるが良い。その代わり自由とは案外この世で一番難しい事かもしれんの』
そう言い残し声は聞こえなくなった。
取り敢えずわかっているのは、エレノスが三つの能力を持つ事だ。
一つ目は、前世のあらゆる物と者を召喚出来る能力らしい。
但し者はオリジナルではなく、対象の人格などを引き継いだクローンであるらしい。
二つ目は、事象改変と言い全ての事象を改変する能力である。
三つ目は、魔眼で全ての状態などを見通せる能力である。
だが三つの能力全てに現在は制限が課されている。
それはエレノスの魂の器に関係する。
この世界では魔物と呼ばれる魔力を持った動植物を倒すと、その魔物の存在力ゲーム風に言うなら経験値を得られ、一定量貯まると自分自分の器が成長し肉体はより強固に、能力はより強く成長するらしい。
因みに人同士でも獲得は出来るが、魔物の方がより多く経験値を獲得出来るので、人同士の生き死にを賭けた争いは、戦争など特定の条件下で無ければ中々起きない。
盗賊や犯罪者などは例外である。
器の段階などはレベルと呼ばれ、レベルが高いほど人から畏怖や尊敬される。
「さて、今の俺の能力はどの程度だ?確かこう言うんだったよな。《ステータス》」
目の前に半透明のウィンドウが現れる。
これは本人しか見る事が出来ず、他人が見るには特定の道具などが必要である。
=====ステータス=====
Level:1
名前:エレノス・サイラス
種族:ヒューマン
職種:サイラス侯爵家三男
年齢:6歳
賞罰:なし
称号:漂流者
【能力】
異界召喚
事象改変
天王之眼(魔眼)
==================
「これが俺のステータスか」
ウィンドウに触れようと手を伸ばすが、スカッと指が通り抜けて触れられない。
「触れたりはしない様だな。さて、いつまでも此処に居ても仕方がない。先ずは此処から移動して見るかな。此処が無人島でない事を祈るばかりだが、6歳児だとどこまで行けるやら。ん?そう言えばやけに冷静だな。身体は6歳児だけど精神年齢はそうじゃないのか?前世では何歳かは覚えて居ないが、取り乱したりしない事を鑑みると、ある程度の年齢はあった様だな。おっとその前に何か持っていないかな」
上着やシャツ、ズボンのポケットに手を入れて、何か持って居ないか探る。
だが、やはり何も持っては居なかった。
期待していたわけではないが、やはり少しショックを感じる。
首にはサイラス侯爵家の紋章が入ったロケットを下げていた。
ロケットの中には家族の肖像画が描かれたていた。
幸いちゃんと密閉されていたので、肖像画に破損箇所などは無い。
「父様は無事だろうか?」
自然とそう声が漏れた。
船には父も一緒に乗っていたのである。
他の家族は領地や王都に居る筈なので、例え父の身にもしもの事があったとしても、優秀な長兄が問題無く後を継ぐだろう。
それでもやはり家族なので心配である。
砂浜をもう一度見回すが、やはり他に人影などは無い。
「いつまでも濡れた服を着たままでは風邪を引くな。早速能力を使うか」
今のレベルでは、無制限に何もかもを召喚出来ず、一日の召喚可能数は決まっている。
そして召喚するものにより、召喚可能回数も減る。
例えば召喚に必要なものが、ポイントーーSPーーとして今現在エレノスが所持しているSPが100とする。
そして召喚するものそれぞれにはSPが割り振られており、そのSP分を消費して召喚するのである。
因みに深夜0時の日付が変わる時間ピッタリにSPは回復する。
更に使わなかったSPは翌日も持ち越し可能であり、使わなければその分SPが貯まり良く便利な物や強力な兵器を召喚出来る。
そしてエレノスは所持SPを消費して、動きやすい運動着と運動靴を召喚する。
これでエレノスの残りSPは997である。
この世界には無い素材で作られているが、この際気にしてられない。
脱いだ服は異空間に収納する。
これも異界召喚の能力の一部であり、無制限では無いが物を異空間に収納出来る。
着替え終わると、取り敢えず海岸線を歩き他に漂流者が流れ着いて居ないか探す。
だが、他に人は流れ着いて居らず船の一部だけが流れ着いていた。
仕方が無く海岸線から内地に向かう。
当てもなく歩いて行くのは危険なので、何か役に立つ物はないかリストから探す。
そしてSPを2消費してドローンを召喚する。これで残りSPは994である。
早速飛ばして人里や川や洞窟がないかを探す。
残念ながら人里や洞窟は見つからなかったが、川は見つけられたのでそちらに移動する。
川に着くと自分でも驚く程に、喉が渇いていたのでゴクゴクと飲む。
腹を壊すとかはこの際どうでもよかった。
一息ついた後、水質調査をすれば良かったか?と思ったが飲んだ感じ問題は無い。
もうそろそろ陽が暮れようとしているので、エレノスはまたSPを消費してログハウスを召喚する。
更に魔物がいるかも知れないので、丈夫な柵をログハウスの周りに召喚する。
結構使ったかと思ったが、残りSPは970とまだまだ余裕がある。
ログハウスの中には冷蔵庫があり、其処には食料品が沢山入っていたので、冷蔵庫の中の食材を使い簡単な晩御飯を作って食べる。
「ふぅ、今日は疲れたな。探索は明日にしてもう今日は寝るかな。あ!その前に警戒装置などを設置しとくかな。それと確か前世の事は何も覚えてないのなら、新たに覚えれば良いんだよな。もしかしたら何か役に立つ知識があるかも知れないからね。そうと決まれば早速歴史書を召喚するかな」
警戒装置を設置し終えた後は、寝る前まで歴史書を読む。