「私を殺したのはあなたです」
わたし、そこでめがさめたの。
なんだか、ぐちゃぐちゃしてたわ。でも、ちゃんとおぼえていたわ。えらいでしょ?
でもすぐトケイをみて、いそいでベッドからおりたの。
もうすぐおやつのじかんね。
ママのつくった、まあるいホットケーキ、たべたい。はちみつ、あまいもの。コウチャものみたいわ。キッチンのとだなのいっちばんうえにあるの。モモのかおりがする、とってもいいコウチャのなのよ。ママのおともだちがくれたの。
ママはリビングのソファーにいたわ。
なんだかつかれてるみたい。おめめをとじてた。
わたし、さっきまでみていたことを、おはなししたの。
わたしアリスになったのよ、ママ。
ほんとうの、ほんとうによ。かんちがいじゃないわ。
そしたらママ、こわいカオになったの。
ママは、わたしのはなしていることが、ときどきわからなくなるの。
わたし、いっしょうけんめいにおはなししてるのに、いきをおおきくはいて、いやそうなカオをするの。
どうしてママはわたしのいってることがわからないのかしら? わたし、ちゃんとはなしてるわ。
でもママは、もっとこわいカオをした。
ママったら、わたしがもっていたえほんをなげちゃったの。いつもはあんなに「ものをなげちゃいけません」っていってるのに、ママってうそつきだわ。わたしはえほんをとりにいったわ。だってとてもたいせつなごほんなんだもの。びっくりしたわ。わたし、わるいことしてないのに。
ママ、おぼえてないの?
ママがかってくれたえほんよ?
わたし、このほんがだいすき。
だってとってもすてきなセカイがあるんだもの。
ママはなんにもいってくれない。
わたし、ちゃんとおはなししてるのに、ママはなんにもきいてくれない。
そうしたらママがうしろにいたの。ふりむいたら、きゅうにおなかのあたりがつめたくなって、わたし、たおれちゃった。でもすぐにおなかがあつくなって、すごくいたくなってきたわ。ころんであたまをぶつけたときよりもいたいの。ジンジンするの。
ママたすけて。おなかがいたいの。
おなかになにか、へんなのがあるの。とってママ。おねがい。
でもね、わたし、きゅうにおかしくなってわらいがとまらなくなっちゃった。
なにをいったのか、わからないけど、わたし、おおきなこえでいった。たくさんいったわ。もう、あたまのなかはぐちゃぐちゃよ。もっとぐちゃぐちゃよ。でも、わたし、きんじょのおとこのこがいうようなことをいっていたの。わたし、こんなこと、いったことないのに、どうしてママにむかっていっているのかしら?
ママ、だいすきなのに、ママ、こっちをみて。
そしたらママ、たかいところにいったときのカオをしてた。ママ、たかいところがにがてだっていってたけど、どうしてそのときとおなじカオをしてるの?
ママ、こっちをみて。
ママ、どこにいくの? どうしてわたしをおいていくの?
どうしておそとにいっちゃうの? わたしだっていきたいのに。
そのひと、だあれ?
うさぎさんみたいなおみみがついてる。まっしろなおみみ。
ママ、いかないで。
おねがい。
ママ。
いかないで。
いや。
やだ。
やだ。
やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ。
ママ、いかないで。わたし、ここよ。
いたいの、いやなの。
こわいよ。さむいよ。
わたし、わたし?
……ママ。
――***
「マ、マ……?」




