悪役令嬢との遭遇
ああ、えらい成績取っちゃったせいで、みなさんの注目のマナザシが…。成績は一応見たし、とっとと逃げるか。
「あなたが特待生のアリス・ワンダーですの? 3位をとった」
ん?
ゲッ! クイーニア・ハート公爵令嬢! あれ、この人の順位は… 5位…。
ひいぃー、ラスボス来たーっ! この人、王太子の婚約者で、ゲームでは悪役令嬢っていうか、ヒロインに立ちふさがって蔑んで嫌味言ってきてたはず。
貴族のご令嬢なのに、物言いがアレだったんでインパクトがあったんだけど…。
彼女も転生者だったら、ヒロインの名前はそのまんまだし、やらかしてるから存在は知られてるし、ヒロイン?の行動はゲームからずれてるしで、こっちも転生者と悟ってコンタクト取ってくるかと思ったんだけど、今のところ無いなあ。そのつもりなら、機会はあったと思うんだけど。
天然モノですかね?
わーん、転生者じゃなかったら、単に目立ってお偉いさんに睨まれちゃった? 真面目に大人しくしてたのに、とんだ落とし穴が…。 うう、いったいどんな嫌味を…
「此度の成績、見事なものですわ。平民の中にも見どころのある者もおりますのね」
あれ…? 悪役令嬢が悪役じゃない? えー? この人ゲームではアリスにキッツイ嫌味を…
『あなたは此処に男漁りをしに来たんですの? 見境なく殿方に尻尾を振って、まるで盛りのついた雌犬! ここはお前のような平民が来るところではありませんのよ。とっととふさわしい所へ去りなさい!』とか。
たしか王子含めた逆ハ―ルートに入ると、取り巻き引き連れて…、って あれ?
ああ、うん。 自分の婚約者だけでなく、他の婚約者持ちの男をまとめて侍らせてたら、それぐらい言ってもおかしくないね…。 私、いや、元祖ヒロインが悪いか。
一番身分高いからクイーニアが物申したんであって、取り巻きの中に、他の婚約者の女性もいたりしたかも。
あ、ちなみに入学以来親しくしてたアキ・ナーニワ。実は、攻略対象者ダイアン・ラビの婚約者でした。サポートキャラじゃなかったのか…。
ダイアンと関わりたくないし、フェードアウトしようかと思ったんだけど、持ち前の行動力であちこちうろうろしてて、私だけが特に親しいわけじゃないから保留?
それに、本来ゲームでは無かったけど、友情エンド的なことに先にしちゃって、盾になってもらうのもアリかなあ、とも。
クイーニアの取り巻きに… いたかなあ? すまん、背景までは憶えてない…。
「あ、ありがとうございます。この学園で学ばせていただくことを光栄に思い、励みたいと思います」
よし、なんとか謙遜っぽい、それっぽいこと言った!
「ほほ、よろしくてよ。今後も研鑽しておいきなさい」
をーっほほほ~ とハートの女王様は去った…
私? 今のを見ていた周囲の人たちを値踏みして… お前だ!
とある伯爵令嬢に詰め寄る! いや、一応周囲には縋りついた、と見えたと思うけど。
「申し訳ありません! 今よろしいでしょうか!」
必死の形相を作ったことも相まって、相手は勢いに呑まれてつい頷いてくれました~
「今、公爵令嬢様よりあのようにお言葉を頂いたのですが、あれは普通にねぎらっていただいたと考えてよろしいのでしょうか! なにぶん平民の身の上なもので、なにか改善すべきことを遠まわしにおっしゃられて、私が理解できていないということはございますか!」
いや、これ大事。つーか、裏は無さそうだったけど、分からない…。
教えて! 割とニュートラルな伯爵令嬢様~。
今回は、事が事だから、国で有数の財力者であっても、平民の商人であるアキではなく、それなりの貴族の意見が欲しい。かといって高位すぎるのに話しかけるのは…。
ということで白羽の矢が立った伯爵令嬢、ナディア・ヤマト。まあ、これも騎士団長子息の婚約者だったりするんだが…、 この場にいる貴族連中の中では、一番態度が差別的じゃない。
いや~、いたねえ。授業中に必要があって話しかけても無視するやつとか。幸い、攻撃までしてくる人間はいないみたいだけど。
武官の家系で、本人も騎士志望なのもあって、いい意味で武士っぽいタイプ。 あと、嘘が下手だからね。
念のために、魔法発動! え、何の魔法かって?
うーん、嘘発見器?
雷での神経操作を試してるうちに、また魔が差して、雷に他の属性のも組み合わせて、脈拍や心拍数を測れるように頑張ってみました~。
治癒の練習のついでに実験動物で計測を試し、害は無さそうだから人間でも。
ぶっつけだから、ナディアのYes/Noのデータはないけど、心にもない事言ったらそれなりの反応は出ると思うし。
「落ち着け。私もそれほど詳しくはないが、クイーニア様は誇り高く、評価すべきことは、相手が誰であったとしても評価する方と聞いている。言われた通りにとって構わないだろう。
ハート公爵家自体も、そなたのような、平民であっても才能ある者の後見をしたりもなさっているし、見どころがあると思って言葉をかけたのだろう」
ふ-む、脈拍心拍共に妙な変化は無し。周囲の人間も彼女の言葉を聞いて、何人か頷いてるから、まあ真実なのかな。普通に褒めてくれたのか。
でも面白くないとかは… ああ、あっちって血縁主義会社の社長令嬢みたいなもんか。私は単なる社員。
立場が違うってやつですかね。
「そうだったのですか。ありがとうございます。ハート公爵家とは、昔からそのようなことをなさってらっしゃるのですか?」
「ああ、貴族の義務として、代々なさっているというのは有名だ」
ふーん、ずっと前からか。ここ数年とかいう話だったら、悪役令嬢転生者説を押したいけど…
結局、それなりに真っ当なお家の、権利だけでなく義務もないがしろにはしない、真っ当なご令嬢ってことですかね。
転生者ではない、と。
アキに聞いたら、公爵領が急に発展してたり、変わった物や料理が出回ったり、クイーニアがなんらかの人材の後見して何かやらせてたり、が あるかないか分かるかな? 一応確認はしてみるか。
「分かりました。いきなりお聞きして申し訳ありませんでした。ありがとうございました」
「いや、びっくりしたのはまあ無理もないか。私達でもあまり気安くは出来ないからな。悩みが晴れたなら何よりだ」
うわあ、とんだサプライズだったわ。 心臓に悪かったあ~
でも、ちょうどよかったかも。 ナディア伯爵令嬢、言質は貰ったからね!
取り巻きの皆さ~ん、私 平民で孤児だけど、公爵令嬢が普通に褒めてくれたんですよ。面白くなくても、それ以下の方が苛めちゃいけませんよ~。